第580話
王都はいま、ちょっとしたお祭り騒ぎである。ファウシスからの避難民が毎年恒例だった収穫感謝祭を避難先の王都内外で行なっているからだ。ただ王都内では大きな祭りになっていない。ファウシスからの避難民は一時的なお客さんであり、自分たちの祭りが王都では一般的ではないため、特に盛り上がらなかったのだ。
それは王都の中に入れなかった人たちにも言える。
王都は国内の町と違い、行政が集中している。つまり大きな役所なのだ。そのため食料は近隣の町や村から購入している。しかし、その取り引きは商業ギルドの農産物課によって、各地に配置された商業ギルドで取引されている。そして城下に一定の金額で安定した供給がされている。
魔物と遭遇する危険を
そのため、農産物が王都に届けられるときに定価より少し高い値を提示すれば新鮮な野菜が手に入ると思っていた避難民の目論見は外れた。その結果、当日の朝からやけ酒にからみ酒。そしていきつく先は、酒にのまれて売り言葉に買い言葉。売られたケンカに飛びかかり、巻き込まれた同士でゴングが鳴る。賢い人たちは遠く離れた場所から酒の肴に格闘技観戦。……そして仲良く檻の中。
王都の外でも警備部や守備隊の管理範囲内。
目が覚めて、自分のいる場所に気付いて酔いも
大きな被害はないため、罰金刑で済んだ。しかし前科がひとつ。檻の中で一泊した代金は銀貨3枚。それもここはダンジョン
『エサをあたえないでください。噛みつきます』
『キレイなお姉ちゃんをみると見境なく興奮します。中には襲いかかる節操なしもいるので注意!』
『
『水は与えても酒は与えないでください』
目覚めて罰金を支払い檻の外に出て、はじめて自分の痴態が
「そのことを、な〜んでエミリアが知ってるのかな〜?」
「……ダイバのお目々がこわ〜い」
「エ・ミ・リ・ア〜?」
《 きゃぁぁぁ 》
《 ダイバこわーい 》
「「んん?」」
周囲にいる妖精たちの様子がおかしいことに気付いたダイバとシーズルが眉を
《 エミリアぁぁ 》
「しゃあない。ダイバ、シーズル。王都の妖精がここまで来るのにどれだけ時間がかかるかわかる?」
「どれだけって……。馬車に乗ってくるだろ?」
「戦争を理由に減った乗合馬車の本数が、ここ最近ではゼロになっている」
シーズルの眉間のシワが深くなる。出入りの管理に目を向けても、減少の理由まで気にしていなかったようだ。
「妖精がとんでくるには通常15日。もちろん疲れたら休んで、また飛んで」
「それで、無事にたどり着い……いや、それでエミリアがでたのか」
「うん、妖精は……いまアッシュで休んでる。それで預かった伝言を伝えに行ったら、『えいっやあ!』ってやりあってて。連中は警備部が荒療治でとっ捕まえてた。でもさ、
それで、未使用だった捕虜用の公開檻を使って見せ物になってもらった。これによって、日常的に酒に溺れている連中の頭もシャッキリ目覚めたようだ。
「最初に『
看板も含めて効果があったようで、酒を出す店では看板の文句を店内に貼ることで
「それで妖精は何を求めてこようとしたんだ?」
「ああ、周辺の村にコソコソドロドロが現れていたらしくって。妖精たちがどこまで手を下していいかって相談に来たんだ」
「そいつらはどうした?」
「キマイラたちが巣に
「冒険者か?」
「ううん、ファウシスから来て王都に入れなかった連中。収穫感謝祭のために野菜が欲しかったらしい」
「……今年はまだ収穫できないだろう?」
「そういって断ったら、無茶苦茶に刈り取ったり、完熟前の果実をもぎ取っていったよ」
「……それだけではないな?」
「うん。止めた人をぶん殴って、果樹園に入り込んで魔法ぶっ放して、たくさんの木を焼き放った。それを聞いた騰蛇が犯人をキマイラたちに与えると言った」
その際、止めようとした妖精たちが魔法で殺された。ダンジョン
《 たすけて 》
最後にそう言って『妖精のたまご』に入った妖精をアラクネに預け、逃げたと
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