第33話 海でのハプニング
シーサイドイベントで、夏の島【ミュウスアイランド】へやってきた夜光達。
女性にとっての危険人物である笑騎が海で遊ばせるのは危険と判断した同僚スタッフは男だけの釣りイベントに強制参加させることになった。
水着美女の楽園から、男だけの釣り地獄へと叩き落された笑騎であった・・・
笑騎が男性スタッフに連れていかれた後、別の男性スタッフが部屋にいる夜光と誠児に「これから海に向かうので、水着を持って受付ロビーに来てください」と通知に来たので、二人は水着を持って受付ロビーへ戻った。
受付ロビーに戻った夜光と誠児は、後から来たセリア達とも合流し、スタッフの案内で海へ向かう。
ちなみに釣り組は、宿の裏の岩場がこの島で最高の釣りポイントのようなので、そこに向かうことになった。
出発直後に手足をロープで拘束された上、口をテープで塞がれている笑騎が何かを訴える目で誠児を見ていたが、誠児は当然無視した・・・
夜光達が来たのは、上陸時に来た浜辺。
最初は誰も気づかなかったが、この浜辺には水着に着替えるための古びた倉庫のような建物が二つあるだけで、ほかには何もない。
パンフレットによると、なるべく自然のままの海を楽しんでほしいので海の家のような店は出していないとのこと。
さっそくその建物で水着に着替える夜光達。
中は鍵付きロッカー以外は何もなく、本当に着替えるだけの場所のようだ。
一足先に水着に着替えた夜光と誠児は、浜辺に出て辺りを見渡す。
「・・・見事に誰もいないな」
夜光が見渡すかぎり、砂浜と海以外は何も視界に入らない、
「障害者は騒々しい所や人が多い所があまり得意じゃない人が多いからな、親父が島の人に頼んで特別に貸し切りにしてもらったんだ」
「・・・さすがに国王の力は強いな」
夜光がゴウマの権力の強さを改めて実感していると、
「二人共、お待たせ!」
元気な声と共に現れたセリナを先頭に、マイコミメンバーが建物から出てきた。
その中には、恥ずかしそうに赤いワンピースを着ているマナの姿もあった。
「・・・」
水着姿のマイコミメンバーを見た夜光はなぜか顔を引きつる。
「どうした? ずいぶん嫌そうな顔してるけど」
気になった誠児が尋ねると、夜光は頭を抱えながらこう呟く。
「・・・この前の水着ショップのトラウマを思い出した」
以前夜光がセリア達の水着選びを手伝っていた時に、夜光は変質者と間違えれて騎士団に連行されたことがある。
「あぁ お前が1週間グチってた話か? まあ女性用水着の売り場で男が騒ぎを起こしたら、通報されても文句は言えないだろ?」
「一人でさっさと逃げ帰った野郎にそんなことを言われたくねぇよ!」
「・・・それに関しては許してくれ」
それから続々とほかのスタッフや訓練生も建物から出てきた。
そして、全員がそろったところでまず準備体操を始める。
『ウサギ体操第一ぃ~・・・』
どこかで聞いたようなメロディーに合わせて体操する中、誠児が夜光におそるおそる尋ねる。
「なあ、夜光。この体操どこかで聞き覚えがあるんだが・・・」
夜光は視線を合わせずにこう返す。
「俺も初めて聞いた時に思った。 この世界ではあのアホウサギが作ったことになっているらしい」
「・・・そうか」
きな子のパクり体操を終えた後、夜光達はさっそく海へ駆り出す。
「やっほー!」
「おっお姉様! そんなに引っ張らないでください!」
「セリナちゃん、待ってよ~」
「おっしゃー! 泳ぐぞ!!」
海に向かって全力疾走するセリア、セリナ、マナ、ルドにスノーラは叫ぶ。
「こらっ!! そんなに走ったら危ないですよ!!」
そう言うスノーラも走って3人を追いかける。
その様子を見ていたライカは呆れた顔で頭を抱える。
「はぁ、これだからお子様は面倒なのよね」
そう言いながらも、足取りは早いライカ。
