VS吸血蛾 2

 「そうです、穂村さん…。そのままあの蛾を引きつけておいてください…」


 わたくしは物陰に隠れながら、『茨蔓』を仕掛けやすい場所を探すことにしましょう。

 仕掛ける場所を最低でも4つは見つけなくては…。

 一つや二つではきっとわたくしの『茨蔓』では耐えることはできません。

 わたくしも少々怠け気味でいた修行を再開しなければなりませんね…。

 でないと御神楽さんはおろか穂村さんにも勝つことは難しくなりますから。

 そうです、わたくしはおそらく穂村さんより戦闘面に関しては弱い。

 なんとか回復や補助技で今まで勝てたようなもの。

 純粋な力比べではかなわない。

 だから、さらに強くならなくては…!

 ギミック要因の敵は叶波がすべて倒してくださったのは本当に助かりましたわ。

 おかげでわたくしの『茨蔓』が仕掛けやすいです。

 まずはあの蛾の下左右の羽に『茨蔓』を仕掛けましょう。

 きっとバランスがうまく取れずに体制が崩れるはずですわ。

 仕掛けやすい場所は…ありましたわ!

 ちょうど柱が4つあります、あそこに仕掛けることにしましょう!


「穂村さん!準備完了ですわ!」

「おお、そうか!じゃあよろしく頼む!」

「お任せくださいな。『茨蔓』!」


 わたくしはさきほどの柱に仕掛けた『茨蔓』を発動させました。

 すると勢いよく蔓は吸血蛾の方に伸びていき、巻き付く。

 よかったです、成功ですわ。

 そして案の定、吸血蛾はバランスをうまく取れず前のめりに倒れる。


「穂村さん、今ですわ!とどめを!」

「ああ!行くぜ、『炎竜の吐息』《ドラゴンブレス》!」


 穂村さんの攻撃が吸血蛾を覆う。

 吸血蛾はキシャアアアァァ‼‼‼っという断末魔を上げ、その姿を消しました。


「素晴らしいですわ、穂村さん」

「俺は大したことねえよ。桜宮のフォローのおかげで倒せたぜ」

「あら、そうですか?うれしいですわ。しかし一番ほめるべきは叶波だとわたくしは思います」

「ああ、そうだな。清本がザコ敵倒してくれてなかったらもうちょい時間かかってたかもな」

 

 経過時間は70分。

 思っていたよりも時間がかかってしまいました。

 油断は大敵というのがよくわかりましたわ。

 この空間の敵は、ユグドラシルONLINEの…ゲームに出てくる超難易度のボスモンスターなどよりよほど強いのだということ。

 おそらく、ユグドラシルONLINEのモンスターを何らかの方法で改造したものがこちらに置かれているのでしょう。

 許せません、桜宮財閥がかかわったこのゲームが…このような形で悪用されているなんて!


「二人とも!どうやら吸血蛾を倒したからか、次の扉が出てますよ!」

 

 という叶波の声が聞こえる。


「叶波…。今回は助かりましたわ、ありがとうございます」

「えへへ…ありがとう。せっかく鍵を手に入れたけど…一個しか手に入らなかったよ」

「もしかしたら次の…ほかの場所で使う機会があるかもしれません。大事に取っておきましょう」

「うん、そうだね」

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