第603話
《 エミリア、みんなが心配しているよ 》
「知らない」
《 エミリア、みんなが話を聞きたいって 》
「知らない」
《 エミリア、ミリィが差し入れだって 》
「……食べる」
「それでしたら起きてきなさい」
ダンジョン
《 ちょっとエミリア! 》
「知らない」
慌てて涙石から出てきた妖精たちを無視して2階に駆け上がり、部屋にテントを広げると中に飛び込む。そしてそのまま寝室のベッドに潜り込んだ。
「ノーマンのバあカあああああ!!!」
思いっきり叫んで泣いて……喚き続けて、そのまま疲れて眠ったようだ。
目が覚めても私の心の中には後悔しかない。温度調整の腕輪を何でノーマンに無理矢理買わせなかったのか。
「ノーマンの大バカあああああ!!!」
足をバタつかせてクッションを手に振り回して、散々喚いて……ふたたび疲れて眠る。涙石の中からすべてを見聞きしていた妖精たちは、私をひとりにして気が済むまで放っておいてくれている。それでも眠っている間の世話をしてくれていて、水分補給もしてくれているのか唇が乾いていないしノドも
…………甘やかしてもらってると思う。
でもそのお礼を何ひとつ返すことができていない。ノーマンにもオボロさんにも鉄壁の
「回数限定……もっと多く設定できたらよかったのに」
どんな攻撃からも死を
「エミリア。そんなに自分を責めないで」
夢の中。それに気付いても目は覚めない。
「女神、さん、だって……泣かないで、よお」
座り込んだ私の目の前に立っていたのは、やはり泣いて目が真っ赤な魅了の女神。『夢のわたり』で渡ってきたのだろう。
「エミリア、だ、て、泣いて、るうう」
魅了の女神が私を抱きしめる。しゃがんだ状態で2人抱き合うとわんわんと大泣きする。ここは夢の中、泣き疲れて寝ることもなく、いくら泣いても涙は枯れ果てず。泣いて泣いて……体感では時間がわからない、夢の中だから。それでも私たちは枯れない涙を流して声をあげて泣いた。
「エミリア。姉妹神として謝るわ、ごめんなさい。それとアウミのこと、助けてくれてありがとう」
互いに抱きしめあって顔をまだ見えない。恥ずかしいというか照れくさいから。そんな中、魅了の女神から謝罪とお礼を言われた。
「……女神のせいじゃないし、姉妹神といっても本当の姉妹じゃないでしょ」
「ええ。同じ系統ってだけで人間のような関係ではないわ」
「じゃあ別物だ。謝らなくていいよ」
そういった私を抱きしめる腕が震えて「ありがとう」と優しく抱きしめてきた。
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