第4話 転校生 その2

 朝礼が終わり宗一はクラスの女子にわっと囲まれた。みんなイケメンの宗一に夢中の様子で様々な質問をぶつけ合う。好きなスポーツ、好きな芸能人、好きな人。好き勝手に女子達はものを言い、りーなはそれの輪に入れずにいた。


「どうしたの? りーな」


 背中から声をかけられる。るーだ。


「るー、あの中に入らないの?」


「うーん、りーなが気になってさ。宗一君と会った時、明らかにおかしかったし」


「……ありがとう、るー」


「それでどうして驚いたの? まさか夢に出てくるイケメンだったり?」


「……あたり」


 正直にりーなは言った。


「すごい! 運命って奴じゃない?」


「そう、かな」


「話してみなよ。向こうもりーなのこと知ってるかも」


「たぶん、知ってる……」


 りーなは宗一が自分の顔を見た時のことを思い出して言った。


「すごいすごい! 両思いって奴?」


 喜ぶるーがりーなの肩をぱんぱん叩く。りーなは困ったように声を出した。


「……よく、わからない」


「で、どうするの」


 るーが聞く。りーなは答えた。


「とりあえず話してみる、でも今じゃない。いまは、ほら」


 まだ女子達は宗一を取り囲んでいる。きっと午前中いっぱいは続くだろう。


「そうだね……今はまずいよね……」


 るーも同意した。そして午前の授業が始まった。


 りーなの言うとおり午前中、宗一は休み時間になるたびに女子達に囲まれっぱなしだった。そして昼休み。食事はさすがに一緒に食べようという女性とはおらず宗一は一人になった。


「チャンスだよ」


「うん」


 一緒に食事をしていたるーに促され、りーなは食事を中断し宗一に近づく。宗一はりーなに気づき、午前中の授業中に用意していたんだろうそっとノートの切れ端を周囲に気づかれないようにりーなに渡した。


「あの……」


 りーなは何かしゃべろうとするが上手く言葉が出てこない。


「紙を見て」


 小声でそれだけ言うと宗一は食事を再開してしまう。しかたなくりーなはるーのところへ戻ってきた。


「どうだった?」


「紙わたされた」


「なんて?」


 りーなは紙を開く。


『放課後、教室で』


 そこには綺麗な文字でそう書かれていた。るーが歓声を上げる。


「やっぱり向こうも知ってるんだよ! りーなのこと」


「そう、だね」


 口調とは裏腹にりーなの心は喜びに沸いていた。そうだ、きっとそうだ。でなければこんな紙渡すわけない。紙を見ているだけでりーなの胸にうれしさがこみ上げてくる。

 でも、宗一は何を言うつもりなんだろう。りーなはそれが一抹の不安として心の隅に残ってもいる。

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