第600話
「みいつけた」
「……!!!」
そんなに驚くことじゃないよね。たとえ『
「アウミ。あんた、いつまで逃げ回るわけ?」
「エミリア……」
「ノーマンたちを殺して。パルクスで『生き女神様』と
「殺してない……私、殺してなんか」
「その手を血に染めていなくても。……その先に死が待ち構えていること、わかってたよね」
カタカタカタ……死者は暑さ寒さを感じない。それでも震えているのは恐怖からだろうか。
この場にいるのは私だけではない。
「ノーマンは……みんなは孤独で寂しい人だった。だから……」
「ノーマンはアウミ、あんたが連れ出した翌日に恋人へプロポーズをする予定だったんだ」
アウミの目が驚きで見開かれる。
「ルレインも結婚間近だった」
「……知らない。そんなこと、私、知らない」
「知らないで許されないんだよ。生まれや育ちがどうであれ、幸せをつかもうとしていた人たちを不幸にしてさ。アウミ、あんたは無邪気な子供の姿で人を
「ちがう、ちがう! 私は悪くない! 何にも悪くない!」
手を伸ばして私に襲いかかってくるアウミ。しかしその伸ばした右腕はアウミの前を横切ったシュヤーマが噛み千切った。シュヤーマが咥えた腕は黒く炭化して消えていく
「ああああああああああああああああああ!!!」
ヒジから先を失いその場で膝をついて、シンと静まり
「痛くないでしょ、したいなんだから」
アウミは死体であり死隊でもある。手足を失おうと痛みは感じないのだ。現に私が指摘すると黙った。
「この子たち、サーラメーヤは
「い、や……死にたくない……死にたくない」
涙を浮かべて顔を左右に振る。その姿は痛ましく、普通なら庇護欲を駆り立てるだろう。しかし相手は大量殺人犯であり……私にそのような態度は逆効果だ。
「そんな言葉が通用すると? たくさんの人たちを死なせたアンタが?」
「私は、殺して、いない」
「戦争は大量殺人。それを命じたのは国王だろうけど……戦争を仕向けたのはアウミ、あんただよ」
「ちがう! 私は女神様の御意志に従っただけ!」
「その女神とやらの名前は?」
「…………え?」
「神には
アウミの目が泳ぐ。
「家族を目の前で失い、自分も死にかけた。前にそう言ったよね」
あれはまだダンジョン
「そのときに女神が現れて自分だけを助けた。その女神はなんでアウミだけを助けた?」
「それは……私が選ばれたから」
「じゃあ、アウミはなぜ家族を見捨てたの?」
「…………え?」
「選ばれたんだったら『家族を助けて』と言ったら助けてくれるんじゃないの? まだ2歳の弟を可愛がっていたんじゃないの?」
思い至らなかったのだろう。驚きの表情で思考が停止したようだ。
「アウミ……家族が亡くなった理由は? 魔物ならアウミ自身も捕食されている。人間による襲撃? それだって
目が揺れている。思い出そうとしているのだろう。都合の悪い記憶を消されているかもしれない。しかし……家族を殺したのは名もなき女神だろう。旧シメオン国の
「信仰の犠牲になるのだから
そう考えていてもおかしくはない。
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