第1部 2章
6月
ああ、5月はなんて濃い月だったのだろうか。
あれから一か月が経ち、もう6月になった。
暑くなったり、急に気温が下がったりで体調を崩しがちな季節。
気を付けなくては。
昨日の時点でちーなは体調を崩してしまい、3日間ほど休みを取るのだそうだ。
学校が終わったら真っ先にノートのデータ送っておこう。
一人で登校するのって久しぶりだし、なんか新鮮だな。
小中高とちーなと登校するのが当たり前になってたからっていうのもある。
いつもは見てない風景も目に入る。
私はそこでふと河原の方を見てみる。
ああ、言い忘れてたけど私の家の近くは川があって小中高と登校中はそこの近くを通る。
懐かしいな小学校の頃はよく川に入って遊んでたっけな。
今は危険だからって遊泳禁止になっちゃったけど…。
こういう時代の流れって悲しいし、つまんないよなって私は思う。
小さいころ遊んでた公園の遊具も危ないって理由で撤去されたものも多いし。
たまに最新型遊具っていうのをテレビのニュースで見るけど、うーんなんか違うなって思う私が居たりする。
思い入れがあるからかもしれない。
話は戻って河原の方を私は見てみる。
するとそこにぽつんと一人、誰かがいるのがわかった。
年齢は大人っぽい雰囲気はあるけど、ところどころ幼さが見られるので私と年代はそんなに変わらないかな?と言うのがわかる。
そんな人が学校にも行かず、どうしてこんな時間にこんな場所でぽつんと立っているのか、それが私にはとても不思議だった。
あっ、靴を脱いで川に入ろうとしている。
この川、今は遊泳禁止だから入っちゃダメなのに…。
も、もしかして自殺するつもりじゃ…!?
それはだめだ!止めないと!
私は急いで河原へ向かいその人を止めに入る。
「は、早まらないでください!」
川に入ろうとしたその人はピタッと動きを止める。
その人は今まで見たこともないような、綺麗な人だった。
あれ?どこかで見たことがあるような…?
でもこんなきれいな人だったらどこで会ったかくらい覚えてるはずだ。
気のせいかもしれない。
そして、そんな人がぽかんとした顔を私に向けた。
「こ、ここは遊泳禁止になってて…えっとそれでですね…!」
自殺しようとしている人の止め方なんてわからないから歩きながらもごもごと私は言う。
「と、とにかく!早まっちゃだめです!この先もっといいことありますよ!生きましょう!ね!?うわっ!?」
といいことを言ったと自分でも思ったあと、私は足を滑らし川へ落ちてしまった。
「キミ、大丈夫!?」
きれいな人は私のことを心配してくれた。
そして私を引き上げてくれた。
「うわっぷ!?…ゲホゲホっ!あ、ありがとうございます…」
助けるつもりが助けられてしまった…。
「無事ならよかった。…そういえばさっきから言ってた早まらないでなんのこと?」
「あっ、もしかして自殺するのかもしれない!って思って止めないと!って…」
私はそういうときれいな人はクスクス笑った。
「自殺?キミ、面白いね。最初は川をただ見てただけなんだけど…落とし物しちゃってさ。取りに行こうとしたらキミが来て…んで今に至る」
そしてきれいな人は私の頭の方をポンとする。
「ち、違ったんですか!?」
「勘違いさせちゃったようだね」
「よかった…。そういえば落とし物って何を落としたんですか?探しますよ、私!」
「イヤリング。でも無事見つかったよ。奇跡かなんかわかんないけどキミの頭の上に乗っかってた」
とそのきれいな人は私に微笑みかけてくれた。
ときめきそうだ。
「ごめんね、キミ登校中だったんでしょ?制服びしょびしょにしちゃったね」
「あっ、そうだった!やばい遅刻しちゃう!」
私は急いで河原を後にする。
奇跡的にかばんはぬれてないからよかった…。
滑って落ちたとき、カバンから手を放してたから無事だったのかな?
ギリギリ学校には着いたけど、びしょびしょのまま登校したから、校門にいる先生が驚き、急いで保健室に行くように!と心配してくれた。
強面の先生だけど、優しいんだよねあの先生。
保健室にいくと保健室の先生が「どうしたの!?」と慌てたような様子だった。
それはそうだよね、ずぶ濡れの生徒が目の前にいるんだから。
「タオルとかジャージはある?」
「今日体育ないんで持ってきてないです…」
「じゃあ、貸してあげるわ。制服を脱いで、ここで乾かしておいてあげるから。今日登校中にいったい何があったの?」
これはなんと説明するべきか…。
「えっと…私の勘違いで人を助けようとしたらヘマして川に落ちました…」
ジャージ姿で現れた私に、クラス中がざわつく。
「えっ、叶波どうしたのそれ」
はっちゃんが真っ先に私にそう聞く。
「えっと…なんというべきか…いろいろあって川に落ちた」
「ふぁっ!?」
はっちゃんの驚きの声の後ガラッと教室のドアが開く。
すると岸野先生が私にこう言う。
「清本、学年主任の大松先生が呼んでたぞ。昼休み、職員室に来るように」
「え~!?貴重な昼休みが…」
私がぶーぶー言うと岸野先生がけだるそうに言う。
「仕方ないだろう、お前今日ずぶ濡れで学校来たんだしよ」
それもそうだ。
私は「はーい」と言いながら自分の席に座った。
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