焔竜VS吸血鬼・ブルート

「出て来い、吸血鬼野郎」

「おや?キミひとりかい?焔竜」


 物陰からブルート本人と思われる男が現れる。


「てめぇなんぞは俺一人で充分だ」

「キミはずいぶんと余裕そうだね。…そしてなんて野蛮なんだ」

 

 ブルートは俺を汚らわしいとでもいうような目で俺に言う。


「ハッ!てめぇもずいぶん余裕そうじゃねえか。…舐めてんじゃねえぞ?」

「あーあー、本当になんて野蛮なんだ…。こんなのがそばにいるんじゃあ、高貴で純潔な雅楽様が穢されてしまうではないか…」


 こいつ、余程慧架に心酔してるようだな…。

 

「お前には慧架がなんかよくわかんねぇけど…すごい存在だと思っているようだがな…。あいつだって普通の人間なんだよ。神様なんかじゃねえ…。お前があいつの自由を奪うな」

「うるさい!黙れ!」


 俺が言う言葉にブルートは声を荒げた。

 そして俺に襲い掛かる。

 さっきまでの冷静さが嘘のようだ。

 

「『炎竜の吐息ドラゴン・ブレス』!」


 俺も反撃をする。

 どうやらブルートの戦闘方は意外にも接近戦らしい。

 牙や鋭い爪を武器として扱っている。


「貴様こそ…あのお方と出会ってそう日は長くないはずだろう!…それをまるで長く一緒にいるような言い方じゃないかね?」


 俺に向けられたその言葉…ブルートの言う通りだ。

 確かに慧架と出会い、俺はそんなに経っていない。

 だけどあの時、初めて会った気はしなかった。

 『ユグドラシルONLINE』の上位プレイヤーの集いで何度かやり取りをしたこともあるが、それとは違う。

 あれはアバター越しだったからな。

 それでも、あの慧架に会った時…。

 どうしようもない胸騒ぎがした。

 どこだ…?

 俺は…、慧架とどこで出会ったんだ?

 頭の中の記憶を必死に俺は探る。

 ふと、ブルートの顔を見る。

 すると、ブルートの顔はまた不気味に笑っていた。

 まるで、今俺の考えていることを知っている、わかっているようなその顔。


「お前…なにか知ってるな?」

「さあ、どうだろうね。ご想像にお任せするよ。確実に知りたいなら本人に聞くか…あの最後のゲームにクリアした子に聞くことだね。まあ、それまでキミらが生きていればの話だが」


 やはり慧架は記憶を取り戻したのか。

 それなら「本人に聞け」というのは納得できる。

 だが、なんでそこで清本が出てくるんだ?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る