ドープの森編
第22話 森を守る戦士 ケンタウロス
心界を支えるエネルギー源心石(しんせき)。
アストの力の根源である女神石(めがみせき)。
2つの石はこれからも心界の住人達を支える力となるであろう。
夜光と誠児がきな子と女神と話をしたその日の夜、ホームにある異種族専用の面談室でゴウマがとある夫婦と面談していた。
その2人は上半身は人間だが、下半身が馬の
本来は自然豊かな森で暮らしており、人間にはほとんど関わらないが、2人の”子供”がホームに通っているため、定期的に障害や最近の様子などをスタッフかゴウマ本人から聞きに来ている。
「こんな時間にわざわざ足を運んで頂き、ありがとうございます」
軽く頭を下げるゴウマに対し、男性ケンタウロスが頭を下げる。
彼の名はストーン。
古びたタンクトップのようなものを着ているが、引き締まった筋肉が服の上から周囲の者を圧倒させる。
体長も3メートル以上はあり、天井まで頭が届きそうだ。
ストーンは対等であることを証明するかのように、足を折り曲げて目線をゴウマに合わせている
「いえ、我々もあなたに時間を作ってもらえたことに感謝している」
続いて、ストーンの隣にいる女性ケンタウロスのフォーレが本題に移った。
彼女はストーンの妻で、彼とと共に、愛する我が子の経過をゴウマに尋ねに来たのだ。
「それでゴウマ国王。私たちの娘の様子はどうですか?」
ゴウマは足元に置いていたカバンから何枚かの書類を出し、それに目を通しながら答えた。
「ここ最近は調子が良いようです。デイケアでのメンバーとの関係も良好で、以前より表情も明るく・・・」
ゴウマが経過について説明していると、ストーンが「そんなことはいいです」と説明を中断させた。
「我々が知りたいのは娘の病のことです」
病と聞いた途端、ゴウマは一瞬眉間にしわを寄せた。
異種族は人間より障害の認知が低く、ほとんどが障害者を病人扱いしている。なので障害を病気呼びするのは仕方ないと理解しているがゴウマは納得はしていない。
「以前も申し上げたと思いますが、障害は病気とは違い、完治することはありません。我々は障害を"治す"のではなく、障害と"向き合う"ために1つ1つの課題を障害者と共に乗り越えていくことに力を尽くしています」
ゴウマの言葉を聞いても、2人は理解しようとせず、難解な顔を浮かべる。
「そんな悠長なことを言って、本当に娘は大丈夫なのですか!?」
不安そうにフォーレが声を荒げると、ストーンも少し鼻息を荒げてゴウマに詰め寄る。
「障害など所詮は現実から目を背ける愚か者の戯れ言ではないですか!弱りきった心に鞭打ち、現実を自覚させるのが最善の方法ではないですか?」
父親の意見に真っ向から反論したい所だが、このまま言い合ってもただの水掛け論になるだけだと思ったゴウマはこう切り出す。
「では、その鞭打ちとは具体的にどのようなことをするのですか?」
ストーンから出た言葉で、ゴウマはある提案を思いついた。
翌日の朝、マイコミルームで夜光とメンバーたちは小道具作りをしていた。と言うのも、昨日の衣装が露出が激しいため没になったので、代わりに裁縫プログラムからもらった余った布でそれっぽい衣装や役柄がわかる小道具を段ボールなどで作ることになった。
「ちょっと、あんた!さぼってないで手伝いなさいよ!」
小道具を作っていたライカが、椅子に座って真剣な顔でラジオを聞いている夜光を睨む。
「うるせぇ! 今、大事な所なんだ!俺の分は作ったんだからいいだろ!」
半ギレでそう返す夜光の足元にある箱には、魔王の衣装が入っていた。中にあるのは大きな黒い布地で作ったマント。
マイコミメンバー達から、夜光は悪人顔なのでメイクの必要はないと判断され、
マントと夜光がお気に入りで着ている黒い服を衣装にするということになった。
「夜光って今、何を聞いてるの?」
小道具の色塗りをしていたセリナがルドに尋ねう。
ルドはため息を吐きながら、小声でこう返す。
「競馬だよ。今月やばいとかで一発逆転を狙ってんだとよ」
