ぼくのお古
《精神状態または、身体の状態が不安定です。一度ログアウトしてください。》
御神楽さんのマイルームに警告の音声が流れる。
ユグドラシルONLINEはプレイヤーの心身の様子がよくないとき、プレイヤーを休ませるようこのような音声が流れる仕組みとなっているのだ。
実際にこう言うの見るのは初めてだ。
思ったより大きい音が出たことにびっくりして私の心臓は飛び上がりそうになった。
「うわっ、びっくりした…」
「御神楽さんでもびっくりするんですね…」
私は思わずそう言ってしまった。
「あっ!すみません!」
「まあ…いきなり大きな音出されたらびっくりするよ誰だって」
御神楽さんはゆっくりと起きようとする。
私はそれを支えた。
「ありがと。そしてごめんね、キミにだけ重たいの押しつけちゃって」
「あっ…はい…でも!つらいなか、私に相談してくれただけでも良かったです。全然相談に乗ってあげられなかったですけど…」
「あーうん、そうだね。話せただけでもスッキリしたかも。あっ、そうだお礼にはならないけど…これ、よかったら使って」
そういって御神楽さんはマイルームにある引き出しから何かを取り出す。
「叶波の属性って『水』だったよね?確か」
「はい、そうです」
「うん、じゃあちょうどよかった」
そう言って御神楽さんは引き出しから出した何かを私に渡した。
これは装備…?
透明感があってきれいな服だな。
「これは…?」
「ぼくのお古で申し訳ないんだけど…。水の技を強化する装備だよ」
「あれ?でも御神楽さんは…『稲荷・雅』の属性は風じゃないんですか?どうして水の装備を…?」
そう私が言うと御神楽さんは「うーん…」と返答に困ったという顔をした。
「あっ…なにか地雷、踏みました?…ごめんなさい!」
私はすぐさま土下座する。
「いや、土下座するほどじゃないから!顔を上げて?」
「はぇ?」
「別に答えたくないとかそう言うわけじゃないんだ。…なんていうか、ぼくの属性は風だけじゃないんだよね」
「…といいますと?」
「ぼくの属性、全部の属性に当てはまるんだよ」
「ぜ、全部!?」
私が驚くと御神楽さんは「そう全部」とうなずきながら言う。
「ぼくも知った時は驚いたさ。二属性もちのプレイヤーも珍しいけど結構いるっちゃいるしね。ぼくのもそんな感じかなぁと思っていたら…まさかの全部だったんだよね…」
「それもどうして黙ってたんですか!?」
「なんというか、ひとつの属性しか持っていない優紗や炎真に申し訳なさ過ぎて…。ぼくが炎とか植物属性の技使っちゃったらそれこそ…ね?」
と言葉を濁した御神楽さん。
「だからとりあえず、二人の派生でも使えないであろう『風』属性を中心に使ってたんだよね」
「でもあの二人はそんなことじゃくじけないような気は…」
「だね。うん、じゃあこれだけは今度二人に話すことにするよ。『ランキングマッチでは今まで手を抜いてました、ゴメン』ってちゃんと謝ることにする」
「手、抜いてたんですね…」
私がそう言うと御神楽さんはへへっと申し訳なさそうに(?)笑った。
「まあとりあえず、その『
「そんな滅相もない!こんないいモノ喜んで使わせていただきます!…クラゲなんですね、綺麗です」
「そう。そう言ってもらえるならよかった」
御神楽さんはほっとしたのか優しく微笑んだ。
《精神状態または、身体の状態が不安定です。一時ログアウトしてください。》
また警告の音声が鳴り始める。
「うーん…、うるさいからこれでお開きにしようか」
「そうですね…。御神楽さん、お体に気をつけて…」
「うん、気を付ける。話聞いてくれてありがとう、叶波」
私はペコリと一礼して御神楽さんのマイルームから離れることとなった、
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