第358話
国境ではすでに問題が起きていた。各国が国境を越えて集まっていたのだ。
「侵攻、として見做されても良いか?」
ダイバのその冷たい声でも各国は国境から出ていかなかった。
彼らの主張はこうだ。
「
私たちがテントからも馬車からでても彼らは国を出ようとしない。
「どこかに隠しているだろう」
そういわれても、幌付きの荷馬車の中には何もなく、テントも畳まれてしまわれた以上、中に隠れていないことが証明されている。
私は『コルデとフーリの娘』という肩書きがある。そのせいだろうか、私はダイバの妹としてスルーされていた。
「お腹すいたよ」
「ああ、そうだな」
ダイバにそう声をかけると、どこぞかの国の男にジロジロと見られた。ダイバの後ろに隠れると今度はニヤニヤと表情を変えた。
「おい、お前。この俺のテントにこい」
「ヤダ」
即答すると今度は目を吊り上げて声を荒げた。
「貴様! 戦争になってもいいのか!」
「うん、お前らがな」
私のその言葉に慌てたダイバが私の腰を掴んで飛び出さないように抱きしめた。
「だからな、そのケンカッ早い性格は誰に似たんだ?」
「アゴール」
「…………そこで俺の名前を言わないところは評価してやる」
そういったダイバに頭を撫でられていると、シーズルが苦笑しながら近付いてきた。シーズルの背後には各国の調査団たちが地面に直接寝ている。
過去にエア名義で作った『おやすみスプレー』がここでも使われたのだ。運良く風が吹いて、少量でも『国境を越えて侵攻していた連中全員』に効果があることが証明された。
「そこで兄妹仲良くしているのはいいが、コイツらをどうする?」
「食べさせてもいい?」
私の言葉に騰蛇が地面を小さく揺らす。
「ダメだ。エミリア、さっきお前に絡んだ男は王族だ。今後の交渉に使ってやろう」
「ほかの連中は?」
「起きているときに騰蛇に食べさせた方が楽しいだろ?」
「うん!」
シーズルはダイバの言葉を正しく理解した。目を覚さないようにしろ、ということを。
私がそれに気付いたのは、ダンジョン
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