それを聞き、セリナが心配そうにスノーラに「スタッフさんのお給料って少ないの?」と尋ねる。
「そんなことはありません。私の知る限り、普通に生活できる分はちゃんともらっているはずです。夜光さんの場合は、普段の金遣いに問題があると思われます」
「毎日毎日、酒や女遊びに金を使っていれば無くなるに決まってるでしょ? ホンット、近頃のセクハラ親父って学習しないのね」
夜光に対する愚痴をこぼしつつ、手元の衣装を縫い続けるライカ。
作業を始めて2時間、ようやく小道具が完成した。
完成した衣装は物置部屋にしまい、作業から解放されたマイコミメンバー達はストレッチをして体をほぐしていた。
「あああぁぁぁ!!」
ほのぼのしい空気の中、突然マイコミルームに響いた夜光の悲鳴。
「あっあの、どうされました!?」
心配したセリアが夜光に掛け寄ると、夜光は独り言のような小声で「・・・なんでそこで抜かれんだよ・・・あり得ねぇだろ・・・」とぶつぶつ呟いていた。
この様子から、賭けていた馬が負けたのだと察したマイコミメンバー達。
「あっあの、えっと・・・」
励ましの言葉を掛けようとオドオドするセリア以外は、何事もなかったかのようにストレッチを続けた。
そこへ、マイコミルームのドアが静かに開き、ゴウマが入ってきた。
突然のことに驚くマイコミメンバー達。
「おはよう、みんな。プログラム中に失礼する・・・んっ?」
マイコミルームでゴウマの目に最初に入ったのは、机に突っ伏した夜光だった。
「・・・何かあったのか?」
「お気になさらず、そこにいるのは、馬と金に負けた敗北者です」
スノーラの皮肉を込めた説明で、状況を察したゴウマは、それ以上何も聞かず、ここへ来た本題を話し始めた。
「今日は、夜光君とルドに話があるんだ」
いきなり名指しで呼ばれたルドが、自身を指さし「オレたちに?」とゴウマに確認する。
「そうだ。 すまないがその前に、少し場所を移させてもらえるか?」
「ここじゃ、話せないのか?」
「いや、待たせている方々がいてな?その方々も話に参加してもらいたいのだ」
「う~ん・・・まあいいけど」
ルドは移動に承諾すると、「ほらいくぞ!」と机に突っ伏して動かない夜光に話しかけるが
夜光は「今月の生活費が・・・」と後悔の念を延々と呟く。
「しゃーねぇな」
ルドは仕方なく、夜光の胴体に手を回し「よいしょっと!」の掛け声と共に自分より大きな夜光の体を軽々と持ち上げた。
「はわわ!! ルドちゃん力持ち!!」
ルドの怪力に圧倒するセリナに、ルドは「これくらい訳ねぇよ」とバーベルのように夜光の体を上下させる。
「では着いてきてくれ」
夜光を持ち上げたルドはゴウマの後追って部屋を出た。
「ねぇ、こっそり見に行かない?なんか、気になるし」
セリナが興味本位でスノーラに提案するが、真面目な彼女は口を尖らせる。
「セリナ様。 今はまだプログラム中です。 夜光さんがいないからといって、自由に時間を使って良い訳ではありません」
注意を受けるものの、セリナは子供のように頬を膨らませ、「スノーラちゃんの頑固者!」と可愛らしく反抗する。
「何を言われてもダメなものはダメです」
子供をしつける母親のようなスノーラ。
行かないように腕を掴んでいると、セリナが目を細めてこう言う。
「でも、ライカちゃんとセリアちゃんはもう行っちゃったよ?」
「えっ?」
辺りを見渡すと、確かに部屋にいるのはスノーラとセリナのみ。
セリナにばかり気を取られていたのも原因だが、セリアとライカはプログラムを途中で抜け出すようなことはしないと少し過信していた。
「いつの間に!」
2人の身の速さに、唖然とするスノーラだった。
ゴウマを先頭に彼らは異種族用の面談室の前までたどり着いた。
入る前に1度振り返り、2人にこう言う。
「わざわざ付き合わせてすまんな」
プログラム中に連れてきたことをわびるゴウマだが、ルドは笑顔で「別にいいって」と気に掛けないように返す。
「・・・って言うかお前いつまで固まってんだよ!」
