第446話

「ん~。やっぱ米は落ち着くわぁ~。んくんく」

「そりゃ良かったな。あむ」

 明太マヨおむすびを芋焼酎で流し込みながら落ち着くとか言われてもね~。メイン酒じゃねぇかよ。

 当然ながらコップもお猪口も使わない酒豪は黙ってラッパ飲みってな。豪快だこと豪快だこと。

 そうこうしてるうちにこっちは食い終わっちまったわ。

「ん。そうこうしてるうちに酒のあても最後か?」

昼餉ひるげですぅ~」

 そう思ってんのお前だけだって絶対。全部つまみだろつまみ。

「それじゃあまずはこれから」

 箸を伸ばした先にいたのは大根。つまり、最後のエントリーはなんと……おでん。

 もう屋台行けよ屋台。たぶん福岡とかいけばまだあるぞ。なんなら焼き鳥も焼きたての美味いの食えるって。

「んくんく……ん~。合わんことはないけど日本酒のがええかも」

 正確には熱燗だろ? 知ってる。

 ほらもうこれ昼飯じゃねぇって。昼に可愛らしい女が食うメニューじゃないって。構わねぇけどさ。人前ではできれば控えてくれよ目立つから。

「ん。えぇお出汁出るもんやねこれ。スジもええけどこれが中々ええお仕事してはるわ」

「どれ?」

「これこれ」

 あ~。ウインナーね。俺も嫌いじゃないよおでんのウインナー。

 そのままだと少し薫製というかハーブというか独特の匂いあるけどおでんに入れるとなんかまろやかになるよね~。そんで出汁が染み込む代わりに肉やらハーブの旨味は出汁に溶け出すと。良くできてるわ。入れようと思った昔の人すげぇ。

「魚の練り物も海老の真薯しんじょも卵も全部良いお味。これがどこでもいただけるゆーんやからええ時代やねぇ~」

「そしてその良い時代にすぐ馴染んでそれより美味い作れるお前はなんなんだろうね」

「へ? な、なんやの急にぃ。私もそら昔からそない変わっとらんもんは作れるけど……。今の物とか南蛮のは苦手よ? それに人それぞれ好みの味もあるしねぇ~」

 とか言いつつこいつ洋食も普通に作れるんだよな。コロナが洋食系のが好きだし。

 和食が得意なのは本当なんだろうけど他のも作ろうと思えばふっつーに作れるその高いスペックに対して自己評価釣り合ってねぇぞ。お前の場合謙遜とかでなく本当に卑下してるのわかってんだからな。

 ……それはそうとガッツリの中華とかはまだ作ってもらったことないな。今度頼んでみよう。いったいどんな飯が出ることやら。

「それじゃあ締めに……」

 お? おでんも食べ終わって……焼酎も一本飲みきってやっとデザートか。

 季節外れのイチゴの飲むアイス。

 季節外れだろうとなんだろうとチューチューアイスを吸う姿は可愛らしいもん……なんだけど。

「ど~せなら合わせんとな♪」

 愛用の瓢箪を持ってくるのは如何なものか。

 その中身絶対いつも飲んでる桃酒だろ。また甘い物を甘い酒で流し込んで……。

 お前はどんだけ甘いの好きなんだよっ。

「ぷはぁ! やっぱこれが一番美味しいねぇ~♪」

「……」

 そんな顔されると毒気が抜けちまうね。満足そうでなによりだよまったく。

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