忍び寄る影の者

「一か月前は負けてしまったが、今回こそ絶対勝つ!」

「ふんっ!親衛隊長の座は絶対誰にも渡さない!雅様の側近はこの私だ!」


 となにやら意気込みを言い合っている。

 っていうかこれ、毎月やっているんだ…。


「あれ?そこのお姉さん、親衛隊長決定戦に来るの初めて?」


 とたまたま隣にいた糸目が特徴的な男性アバターが私に話しかけてくる。


「は、はい。そうですけど…」

「やっぱり。初めて見る顔だし。こんなところに来てきょとんとしてるのお姉さんくらいだから特別『稲荷・雅』のファンってわけでもないでしょ?」

「まあ、そうかもですね。『ユグドラシルONLINE』を始めた理由は『エルフ・ロゼッタ』様に憧れてです」

「わお、正直だね。でも、あんまりそういうのこの場で言わない方がいいかもよ。一応ここ『稲荷・雅』のファンが集まってるところだからさ。とくに過激派も多い。目をつけられたら痛めつけられちゃうかも」


 それもそうだな。

 マナーがなってなかったかもしれない。

 気をつけなきゃ。

 でも、この男性アバターも特別過激なファンにも見えないけど…。


「あの…あなたは一体?」

「うん?自分?自分はだよ。そう、普通の…どこにでもいるファン」


 この人自体に会うのは初めてだけどなんだろう、その言葉は嘘であると私は感じ取ることができた。


「そんな疑いの目を向けないでよ。ファンなのは本当さ。嘘偽りない。でも自分はいつかあいつを超える」


 疑いの目を向けてたことがばれてたみたいだ。

 私はなんだかそのアバターが怖く感じてしまい、少し後ろに引いてしまった。


「ああ、怖がらせちゃった?ごめん。自分の説明はここまでね、じゃあ次はキミの番だ。キミは『稲荷・雅』とはどういう関係なんだい?清本叶波」


 なんで私の名前を?!

 心臓がドクンと大きく脈打つのを感じる。

 この不気味な笑みを見て私は一瞬息ができなくなるのを感じだ。

 逃げないと…!と瞬間的に私はその場からログアウトした。

 これ、みんなに知らせた方がいいのかな?

 あのアバターが皿木豊羅の一派かもしれないという確信はない。

 でも、私の本名を知っていた。

 私のアバター名は本名設定にしていない。

 適当に付けた『りっぷる』にしてあるから。

 そのうちアバター名変えるけどさ。

 黙ったままでいるのはよくないと思ったからやっぱり私はこのことをみんなに伝えることにした。

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