第47話 事故って庇って
昼休みに、天は自分から
金子坂高校は、全四階建て。三年は四階、二年は三階、一年は二階に教室がある。
まずは真波。呼びに行くと、真波は慌てて弁当袋を引っつかんで飛び出してきた。
「て、天センパイ!? なんで!?」
「たまには、俺から行こうかな、って」
「い、言ってくれればいいのにぃ……」
相当、驚かせたらしい。慌てた真波を見て、天は笑いをこぼす。
「……天センパイ?」
「ん、なにかな?」
「いえ、なんか、元気出てます?」
「うん」
「なら、よかったです」
真波が明かるく笑う。天はそれを嬉しいと思い、
「次、
「え、アイツっすか?」
「約束したんだ。今日のお昼は一緒に食べるって」
「……うー。天センパイが元気出してくれたのは嬉しいっすけど、アイツを呼びに行くのはなあ」
「じゃあ、真波ちゃんは先に行ってる?」
「う、なんかそれも嫌なんで、一緒に行きます」
なら、と次は一年B組の教室へ。
天と真波が行くと、
「うぉーい」
「
真波と天の二人で呼びかける。
「来てくださるとは思っていませんでした」
「約束したからね」
「アタシは、別にどうでもよかったけど」
無事に三人で合流し、外へと向かう。右に
「なんか、天センパイから迎えに来てくれると、照れるっすね」
「えぇ。天さんはあまり積極的とは思えませんので。意外でした」
「まあ、たまにはね。迷惑だった?」
女子二人は首を横に振る。そっか、と天は笑み、
「なら、今度からは俺も二人を迎えに行くよ。次からは、ちゃんと連絡するから」
「いいんすか?」
「だって、四階に来てもらうより手間がかからないでしょ?」
「それもそうっすね」
納得する真波と
「今度はいつに……」
しようか、と、廊下から、階段へと足を踏み出そうとした時だった。
何が、と思うと、
「み……」
名前を呼ぶ暇もなかった。天は咄嗟に、自然に
持っていた弁当袋を捨てる。右手を伸ばす。だが、肩を掴もうとした手は、届かない。
このままでは、
「ち……」
まるで、いつかの再現だった。天が、なけなしの運動神経を振り絞る。廊下を蹴って、跳びだした。
「る……」
小さな体に指が届いた。天は力いっぱい引き寄せ、抱きしめる。喧騒が遠い。視界の端に、真波の顔がちらりと映った。
真波も、何かを叫んでいた。しかし、聞き取れない。天は宙で捻った体を、さらに折り曲げるようにして、腕の中の者を必死に守る。
直後、身をバラバラにされるかのような衝撃と共に、天は意識を失った。
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