目的地に到着し、担ぐ必要はないと判断したルドは担いでいた夜光を無造作に下ろした。
「痛てぇ!!」
床に落とされた時に打った腰を擦りながら立ち上がるが夜光。
いつもなら文句の1つでも言う所だが、競馬のショックからか、ルドのことなど見もせずただただため息をついて床と見つめ合っていた。。
ゴウマは改めて面談室のドアと向き合い、ドアをノックする。
中から男性の声で「はい、どうぞ」と入室の許可を得た後、ゴウマはゆっくりとドアのノブを回す
ドアが開いた瞬間、夜光はすっとんきょうな声で「うわぁ!!」と尻餅をついてしまった。
中にいたのは、上半身が人間で下半身が馬の種族、ケンタウロスであった。
「紹介しよう。ケンタウロス族のロイズ夫妻だ」
ゴウマがそう紹介すると、ストーンが口を開いた。
「初めまして。私はストーン ロイズ。そして、妻のフォーレだ」
フォーレは紹介されると無言で軽く頭を下げた。
その表情はどこか不安げなものを浮かばせている。
夜光はすぐさま立ち上がり、「ど・・・どうも、スタッフの時橋夜光です」と礼儀はないものの無難なあいさつを口にする。
顔を引き釣れ、こわばっているだが無理もない。目の前にいるのは3メートルはあるケンタウロス。襲われたりしたらひとたまりもない。
機嫌を損ねるようなことはしないでおこうと、夜光は内心誓う。
「お二人は、ルドのご両親だ」
ゴウマのさらなる紹介に、夜光は「えっ?」とルドに視線を移した。
「(そうか。すっかり忘れていたけど、マイコミの連中はセリアとセリナ以外は異種族なんだったな。でもまさかルドがケンタウロスだったとは・・・)」
マイコミメンバーの中で、人間であるのはセリアとセリナの2人。
ルド、スノーラ、ライカはパスリングで人間になっている異種族である。
「久しぶりだな。ルド」
「元気そうでなによりよ」
両親は優しくルドに声を掛けるものの、ルドは先ほどとは打って変わって、うつろな目をしていた。
ルドは両親と目を合わせずに「「はい・・・」とだけ返した。
そして紹介がお終わりゴウマはさっそく本題に入った。
「夜光君、ルド・・・突然申し訳ないが、2人には2日後、ルドの故郷である”ドープの森”でお見合いをしてもらいたい」
「「!!!」」
ゴウマのいきなりの発言に一瞬理解が遅れる夜光とルド。
「・・・はぁ! お見合い!? なんで俺が!」
動揺しながらも、説明を求める夜光。
無理もないこととはわかっているも、ゴウマは夜光をなだめ、冷静さを取り戻させる。
「父さん、母さん!どう言うことだよ。いきなりお見合いなんて」
ルドがそう尋ねると、ストーンはルドの元へと歩み寄る。
「ルド。お前の”病気”を治すためだ」
「・・・っ!」
ストーンの”病気”という単語を聞いた途端、ルドは急に押し黙ってしまった。
夜光は”病気”と言う言葉が気になり、ゴウマに耳打ちする。
「こいつ、なにかヤバイ病気を持っているのか?」
ゴウマは首を横に振り、ルドに聞こえないくらいの小声でこう返す。
「病気とは障害のことだ。異種族には障害の認識がほとんどなくてな」
「障害? こいつの障害はえっと・・・」
書類でメンバーの情報を見たことはあるが、夜光は記憶の奥底にしまわれているようで、上手く思い出せない。
夜光が思い出すことを全く期待してないゴウマがやれやれと言わんばかりにため息をつく。
「ルドは{性同一性障害}だ」
「それって確か、心と体の性別が違うっていうあれか?」
「そうだ。ルドの体は間違いなく女性だ。だが心は男性なんだ」
それを聞き、夜光は今までのルドの行動に思い出した。
初めて会った時から、ルドはほかのメンバーと比べると、行動や性格が乙女らしさがあまりなかった。
昨日の騒動でも、露出度の激しい衣装に包まれていても、ほとんど羞恥心を感じていなかった。
「(てっきりボーイッシュな性格だと思っていたが、心が男って言うなら、今までの男らしい一面は納得できるな・・・)」
ここで、今まで全く口を開かなかったフォーレがルドに近づいて、肩に手を置く。
