第40話 かくしごと
天と真波は、出来上がった分の資料持って、生徒会室へと急いでいた。
もう下校時間が近い。手早く済ませないと、注意を受けてしまう。
「急ごう、真波ちゃん」
「はい!」
小走りなのは大目に見てもらおうと、人の少ない廊下を行く。
たどり着いた生徒会室には、まだ明かりが灯っていた。誰かが残っているようだ。
誰だろう、と疑問には思いつつも、下校時間を優先して引き戸を開ける。手早く戸棚にしまい、撤収しなければ。
だが、天と真波は、中にいた意外な人物に固まった。
斉藤である。
分厚いファイルを読みながら、なにやらメモを取っていた。
斉藤も、こちらに気づいた。ファイルを閉じ、席を立つ。
「会長、浜田君、こんな時間まで作業をしていたのか」
「うん、まあ、急ごうと思って」
返事は短く、そうか、とだけ返ってきた。
「天センパイ、急がないと」
「あ、うん」
棚に、資料を並べていく。あらかじめ並び変えていたので、空いている場所に、ただ突っ込むだけで済んだ。
斉藤はそれを静かに見ていた。何も言ってこない。
「えっと、それじゃ、今日の分は終わりましたんで、お先に失礼します、副会長」
「ああ。施錠は僕がしておく」
じゃ、と真波は、天の腕を引っ張って行く。生徒会室から早々に出て、二人で昇降口に走った。
真波と歩くのは、校門まで。その短い間の中で、天はふと湧いた疑問を呟く。
「何してたのかな、斉藤、君」
えっ、と呟きを拾った真波は、
「仕事じゃないっすか? アタシたちみたいに」
「そうなの?」
「生徒会の会議とか終わったとは、副会長はいつも最後まで残ってましたよ。アタシたちには先に帰れって言って」
「そうなんだ」
「まあ、生徒会は副会長だけでいい、なんて言われるくらいですし、色々やってるんじゃ……って」
言って、真波はすぐに謝ってきた。
「すいません、いらないこと言いました」
「ん? いらないって……? ああ」
副会長だけでいい、の部分についてだろう。
「別に、今更気にしないよ」
「でも……」
「大丈夫。別に、悪い意味だとは思ってないから」
「……はい」
真波の気遣いを、天は苦く笑って、無かったことにした。
生徒会は副会長だけでいい。確かにその通りだったのだろう。天がいなくても、生徒会は問題なく機能していたのだから。
今になって天が呼ばれたのは、引継ぎという仕事があったから。これにしても、斉藤がいれば充分なのだろう。
だが、今の天には、この事実があまり苦痛にならなかった。
理由は、まだ漠然としている。明確な言葉にはできない。
「……天センパイ、あいつと何かありました?」
「
「ホントですか? なんか隠してるっぽい感じがするんですけど」
「別に隠すようなことは何もないよ。本当に」
はっきりと答えても、なぜか真波は納得しなかった。
校門までの数分間、ずっとにらまれたままだった。
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