記憶ダイブ2

 次に見せられたのは…これはなんだろう?

 祭壇とでもいうべきなのだろうか、威厳漂う場所が映された。

 祭壇の中央には玉座のようなものがある。

 そして御雅楽教を信仰している人たちがずらりと玉座に向けてこうべを垂れていた。

 光がさしたと思ったら、外から煌びやかな格好、そして狐のお面をした子供が現れる。

 あのお面の感じ…『稲荷・雅』に似ている…。

 だからか、一発で御神楽さんだということがわかった。

 幼い御神楽さんは玉座に座る。

 そして、信者であろう一人の男性が御神楽さんのもとへ行く。


「ああ、雅楽様…。本日もお美しい…」


 男性は息を荒げながら御神楽さんに近づく。

 

「おいおまえ、あまり雅楽様に近づくな」


 優しい印象だったけいかさんはこの時ばかりはきつい言動になる。

 子どもがこんな目に遭ったら相当トラウマになると思う。

 15歳になった私でもトラウマになりそうだもの…。


「申し訳ございません…」


 男が残念そうな顔をした。

 けいかさんはおとこに用心しながらこう言った。


「雅楽様、今日の御勤めを」


 幼い御神楽さんは黙ってこくりと頷いた。

 御神楽さんはその男性をただ、じっと、見つめているだけだった。

 それだけなのに、男性は涙を流しながら嬉しそうに感謝の言葉を言っていた。


「ああ、ありがとうございます…ありがとうございます…!」


 男を見て周りの信者は「うらやましい」とか「すばらしい」などやたらめったら感動していることが多かった。

 うーん、やっぱりこういうのはよくわからない。

 これがブルートの言っていた雅楽様の素晴らしいところなのかな?


「下がりなさい。次!」


 男はその場から離れようとしなかったがあまりにもそれがしつこかったので、ほかの使用人が男をその場から引きずり下ろした。


「本日も宜しくお願い致します、雅楽様…」


 今度は女性。

 あれ…?この人…なんだか黒景に似ている。

 御神楽さんは女性を見たあと、ふぁ~っとあくびをした。

 それを見てけいかさんは一瞬動揺していたが、また冷静さを取り戻す。

 女性はそれをみて少し残念そうな顔をした。

 そして周りの反応はというと「ああ、今回は残念だったな」とか「かわいそうに」といった反応だった。

 その女性に対し、けいかさんはこう言った。


「挽回の余地はある。少しの気のゆるみで不幸が来てしまうことだろう、気をつけなさい」


 そうけいかさんが言うと女性は「はい、ありがとうございました…」といい、先程の男性とは正反対でその場をすぐに離れ、一礼をして元の位置へ戻る。

 この場面ではこの『お勤め』と言われるものを延々と見続けさせられた。

 うーん、でもやっぱり私にはよくわからないなぁ…。

『お勤め』を終えた後は幼い御神楽さんは不思議な舞を踊っていた。

 信者の人たちはそれをありがたそうに見ていた。

 お祓い的な意味でもあるのだろうか?

 そのすがたはユグドラシルONLINEで戦っている『稲荷・雅』のようでとてもきれいだなぁと私は思った。


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る