第60話

僕がふらつくとウィスプが慌ててやってきて回復魔法をかけてくれた。

「大丈夫ですか?」

「まあね……。痛っ……!」

 握ると拳がびりっと痛む。もしかしたら骨折してるかもしれない。

 それでも健やかな寝息を立てるフェンリルを見るとそんな痛みも和らいだ。

 傷だらけのフレアが人の姿に戻るとニコッと可愛らしく笑った。

 そのままとてとて走っていって傷だらけのフェンリルのほっぺたをつんつんする。

「ねえーわんこー。もっと遊ぼうよー」

「こらこら。そんなことしない」

 あれだけの戦いが遊びって……。

 大したダメージも受けてなさそうだし、本当にドラゴンって頑丈なんだな。

 僕が苦笑するとフェンリルが眉をぴくぴく、ついで黒いもふもふな尻尾もぴくぴくと動く。

 そしてフェンリルはむくりと起き上がった。

「…………リルは何を……?」

「よかった。無事だった」

 僕はホッとした。もしこの子が無事でなかったらみんなを守れたことにならない。

 どうやらしずくは上手くやってくれたみたいだ。

「仲直りしよー。はい握手」

 僕が安堵してるとフレアがフェンリルに手を伸ばした。

 寝ぼけたフェンリルがほとんど反射的に握手を受けようとする。

 二人の手が合わさる瞬間、フレアがニコリと笑い、手の平を上に向けた。

「わんこ。お手!」

「………………わん」

 フェンリルは見事フレアの策略にはまり、お手をする。

 しばらく沈黙したあと、フェンリルはハッとして顔を赤くした。

 一方のフレアは大喜びだ。

「やったぁー! あたしの勝ちぃー!」

「……うぅ。リルの負けです……」

 なんだこれ?

 どういうルールの遊びなの?

 というかさっきまで殺し合ってたのにどうしてそんなに仲良しなんだろう?

 僕の知らない会話が交わされてたのかな?

 なんだかどっと疲れた。

 大きな溜息が出てくる。拳は痛いし体は疲れてだるかった。

 それでもまだ、僕にはやることがあった。

 僕は倒れたリアスの元へ行き告げた。

「リアス。カインを返してもらうよ」

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