「ケンタウロスと人間のお見合いなんて前代未聞だけど、このお見合いであなたが女性の自覚を持ってくれると信じて、お父さんが提案してくれたのよ」
フォーレは本心からルドを心配しているようだが、ルド自身は全く嬉しくなさそうであった。
夜光が「ルドの障害って見合いでどうにかなっちまうのか?」と愚門をゴウマに投げかける。
ゴウマはこれにも首を振る。
「少なくとも、ワシはそんな話を聞いたことがないがな」
「ルド。いつまでも障害などと言うくだらんもののために、現実から目を背けるのはやめろ。正常に戻り、私達のもとへ帰って来い」
「ルド。お母さんはあなたの病気が治ると信じているからね」
フォーレは優しくルドの頭を撫でた。
ルドの心には、嬉しさという気持ちは一切なく、
両親が優しく接すればするほど、自分自身を否定されているような気持ちになり、ただただ悲しかった。
「うん。ありがとう」
複雑な気持ちを押し殺し、作り笑顔で感謝するルド。
両親はただ本気で心配してくれる。
それがわかっているからこそ、ルドは何も言うことができないでいた。
「では、明後日に見合いをすると言うことでよろしいですか?」
ストーンがゴウマに確認すると、ゴウマは夜光に視線を向け「どうする? 夜光君」と選択を迫る。
「・・・仕方ねぇ。やるよ」
ダルそうに頭を掻きながらも、夜光は見合いに了承した。
「・・・わかった。では、ストーンさん。場所はご自宅でよろしかったですか?」
「あぁ。よろしく頼む」
こうして、明後日に見合いすることが決まった。するとゴウマは、
「さてと、あとは・・・」
突然ドアにゆっくりと近づき、すばやくドアを開けた。
「「「「きゃぁぁぁ」」」」」
ドアを開けた途端、セリア達4人が部屋に倒れこんできた。
「はぁ。何をやっているんだ?君たちは?」
どう見ても盗み聞きをしていたのは明白だが、ゴウマは念のために尋ねた。
「申し訳ありません!私は止めたのですが、力がおよばず・・・」
頭を下げ、すばやく謝罪するスノーラだが、ちゃっかり自分は間違いをおかしていないとアピールする。
「はぁ!? あんた、途中からドアに耳を当てて普通に聞いてたじゃない!!何、自分だけ誠意を見せてんのよ!!」
子どものようにチクるライカがスノーラに詰め寄る。
「あの・・・これはその・・・」
言い訳が思い付かずにおどおどしているセリア。
「私は記憶障害だから何も覚えてないよ!!」
言い訳が思い付かず、しまいには記憶障害に逃げるセリナ。
夜光とゴウマは「何をやってんだか」と言わんばかりに、深いため息をついた。
そして、セリア達は盗み聞きの罰としてマイコミルームの掃除をするはめになった。
その夜、夜光は誠児と笑騎の3人でラーメン
その席で、今日のことを話すと「羨ましい!!」笑騎の第一声が店に響いた。
「「(言うと思った・・・)」」
内心そう思いながらも麺をすする2人。
「ルドちゃん言うたら、巨乳ばっかのマイコミメンバーの中でも一番でかい爆乳の子やで!? しかも、すっごい美少女や!!」
夜光は一旦箸を止め「あいつ、男だぞ? 心は」と異性として見ていないと遠回しに告げる夜光。
「ドアホ!! 男やろうがオネエやろうが、体は美少女やねんからええやろ!? しかもあの爆乳や!!」
その後も店内で喚く笑騎に、誠児がとうとう「落ち着け!」とテーブルにおいてあった灰皿で頭を軽く殴った。
「・・・それにしても、お前がお見合いを受けたって言うのは驚いたな。てっきり、女遊びがしたいとか言って断るかと思った」
夜光は、コップに入った水を一気飲みしてこう返した。
「お前なぁ、想像してみろ! 目の前に2メートル以上ある化けもんがいるんだぞ? そんなのに『まだまだ女とヤリてぇから見合いなんぞお断りだ!!』なんて恐ろしくて言えねぇよ!」
「確かにな・・・と言うか夜光。お前、競馬に今月の生活費をつぎ込んだんじゃなかったのか?」