少し離れた所にいた誠児はというと・・・
「誠児さん。 私に泳ぎを教えてくれませんか・」
「ちょっと待ってよ! 誠児さんは私と泳ぐの!」
「誠児さんあちらで私と少しお話でもしませんか?」
女性スタッフや訓練生の女の子に囲まれていた。
「あの、みなさん落ち着いて。 海ではみんなで楽しく遊びましょう」
などと言って女性達を必死になだめる誠児を、蚊帳の外にされている夜光が睨みながら思う。
「・・・(クソッ!! これだからイケメンは嫌いなんだ!!)」
モテる誠児を放置し、夜光はスタッフが用意した休憩用の大きなテントに涼みに来た。
「ったく。 わざわざこんな暑苦しい島まで来たってのに、海では良い女はいねぇ誠児はモテる・・・俺の望んだ夏はどこ行った?」
そうぼやきながら寝転ぶ夜光の顔に突如、ボールが直撃する。
「いてっ!!」
痛みで思わう起き上がった夜光の前にいたのはセリア達であった。
「夜光! ビーチバレーしよっ!!」
そう言いながらセリナは夜光にぶつけたボールを回収する。
「セリナちゃん。 やっぱり人にぶつけるのはよくないよ」
おどおどしながらもセリナに注意するマナに対して、
「夜光は強いから大丈夫だよ!!」
と全く悪びれないセリナに少し怒りを覚える夜光。
そこへセリアが駆け寄る。
「あの・・・大丈夫ですか?」
心配そうに夜光の顔を見るセリアに、ルドがこう言う。
「心配しすぎだって。 だいたい海まで来たってのに、いきなりだらけてる兄貴だって悪いぜ?」
ルドに続いてライカもこう告げる。
「そうね。 それに、こんなに美少女がそろっているのに何が良い女がいないよ。 あんたの目は節穴?」
メンバーの言葉に、短気な夜光の怒りも上がる。
「お前ら、さっきから言いたい放題言いやがって(セリアとマナを除いて)。 喧嘩を売っているなら命の保証はしねぇぞ」
指をポキポキ鳴らし始める夜光に、スノーラが優しく語り掛ける。
「夜光さん。 そう怒らないでください。 みんな純粋にあなたと遊びたいだけなんです。
どうか一緒に遊んでくれませんか?」
スノーラの礼儀正しい態度と優しい言葉に折れる夜光。
「・・・わかったわかった。 お前らに付き合えばいいんだろ」
夜光はゆっくり立ち上がり、セリア達と共に海へと繰り出す。
海へと繰り出した夜光達は、じゃんけんで【夜光、スノーラ、セリア】、【ルド、セリナ、ライカ】のチームに分かれ、余ったマナは審判になった。
それから2時間、砂浜の上で壮絶な戦いが繰り広げられた。
「おらぁ!!」
激しい声を出しながら渾身のアタックを放つルド。
「げふっ!!」
上手くレシーブやトスができずに、顔でボールを上げてしまうセリナ。
「遅い!」
すばやい身のこなしでボールを拾い、チームをカバーするライカ。
「はあ!!」
適格な状況判断と正確にボールをコートの端へ打つスノーラ。
「きゃ!」
ボールを拾うたびにしりもちをつくセリア。
「よっと!」
ボールを足で蹴り上げるという反則を平気でやる夜光。
本来なら相手チームに点数が入るところだが、逆ギレした夜光がガミガミ文句を言うので目をつぶることにした。
「現在の点数はどちらも19点です。 あと1点取ったチームが勝ちになります」
マナの説明に、サーブを打つルドがハイテンションになる。
「じゃあいくぜ! そぉれっと!!」
ルドのサーブボールは、セリアの方に飛んでくる。
「はわっ!」
すっとんきょうな声を出すセリアだが、どうにかレシーブで上げる。
「セリア様! お見事です!」
セリアを称賛しながらも、上げたボールをトスで相手コートに飛ばすスノーラ。
「任せて!・・・むぎょ!!」
威勢はいいものの、結局顔でボールを上げるセリナ。
「いまだ!」
ネット近くにいたライカが大きくジャンプし、アタックの態勢に入る。
「もらったわ!」
ライカがボールを打とうとしたその時!
