第598話
「貴様! ……! ……」
「うるさい、黙れ」
周囲に群がる騒音を青白い光を纏わせた剣を一撃しただけで倒れ伏す。死んではいない。感電しているだけだ。
「お前は何だ」
「お前なんかより断然偉い存在だ」
私の言葉に目の前で豪華な椅子に座る男の表情が青白くなり……意識をなくしてそのまま床に滑り落ちた。
「寝てんじゃねえよ」
全身を青白い光で痺れて動けない兵士の近くに落ちている剣を拾う。そしてそのままダーツのように椅子にもたれて眠っている男に投げつける。投擲のスキルはダーツで上がっている。……ゴミをゴミ箱に投げ込んで遊んでもいるけど。
そのおかげで、投げた兵士の剣は男の右肩……よりは下だけど、筋肉には突き刺さった様子。こちらからは確認できないけど、イスに突き刺さったようだ。
「こんなことをして……許されると思っているのか!!!」
「思っているよ」
即答したら目を丸くして驚かれた。
「な、に……を」
「何って……今もなお戦争中。戦争中なら許されるよね、敵国に侵入しても、城に侵攻して兵士に実力の差を見せつけて
ヒクヒクと動く男の口。自分たちが仕掛けた戦争だ、負ければ滅びの一途を辿る。
「それを踏まえて戦争を起こし、沢山の兵士たちを投入し、息子や娘を戦場に送り出して殺した。それで何故、自分は殺されないと思ったの?」
「私は王だ!」
「敗戦国の王が生かされるとでも?」
「私が死んだらこの国はどうなる……」
「どうもならない。愚かな王や王族が滅び、圧政から解放された国民が
「なっ……なっ」
国王の死を国民が望んでいる。そう読みとった男の目が左右に揺れる。しかし、床に倒れて感電中の兵士たちは誰も私に否定する言葉を投げかけない。口にはしないが同意しているのだ、国が滅び平和な日常が戻る日を。
「わ、私は影だ! 国王じゃない!」
「知ってるよ、それくらい」
ポンタくんの
国王本人に似た顔なのか。しかし似ているからと言って国王らしくは振る舞えない。ただ、国民さえ騙せられればよかったのだろう。
「本物は国境を越えてコルスターナの湿地帯にいる。
「……なんのことだ。陛下は最強の援軍を連れて戻ると」
ああ……そうやって騙されたのか。
「ところでアウミは……生き女神とやらはどうした」
「生き女神様は陛下たちと共に向かわれました」
しかし、女神に大した能力はない。アウミも死者だ。
コルスターナ王家の血が湿地帯にあるナニカを封印している。まだミスリアが生き残っているのだ。……封印はまだとけていない。
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