第50話

 気付くと僕はベッドの上にいた。どうやら睡魔に襲われて寝ちゃったらしい。

 これで二度目だ。情けなさが全身に染み渡る。

 同時に僕は自分の限界を知った。

 僕は額に手の甲をあて、天井を見上げて長く細い息を吐いた。

「………………僕、なにやってんだろ……」

 カインはどうなったんだろうか?

 もしかして逃げて、山の中を彷徨っているかもしれない。

 それともやっぱり殺されちゃって、あの岩山に放置されてるんだろうか?

 もしそうならせめて遺体の回収だけでも――――

 そんな不吉で前向きか後ろ向きか分からない考えが脳裏に過ぎった時だった。

 突如としてドアが開けられた。

 どうやら寝ている間に雨が降っていたらしく、雨風が部屋の中に吹き込んでくる。

 そこにいたのは全身ボロボロになったメタルゴーレムのレム君だった。

「……レム……君? レム君! え? カインは? 一緒にいるの?」

 僕の問いに答えることなくレム君はふらりと揺れ、その場に倒れた。

 ドシンと重い音がして、床がめり込んだ。

 僕は驚いてベッドから降りた。そこへ音を聞いたウィスプ達が集まって来る。

「なんの音ですか? ……レムさん? レムさんですか?」

 駆けつけるウィスプに僕は叫んだ。

「ウィスプ、早く回復してあげて!」

「わ、分かりました!」

 ウィスプがレム君を回復し始めるとフレアとしずくがやって来た。

「あれ? ゴーレム君じゃん。おかえりー」

 行き倒れのように倒れるレム君が面白いのかフレアも一緒になって倒れて遊んでいる。

「ねえねえ。これってなにが楽しいの?」

「………………別に楽しくはない」

 レム君はいつも通りぼそりと呟く。

 体を動かせないところを見ると相当疲れているようだ。

 フレアがなーんだと体を起こすと、隣のしずくが感心していた。

「黒のフェンリルと戦ってよく生きていたわね。少し岩石族を見直したわ。あのツンツン頭はどうしたの?」

「……………………カインは捕まってる」

 それを聞いて僕は安堵した。

 よかった。カインが生きてるんだ。

 捕まってるなら公国軍が助け出してくれるはずだ。もしかしたら人質交換として金銭を要求されるかもしれないけど。

 ホッとすると肩から力が抜けていくのが分かった。

「捕まった? なぜ殺さないの?」

 しずくの冷たい問いはもっともだけど、今の僕にはどうでもよかった。

 するとレム君は目だけを僕に向けて告げた。

「……………………アルフがいるから」

「……え? 僕?」

 僕はポカンとしながら自分を指差す。

 レム君はこくんと頷いた。

「……………………カインは君に命を賭けた」

「………………へ?」

 レム君の言ってることが全然分からず、僕はびっくりするほど間抜けな声を出した。

 それからレム君はいつも通りぼそぼそとなにが起こったのかを話した。

 戦いに負けたカインはメタルゴーレムの砕かれた一部を持って捕まった。

 レム君はカインの指示通り岩に紛れて逃げた。体を一度バラバラにし、ゴロゴロと転がって安全な場所で再度くっつくことができるらしい。

 更にレム君の能力として体の一部に意識を巡らせることも可能とか。

 それを使ってレム君はカインの居場所が分かり、牢の中でどんな会話をしているかも分かるそうだ。

 ただこちらからなにかメッセージを送ることはできないらしい。

 ゴーレムの器用さに感心しながらも、正直、意味が分からなかった。

 カインが僕に賭けた? 

 なんで? いつも糞雑魚だって言ってるじゃないか。

 そんな僕に命を賭けるなんて……。

 いや、それよりもだ。サンタナの魔物使いが僕を狙ってるって?

 それってつまり……。

「………………今夜、サンタナの魔物使いがここを攻めてくる」

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