第249話


キマイラが味見して不味そうにしていた話を聞いたみんなが大爆笑した。ここは報告のために作られた会場。ちなみに屋台村の広場。私の分はルーバーが作ってくれた海鮮焼きそば。他の人は、屋台で購入してきたりと持ち込んできている。


「それで? 連中はどうしてきたんだ?」


塩焼きそばを口にしていたシーズルが嚥下してから聞いてきた。半数が顔を上げて私の言葉を待っていて、残りの半数は口に料理を運びつつ、耳をダンボにしてこちらの会話を聞き逃さないようにしている。


「さあ? 先に帰ってきたから知〜らな〜い」

「先に? ということは、残った奴がいたのか?」

「うん。キマイラたち神獣と私と契約していない妖精たち」

「ベヒモスたちがまだ帰っていないけど……」


女性の声で檻に目を向ける人たち。そこにあるのは空虚になった檻。


「今はキマイラと一緒に棲み家にいるんじゃない?」

「え? ……大丈夫なの?」

「大丈夫、大丈夫。遊び疲れて寝ているだけだよ」

「遊び疲れてって……」


今度はみんながダンジョン地区に目を向ける。私が知っているのは……


して遊んできたらしいよ。楽しかったんだって」


ちゃんと、人を襲わないという約束も檻を壊さないという約束も守って遊んできたらしい。


「もう数日コルスターナで遊んだら檻に帰ってくるらしいよ。今日は鬼ごっこだったから、明日は何をするつもりかな? でも、鬼ごっこが楽しいって言ってたから、明日も鬼ごっこかも」


逃げ回る人たちを追い回して、時々脅しで大きく口を開ければ悲鳴をあげ、咆哮すれば失神する。そんなゲーム脱落者は、神獣たちが踏み潰さないように妖精たちが空中に作ったに投げ込んだ。


『王城観光滑り台シューター


王城のあちこちを空気圧で移動するように作られた空気でできた川だ。結界を張った城壁の中を王城も塔も窓からでて窓から入って、という感じですべてを巡れるように作られている。一周に一時間かけて巡るようにしているようだ。残念ながら、途中下者げしゃも緊急停者ていしゃもできない。神獣たちの気が済むまでの間ずっと、ぐるぐる回るらしい。


「アレの檻は壊させるなよ」

「うん。もし遊びにいったときにアレが檻から出ていたらすぐ戻るようにって言ってあるよ。神獣や妖精たちのせいにされたら困るもん」


今、テーブルには連中が食べる予定だった料理が載せられている。厨房に置かれていた食材も含めてすべてを妖精たちが回収してきていた。


《 ミスリアの母親を連れて戻ったら、すでにテーブルは用意されていたから、そっちに料理を移したんだ 》

《 せっかく作られたんだから、食べてあげなきゃかわいそうだもんね 》

《 心配しなくても大丈夫だよ。悪いものは入ってないから 》

《 何か入ってたものは置いてきたから 》

《 今頃食べてるんじゃない? 》

「……何が入っていたの?」


コレやソレやアレやドレ。まとめて言えば『精神を壊して自分たちが操っちゃうぞ』という薬。


「それで『聖魔師テイマー、ゲットだぜ!』とでもいう気?」

《 うん、いう気 》

「……バアカ〜?」

《 うん、バカ 》

《 違うよ。大バカなんだよ 》

《 違うよ。果てしなく救いようのない特大バカだよ 》

《 生ゴミにもならないよね 》

《 花の肥料にもならないよね 》

再生リサイクル不可だもんね 》

《 存在自体が毒だもんね 》


私と契約しているからか、いうことも考えることも私に似てきた気がする。

巨人族のハーフのミリィさんとルーバーは種族の関係で妖精たちの姿も見えるし声も聞こえるから、妖精たちの話を聞いて笑っている。ダイバたち竜人は見えないし聞こえないらしい。

それでも、私との契約が十年以上続けば、見えないけどなんとなくわかるし、声は少し聞こえるようになっていくようだ。

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