第493話
ファウシスに近付いたところでキマイラがゆっくりと下降を始めた。どうしたのかと思ったら馬車が近付いていた。
「ダイバ、エミリアさん」
馬車から降りてきたのはキッカさんやネージュさんたち。ファウシスの城門前にいるはずの人たちだ。
「アニキ、なんだってここに」
「オヤジから連絡がきたんだよ、エミリアちゃんが突撃に行ったって。ダイバが追いかけたが、全員でフォローしろって」
「……大丈夫なのにぃ」
「みんなが心配するから、今度からやめろ。いいな?」
ダイバが頭を撫でてくる。妖精たちはここまで連れてきてくれたキマイラを労っている。
《 エミリア。私たちは何があるか分からないから涙石に戻っておくよ 》
「うん、キマイラもありがと……おおお⁉︎」
《 キマイラも一緒に入ってるよー 》
「っていうか、すでに入っちゃってるし!」
「ピピン、奴らを勝手に出ないように言っておけ。そうじゃなければ出られないように俺が預かる」
キマイラから降りたときにポンッと人型になっていたピピンが「分かっています」と頷いた。
「エミリア、ファウシスの中がどうなっているか分かりません。けっしてダイバから離れず、オボロたちを犠牲にして、その屍を踏み潰して後ろを振り向かずに脱出することを優先してください」
「うん、わかった」
私の返事に満足するように頷くとポンッとスライムに戻り、
「はあ……。仕方がない、いいかエミリア。今回は様子を見にいくだけだ」
「うん、お店を見て回るのは今度だね」
「それも、ファウシスが平和に戻らないとできないからな。魔法剣士にしてあるか?」
「うん、大丈夫だよ」
「認識阻害の魔導具は?」
着けたブレスレットを、左腕を上げて見せる。すると無言で腕時計をトントンッと叩かれた。いまはめているのはお兄ちゃんの形見で、外に出るときはこの世界の腕時計を装着している。
「あ、替え忘れた」
「気をつけろよ。大事なものだろう? あと、靴も変えるんだ。それは冒険者に合わない」
「アニキ、馬車に乗せてくれ。エミリア、冒険者らしい姿に着替えろ」
「テント開いていい?」
「ああ、移動するから落ちないように荷台の奥で開いてくれ」
「着替えたら出てこいよ」
ダイバに荷台に上げられて奥でテントを開く。
中に入ると最近ダンジョンに入っていないため袖を通していない冒険者服に着替える。
編み上げ靴をはいてテントから出ると、ダイバも冒険者服に着替えていた。
「ダイバの冒険者服姿って久しぶりだね」
「ああ、初めて会ったときに実力を知るために一緒にダンジョンに入ったとき以来か」
「いつも制服だもんね」
「仕事だからな」
こっそり、ダイバを撮影したのはナイショ。でも気づいたかもしれない。だってちょっと眉間に皺を寄せていたもん。
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