第2話 巡らなくなった夏

 夏に近づくと、太陽が照らし出す量が増え、皆逃げられなくなる。真夏の太陽の時に、風景を見ると、目に飛び込んでくる迫力が、存在感がまるでちがう。はっきりとした輪郭に、その奥にある、隅々まで見えるほど、夏というものは、地球上のあらゆるものをはっきりと現にしてくれる。隅々までに太陽の恩恵が届いている証拠だ。生き生きとした緑はそれによって成長するのだろうが、老いてきたものにとってはどうだろうか。そこまで浴びても、成長する幅がなく、むしろ、成長する必要がないものだから、まるで食べ過ぎを控えるかのように、そこまで日光に当たる必要もなくなっている。そんな中で、生き生きと夏を楽しむ若者を見た時、いいなぁって見とれてしまうのは、やはり、私たちが生きているものなのだからだと思う。生き生きとした生命は、やはりまばゆく、そして、綺麗なのである。憧れとでもいうのだろうか、老いてからの見方としては。


 42歳を過ぎた頃から、少し夏に活動することに、翳りが見えてきた。もちろん、この数年の猛暑のせいはある。あの暑さでは、外に出る方が生命の危険を感じる。虫も少なかったことでさえ、生命を脅かす、砂漠のような暑さというものがあるのだと、考えられる。だけど、そうは言っても、過ごし方というものはあるはずだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る