第207話


『おバカなオツムの仲間ホイホイ』は毎日元気にを作りだしていた。


「エミリア。連中には治癒も回復も効果がないが?」

「できないようにしたもん」

「都長もまっ黒こげになったが?」

「おー。おめでと〜。私やみんなの期待を裏切らずに手を出してくれたんだ〜」


手をパチパチ叩くと苦笑された。


「それで、アレの国が身柄の引き渡しを求めてきた。都長は引き渡したいようだったが……」

「国の奴を呼び寄せて、アレと対面させて。『聖魔士くずれの成れの果て』がどんなものか。たぶん知らないんだろうなあ」

「ああ。都長も理解していなかった」

「それでも引き取りたいというのなら頑丈な檻の用意をしてこいって伝えて」

「ああ、わかった」

「ついでに捕まったバカたちとバカ都長も一緒に、エサ兼給餌係としてつけて送り出してやって」

「それは都長補佐が喜ぶな」


すでに都長の信頼は流砂の中に落ちてどこかに流されて行方不明だ。そして今回、追放という形で外へ放流しようとして真っ黒になった。

髪が焦げてチリチリになった男たちは、男の横の公開用牢屋で仲間が増えるのを待ち望んでいた。そこに都長が現れたのだから歓喜する者までいたが、都長でも簡単に許されないということを理解した今は大人しくなっているらしい。そして、都長が黒こげになってから追随する者は現れなくなった。……つまんない。


「よくあんなのを解き放とうと考えるよね〜?」

「仕方がないだろう。『聖魔士くずれ』は知られてなかったからな。先に捕まった連中も姿を知らん可能性が高い」

「お望みなら一緒の檻に入れてあげるけど?」


同じ見世物用の檻に入っているが、仕切りがされているため、隣にいる男の様子はわからない。見せてあげたら、二度と解き放とうとは思わないだろう。


「今はやめておけ」

「じゃあ、後でのお楽しみにとっておく。せめて『ご対面たいめ〜ん』はさせたいもん♪」

「もし引き取りに来るなら、封印を解除してもらう必要があるからな。やるとしたらそのときだな」

「引き取りに来なくても楽しませやらせてね」

「わかってる……というより、アイツらはか?」

「まだだよ。私の『お楽しみ』が黒こげあの程度で済むはずないじゃん」

「…………やっぱりか」


私が笑っていうと、逆に脱力する守備隊隊長のシーズル。ダイバやアゴールと同じ竜人の彼は『頑丈さが武器』というだけあって、少年期にオーガのこんぼう攻撃を素手で止めるという荒技を見せたこともあるらしい。


「ところで、聖魔士の連中はなんか言ってきた?」

「言ってはきていないが……」

「ああ。には来たんだ」


シーズルの視線の先には黒こげ集団。総数二十一人。都長以外全員は外から来た連中だ。その中に聖魔士や依頼された者がいるのだろう。中から外が見えないから、彼らは自分たちが見世物になっていることを知らない。

全員が全身真っ黒で、チリチリの髪の毛というお揃いの姿。誰が誰だかわからない。それを面白がっている人たちは、最近の娯楽として『どれが都長か?』というゲームをしている。


「じゃあ、あとはよろしく〜」

「ああ、任された」


交渉関係は都長補佐がするだろう。ひと月ほどは特にトラブルもなく過ごせそうだ。

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