夜光がライカの前でジャンプし、ブロックするかと思ったら
「きゃぁぁぁ!!」
ネット越しにライカの胸を揉んだ。
当然アタックなどできないライカはそのまま胸を庇う態勢で着地し、ボールはそのままライカのコートにお落ちた。
「この変態!! 卑怯者!! 人前で堂々と胸掴むなんてどうゆう神経してんのよ!!」
顔を真っ赤にしながら訴えるライカに夜光は冷めた目で開き直る。
「【バレーの試合で相手の乳を掴んではいけません】なんてルールがあるのか?」
屁理屈を並べる夜光に、半眼のルドがこう言う。
「いや。 あれはさすがに卑怯だと思うぞ」
ルドに賛同し、全員がうなずく。
「・・・マナ。 この試合はこちらの負けでいい」
スノーラもさすがにこれは目をつぶることができないため、負けを認める。
「は・・・はい。 ルドさんチームの勝ちです!」
マナの宣言と共にバレーは終了した。
その次の瞬間、海の方から「イェーイ!!」という陽気な声が聞こえてきた。
全員が海の方を見ると、誰かが波に乗ってサーフィンをしているのが見える。
サーファーは波の間を潜り抜け、勢いよく夜光達の元へジャンプした。
無事に砂浜に着地したサーファーの姿を見た夜光は大声で叫んだ。
「げっ! お前はアホウサギ!!」
なんとサーフィンをしていたのは、マインドブレスレットの開発者きな子であった。
「誰がアホウサギや! ウチにはきな子っちゅうプリティーな名前があるんや!」
「そんなことはどうでもいい!! なんでお前がこんなところにいるんだ!?」
「女神様とこの島にバカンスに来たんや。 そしたらあんたの顔が見えたからここに着地したっちゅうわけや」
「なんでウサギがサーフィンなんかできるんだよ!? ウサギは普通泳げないはずだろ!?」
「ウサギかて気合と根性があればなんでもできるんや」
全く説明になっていないきな子の言葉に再び文句を言おうとすると、スノーラが夜光の腕を掴んで静止した。
「夜光さん! 相手はあのきな子様です! 無礼な態度は謹んでください!」
「えっ!?」
驚く夜光にライカが補足説明する。
「あんた知らないの? きな子様といえば、この心界の機械文明を切り開いた心界最高の技術者じゃない」
「知る訳ねぇだろ」
異世界から来た夜光がそんなことを知っているはずはない。
するとここで、セリアがきな子にこんなことを尋ねた。
「あっあの、きな子様。 先ほどから女神様のお姿がお見えにならないのです・・が」
それを聞き、夜光も辺りを見渡すが女神の姿はない。
「そういえば、あのマヌケ顔の女神はどこにいるんだ?」
その質問に対し、きな子は海を指しながら一言。
「あそこや」
きな子の指した方向に視線を向けると、そこには海中に顔を付けたまま浮かんでいる女神の姿があった。
「「「「「「えぇぇぇ!!」」」」」」
これには全員驚いた。
「さっきのサーフィンでバランスを崩してな? そのまま海にドボンや。ホンマにまだまだ修行が足らんお人やで」
まるで他人事のように説明するきな子。
「呑気なこと言ってる場合かよ! みんな急いで助けるぞ!」
ルドの号令で、すぐさま全員で助けに向かい、気絶した女神を全員でテントまで運ぶのであった・・・
テントで待機していた医師の診断では、海水を飲んでいないので、安静にしていれば目が覚めるらしい。
「そんじゃあ、ウチは女神様を見とくから、みんなは海で遊んで来ぃ」
これ以上テントに残っても仕方ないので、きな子の言う通り、女神のことは任せ、夜光達は再び海へと戻った。
とは言え体力的にも精神的にも疲労した夜光達は、海を眺めながら、少しのんびりすることにした。
しばらく海を眺めていると、セリナの目にあるものが飛び込んできた。
「・・・あれ? なんだろあれ」
「セリナちゃん。 どうかした?」
「なんかね。 水平線に人影みたいなものが見えてくるんだ」
「人影?」
ライカも気になり、海に近づいて水平線をよく見てみる。
「・・・確かになんか見えるわね」
ライカに続いてセリアも目を細めて見ると、その人影が一瞬だけ海上に姿を見せた。
「もしかしてあれは・・・にっ人魚ではないでしょうか?」
セリアの言葉にライカ達も反応する。
「・・・ホント。 あれ人魚じゃない」
「うわー! 人魚さんって初めて見た!」
「私も!」
はしゃぐセリナとマナを横目に、ルドがある疑問を口にする。
「変だな。 人魚って普通、海の底で暮らしている種族のはずだ。こんな人のいる島に姿を現すなんて珍しいよな? スノーラ」
「・・・」
なぜか顔色を悪くして押し黙るスノーラ。
「スノーラどうした? 気分でも悪いのか?」
心配するルドの言葉で、ハッと我に返るスノーラ。
「いっいや。 なんでもない」
「そ・・・そうか」」
ルドはそれ以上聞かないことにした。
「・・・人魚さん達、向こうの岩場に向かってるよ?」
人魚たちが向かっているのは、夜光達がいる地点から少し離れた岩場だった。
「あんな岩場で何をする気かしら?」
ライカがふと呟いたこの言葉がまずかった。
「ねぇ! みんなで人魚さんたちに会いに行こうよ!」
セリナの好奇心を刺激してしまった。
「でもセリナちゃん。 人魚は警戒心が強いから、びっくりさせちゃうかもしれないよ?」
「大丈夫! こっそり見るだけだから!」
またセリナの暴走が始まったと、夜光が頭を抱えていると、
「オレも行ってみたいな。 こんな浅瀬で人魚が何してるか気になるし」
「あたしも気になるわね」
ルドとライカまでノリノリだった。
「じゃあみんなでしゅっぱーつ!」
元気よく駆け出すセリナに続いて、ライカ、ルド、マナ、セリアが後に続き、夜光とスノーラもしぶしぶついていくことにした。
・・・しかし、スノーラの顔はどこかうつむいていた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます