第236話
ヒュウッと風を切る音が聞こえると同時に結界の腕輪が起動した。結界に
「
「おいで〜。心配しなくても大丈夫だよ」
ジズもレヴィアタンも、矢が飛んでくる方を見たが、私が手を伸ばすと一度纏った殺気を消して近付いてくる。私の手が届くところまでくるとジズはオウムのキバタンくらいに、レヴィアタンは首を伸ばしても高さ一メートルという大きさまで縮んでいた。
「気が付いたとおり、ここの人たちは自分と姿形が違うものに対しての理解が足りないからね。別の場所に一緒にいってほしいの。だから、ベヒモスと同じ檻に入ってもらえる?」
そう聞くと、自主的に檻の中へ入ってくれた。三頭につけられた隷属のシルシを解除してから扉を閉める。ジズとレヴィアタンは大きいまま眠るベヒモスに寄り添っていた。
今もなお、矢が飛んでくるため、結界を解除できない。何十本、すでに百本以上の矢が結界に当たっては地面に落ちて小山を作り出している。
「結界で届かないの、わかると思うんだけどな〜。いい加減、矢の無駄遣いはやめようよ〜」
「この大量の矢を回収して、何かに作り替えるか?」
「うん。この
「そこで
「……何か足りないものがあるの?」
「いいや。『祝福されし者』の鉄塊はけっこう強度が高いからな。そのまま高値で売っちまっても喜ばれそうだな」
「んー? それで人を襲う武器とか作られてたら厄介だよね。……
「エミリアの好きにしろ」
「うん。じゃあ檻の製作に使って」
「職人ギルドに高値で売りつけろ」
「ルレインに売るよ。檻は
「そうだな。ルレインは都長らしく公正だ。間違いはしないだろう」
私の言葉にシーズルが頷く。新都長は、
都長補佐から都長代理を経て新都長になったルレインは、補佐がいない。その代わり、必死に尻拭いをしてきたことで信用と信頼と……恋人を得た。
「まあだ〜?」
「そろそろ、矢が尽きてきた頃だな」
すでに結界の前には三百近い矢が積み上がっている。
「エミリア。偉そうな連中が動いたぞ」
「じゃあ、認識阻害をオンにするよ。で、意識を刈って檻に投げ込むから」
「気付かれるなよ」
「りょ〜かい!」
ダイバとシーズルも認識阻害の腕輪を起動させている。ダイバは筋肉質な肉体を持ち、シーズルは手下っぽい姿だ。そして、私は貴族の少年か市井の少し裕福な家の子だ。
聖魔師の特殊機能『認識阻害』を使っても、見えなくなるわけではない。ただ『見たことがない人物』という認識を持つだけだ。そのため、三人とも見た目を変えるアクセサリーを使っている。
ダイバと調査したが、
矢が尽きたのか、飛んで来なくなったため腕輪が結界を解除した。同時にその場から離れてから矢と使っていない公開檻二つを『収納』した。そのまま、現れた『偉そうな立場の連中』から見つからないように広場を離れた。
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