第22話 制空権
帰宅すると、恐れていたことが起きていた。
ふうぅ~(怒)
玄関の扉を開ける前に部屋の中から聞こえてきたのは、茶々丸の唸り声だった。
そこで予想できることと言えば、コンビニにお出かけしたこの15分間の間で、Bカップ娘が目を覚ましてしまったということだ。
動き出した彼女を察知して、茶々丸が威嚇の声をあげている、と。
まあ、間違いはないだろう。
僕は言い訳をシュミレーションしつつ、恐る恐る静かに扉を開けた。
目に飛び込んできた光景は、こちらを背にして、四つん這いでソファーの下を覗き込みながら手をの差し込んでいるBカップ娘である。
やはり、目覚めてしまっていたらしい。
それにしても、いいお尻である。
眼福、眼福。
……おほん。
彼女は猫好きなのだろうか。
見知らぬ部屋で目覚めれば動揺してパニックになっていたり、部屋を飛び出してしまっていたりしてもおかしくないにも関わらず、猫の存在ほうが気になるとは。
猫好きとは都合がよい。
それだけでひとつ話題ができるし、打ち解けやすいというものだ。
僕は心の中で気合を入れ話しかけた。
「起きてたんだね。体に痛いところとかあるかい?」
Bカップ娘はピクリと動きを止める。
「ああ、ごめん。驚かせちゃったかな?」
ギギギという音が聞こえてきそうな動作で、Bカップ娘はこちらを振り向いた。
そして、目が合う。
(うわ! キモッ!)
彼女の顔を見た第一印象である。
顔立ちは幼さを残した可愛らしい顔をしていると思う。
少々顔色が悪いのは先ほどまでと同じだが、まあ気絶してたのだからそんなこともあるのだろう。
問題は、あまりにも真っ赤に充血した両目であった。
「ねえ、目がすごく真っ赤だよ。大丈夫かい? 薬局にひとっ走り行ってこようか?」
ものもらいか何かだろうか。
僕はお近づきの印とばかり、優しくて気の利く人アピールをしておくことにした。
ふふん、これで掴みはOKだろ。
彼女はゆっくりと立ち上がりながら体もこちらを振り向いた。
そして僕にゆっくり近づいてくる。
表情かはら動揺とか疑いとかは伺えない。
と言うか無表情であり、逆に何を考えてるのか分からなくて、逆に僕のほうが動揺してしまった。
唐突だが、ここで少々自分語りを。
僕は女性が大好きだ。
まあ世の中の健全な男子であれば大半が同じであろう。
だが、反面女性嫌いな面もある。
それは中学生の時まで遡る。
僕は今で言えば陰キャグループに属していた。
クラスでも目立たない、基本オタク気質の集団だ。
その中で一人、クラスカースト上位の女子や取り巻き男子からイジメを受けているおデブさんがいた。
殴る蹴る等の暴力は無かったが、彼の給食のシチューからチョークが出て来たりとか、それを笑いものにするみたいな陰湿なものであった。
僕はその経験から高校は男子校を選んだくらい、一時女性に対して幻滅の感情を抱いていた。
就職し再び女性と接するようになり、彼女ができたりで女性嫌いはいつの間にか払拭したどころか今では立派な女好きにジョブチェンジを果たしている訳であるが、それでも初対面の女性とかは必要以上に苦手意識があったりする。
何故、ここでソレを語ったのか。
僕のそのトラウマが、今から起きることに対し、僕の命運を分けることになったからだ。
Bカップ娘が肩の位置で両腕を広げ僕にゆっくりと近づいてきた。
そして、顔も僕の顔あたり目掛けて近付けてくる。
経験的なものだろう。無意識に察知する。
これは抱き着いてキスしてくる兆候だ。
トラウマとコミュ障の部分が働く。
僕の体は、予想外の行動をとりながら突然僕の
その瞬間。
ガチン!!
彼女の両手は空を切り、そして、先程まで僕がいた空間を、思い切り噛みついたのだ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます