記憶ダイブ・ディープ
「御来を助けていただき、ありがとうございました」
「ありがとうございました」
恵果さんに続き御神楽さんもお医者さんに向かい礼を言う。
ってことは…ここは退院のシーンか。
「本当に、元気なってよかったです。御来さんがここに連れてこられた時の状態は非常にギリギリでしたので…。どうなる事かと思いました」
お医者さんの言うことに御神楽さんはしゅんとしながらこう言った。
「…ご迷惑おかけしました」
「いいんですよ。命を助けるのが我々の仕事ですので」
「本当に、ありがとうございました」
恵果さんは一礼する。
そして恵果さんと御神楽さんは病室から出る。
そして待合室の前を通った時に。
「…あれ?ミクルちゃん?」
と、聞き覚えのある女の子の声がした。
そこにいたのは雪菜さんだった。
御神楽さんは戸惑っていたが、恵果さんは話してきなさいと優しく雪菜さんのもとへ向かわせる。
「ミクルちゃんだよね?私のこと覚えてる?」
「えっと…?羽賀…さん?」
と御神楽さんが言うと雪菜さんは嬉しそうな顔をする。
「覚えていてくれたのね!うれしいわ!」
雪菜さんは御神楽さんの手を取り、ブンブン振る。
「わわっ…。えっと…、羽賀さんこそよくぼくのこと覚えてたね…?」
「ぼく…?ミクルくんって呼んだ方がいい?」
「あっ、うーん…どっちでも」
「私はミクルちゃんっていう方がしっくりするからミクルちゃんって呼ぶね。ちゃんとおぼえているよ!だってミクルちゃん、今まで見てきた誰よりもきれいな子だなって思ってたもん!」
と雪菜さんがいうと御神楽さんはちょっと照れる。
「でも私も驚いたよ。ミクルちゃんが私のこと覚えていてくれたの、本当にうれしいわ!…ところでなんで病院に?」
「…入院してた。さっき退院したところ」
「学校の先生から聞いてたのは、ひどい病気にかかっているからって聞いたけど…
もしかしてそれで?」
「…いや、違う。っていうかもともと、ぼくはひどい病気になんて罹ってないよ」
「え…?それじゃあ、学校に行きたくなかったから…?」
雪菜さんはひどく悲しそうな顔をする。
「いや!そうじゃなくて…行きたかったけど、行かせてもらえなかったというか…。ぼくのうち、いろいろとめんどくさくて…」
「…?そうなの?よかったわ…」
「羽賀さんはどうして?」
「私はね、兄さんの付き添いでついてきたの」
「兄さん?」
「うん、双子なの。名前は羽賀悠我っていうんだ。あの時一緒にいた穂村炎真くんともお友達なのよ!ほかにもミクルちゃんに紹介したい子が色々いて…いつか学校にちゃんと来れるようになったらって」
という雪菜さんの質問に御神楽さんはどう答えようか、困る。
すると、恵果さんが二人の間に入ってきた。
「えっと…あなたは確か雪菜ちゃんだったかしら…?」
「はい!あなたは…あの時、ミクルちゃんの隣にいた人ですよね?」
「ええ…、よく覚えているわね…。あのね私達、実は遠い場所に行っちゃうの」
「えっ…」
恵果さんがそう言うと雪菜さんは残念そうな顔をする。
「ごめんなさいね、せっかく御来の友達になってくれたのに…」
「友達…?」
と御神楽さんはつぶやく。
恵果さんの言葉に雪菜さんは嬉しそうな顔をする。
「そう、雪菜ちゃんは御来の最初のお友達よ」
「最初の…!」
「だからね、またここに戻ってくる機会があれば…その時はよろしくね」
「はい!じ、じゃあ…連絡先交換してもいいかな!?ミクルちゃん!」
と雪菜さんはポケットから端末を取り出す。
「それ…なに?」
「えっ!もしかして持ってないの?これはね、電話したり写真撮ったり、まあとにかく!いろいろできる便利なものなんだよ!」
「へ、へぇ…!すごい…。恵果もこれ、持ってるの?」
「ええ、持ってるわ。…そうね、御来もそろそろ買ってあげなくちゃね。代わりで申し訳ないけど、私のでよかったら交換してくれる?御来の端末を買ったらちゃんと教えるわ」
「わぁ~!ありがとうございます!ミクルちゃんの買ってもらったらその時はおすすめのゲームとか教えるね!」
と雪菜さんは嬉しそうに御神楽さんに言う。
「ありがと…」
「じゃあ雪菜ちゃん、私達はこれで」
「はい!引き止めちゃってごめんなさい。ミクルちゃん、またいつか!」
「うん、またね」
こうして御神楽さんと恵果さんは雪菜さんと別れることになる。
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