第82話
薬学施設の入り口が家の廊下と繋がったのは、シェリアさんがアクアとマリンに遊ばれてから三日後。
シェリアさんのことで何か言われるかと思っていたけど誰からも何も言われませんでした。
「シェリアの失言は何時ものことだから」
「いい薬になったんじゃないかしら」
「これで失言が減ればいいわよね」
フィシスさんにいたっては「今度から失言一回につき三時間の『ボールの刑』。アクアとマリン付き」なんて決めています。シェリアさんは裏の丘で二人に遊ばれていたようです。
丘はデコボコしてて、「「あっちこっちにとんで おもしろかったー」」だそうです。
そんなことを思い出しながら、今日は錬金窯で実験中です。この錬金窯はポンタくんからのプレゼントです。錬金術師が引退したため引き取ったものだそうです。
「エアさんのことですから、有効活用してもらえると思って」
そう言われました。
私が使っている調合窯は一般的なものですが、『薬師専用』のため、他の・・・鉱石や魔石を使った調合には不向きだそうです。この錬金窯があれば、石を使ったり、剣や槍を使った強化などで使えるようです。収納ボックスのようにどんなに大きくても入るようになっているそうです。
ドロップアイテムで手に入れた何の変哲もない金の腕輪と癒しの水を入れてみました。『いやしの腕輪』が完成しました。金の指輪を癒しの水と一緒に錬金窯に入れたら『いやしの指輪』が、ネックレスを癒しの水と一緒に錬金窯入れたら『いやしのネックレス』が出来ました。
此処でもゲームの知識が役に立っています。
詳細には『装備した場合、体力の半分が減った時点で自動で全回復させることが出来る』と表示されました。体力の半分でも生命の危機は十分あります。そのため三分の1で回復しないかと、癒しの水を増やしたり万能薬を使ったりしても錬金窯は動きませんでした。
「エアさーん!!!」
ポンタくんが慌てて
「ポンタくん。どうしたの?薬草か何か必要になったの?」
「違います!って、何をしているんですか!」
「良い子の錬金実験室」
「・・・一体何を」
「だって、ポンタくんがくれた錬金窯が目の前にあって、素材になりそうなものが収納ボックスの中にあったら試してみたいでしょ?」
「エアさん・・・。一応『職人ギルドの一員』だということを忘れないで下さいね」
「何か報告義務でもあるのですか?」
「いいえ。通常ならそんなことはありません。ですがエアさん。新しい物を作ったら報告してください。価値や価格を決める必要があります」
「錬金術の神様から祝福貰っちゃいました」
「だからですよ。今度は錬金術師ギルドが出張って来ますよ」
「・・・迷惑です」
「はい。ですから、誰かに何か言われたら『職人ギルドに所属している』と言って、
「じゃあ、いま作ったのを送りましょうか?」
「まだ作られるのですか?」
「はい。ひとつ成功したから、それにあわせて作ろうと思ってます」
「それでしたら、俺がそっちに伺います」
「ポンタくん。他にも錬金窯はないですか?テント用にひとつ購入したいので」
「ありますよ。どんなものがいいですか?」
「今のものと同じでいいです。それにポンタくんが選んでくれたものなら間違いないと思っていますから」
「分かりました。それでは夕方に伺います」
ポンタくんが来るまでに『水のつるぎ』に『雷のつるぎ』と『風のつるぎ』、『光のつるぎ』に『闇のつるぎ』を作りましょう。これは魔法剣士の私が『魔法の効かないダンジョン』でも魔法を纏わせた剣が使えるように考えたものです。
こうして事前に対策しておけば、慌てることにはならないでしょう。
「エアちゃん・・・。また『面白いこと』をしてたって?」
夕方に帰って来たエリーさんから笑われてしまいました。鍛錬場を借りてポンタくんに武器や装備品を並べて見せました。槍や短剣などの武器に魔石を使ったり、アクセサリーを使って『いやしシリーズ』を作ったり、アクセサリーに魔石を使って『炎のゆびわ』などを作ってみました。威力が弱いため、一時的な防御にしか使えません。
ポンタくんが一番興味を持ったのは、結界石を使ったアクセサリーです。アクセサリーを装備した本人にしか使えませんが、常時結界が張られた状態で移動も可能です。
「一番欲しいのは貴族連中だろうな」
私の作った品物を見ていた皆さんも、ポンタくんが興味を持った理由に気付いていました。
貴族とは何かと生命を狙われやすいのです。身を守るために、喉から手が出るほど欲しいでしょう。
ですが、貴族は職人ギルドや商人ギルドの商品は購入出来ないですし、貴族は職人ギルド所属の職人に接触出来ないのです。
「自業自得だよな」
誰かが呟いた言葉に誰もが納得し、頷いていました。
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