誠児の言う通り。夜光は今月の生活費を競馬に当て、財布はすっからかんのはずだが、何食わぬ顔でラーメンを食べている。
「セリアに金を借りたんだ」
悪びれることなく平然とそう言う夜光に、誠児と笑騎は引いた。
「お前、よう女の子に金借りれたな。それも、この国の姫のセリアちゃんに・・・恥ずかしくないんか?」
「仕方ねぇだろ? マジで金ねぇんだから」
「だから金は計画的に使えって何度も言ったろ!?」
「なくなったもんはどうしようもねぇだろ!」
誠児の忠告に完全に開き直る夜光。
終いには、「惚れられた男の特権だ」とゲス極まりない言葉を口にする。
「へいっ!天下統一餃子3人前お待ち!」
そこへ、店長が餃子を運んできた。
今日はマナがいないので人手不足のようだ。
餃子は店長イチオシの人気メニューの1つで笑騎の好物だ。
3人は餃子にタレを付けてさっそく食べてみた。
「うまいな!」
「本当だ! 肉汁が濃厚でそれでいて食べやすい!!」
「ラーメンといい、おっちゃんまた腕上げたんといちゃう?」
「いや、まだまだ。俺の目標は、天下統一の全大陸制覇ですから!」
店長の熱い目標を聞いて、笑騎はなぜか涙を流す。
「おっちゃん熱いな!! 俺も頑張って美少女ハーレム作るで!!」
「おう!!頑張れや!!」
熱く語る2人に対して、誠児がふとこんなことを聞いた。
「2人共、付き合いは長いのか?」
「せやな~。もう5年以上の付き合いやな。同じ世界の人間から馬が合うんや」
実は、この店の店長も夜光たちと同じ世界から来た人間だ。
2人は少し前に笑騎から聞いていたが、店の名前が天下統一であるため薄々感付いてはいた。
「そう言えば、2人はどうしてこの世界に?」
誠児の質問に店長と笑騎はなぜか目を閉じて、記憶に浸り始めた。
「7年くらい前になるか。俺は真のラーメン職人を目指して、屋台片手に修行の旅に出ることにしたんだ。ある日、すごい大雨にあってな?偶然繋がりの洞窟に入って雨宿りしたんだ。それでそのまま一晩過ごしたら、いつの間にか、心界に来ちまってな? それから色々あってこの世界で店を立ち上げたって訳だ」
「(なんかあっさりした内容だな・・・)」
「俺も似たようなもんや。美少女ハーレムを夢見て、旅に出てな?
心李町に来た時、繋がりの洞窟の近くでたまたま来てた女神様に《俺のハーレムにならんか?》って誘ったら、女神様が急に洞窟に走ったんや。それを追いかけたらこの世界に来たって訳や。
ほんで、今はここでハーレムを目指すことにしたんや!!」
「(・・・全然違うし、旅の意味も理解できない・・・だいたいこいつ、彼女いるんじゃなかったか? 女神様も怖かっただろうに)」
「せやっ! はよ餃子食わんと冷めてまう・・って、あぁぁぁ!」
笑騎が見たのは、空になった皿とつまようじで歯の掃除をする夜光の姿。
怒り狂った笑騎は夜光の胸ぐらを掴み、「お前! 全部食いやがってぇぇぇ!」
と夜光に餃子の怒りをぶつけた!
「さっさと食わねぇ、てめぇが悪いんだよ」
夜光は悪びれもせず笑騎の手を振りほどき、「そんなに腹が減ってるなら割りばしでも食ってろ」と挑発めいた言葉を浴びせる。
「夜光! 人をバカにするような言葉は使うな!笑騎も餃子くらいで怒るなよ」
どうにか仲裁に入ろうとする誠児だが、夜光と笑騎はそれを押し退け、睨み合う。
「俺は楽しみにしてた好物を全部食った奴は、美女にモテるイケメンの次の次くらいに嫌いなんや!」
いまいち笑騎の基準がわからない誠児は店長に「すいません。餃子3人前追加してもらえますか?」と追加注文をする。
店長は元気の良い声で「あいよ!!すぐ持ってくるぜ!!」と承諾し、厨房に戻った。
「表出ろや!! 餃子の敵取ったる!!」
「上等だ!! このエロダヌキ!! 八つ裂きにしてチャーシューにしてやる!!」
口喧嘩が殴り合いに変わろうとするのを見て、誠児は「勘弁してくれよ・・・」とここで夕食を食べることにした自分を呪った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます