第286話
「――この前話した件はどうなったの?」
英国某所にて、一人の大柄な男が金髪の少女と通話をしている。
通話の相手は現在日本にしかない召喚魔法師専門の学園に通っているジュリアナ・フローラだ。
今は才について話しているところ。
つまり、この男こそジュリアナの言っていた魔帝そのヒトである。
『はい。彼も貴方にお会いになりたいそうですよ』
「そうか。それは良かった。拒絶されたらどうしようかと……」
『ふふ。ご冗談を。その時は無理にでも彼の所へ向かうでしょう?』
「……いや、若い頃ならしていたかもしれないけど、今は難しいかな体力的に。僕ももう41歳だからさ。年には勝てないよ」
『それこそご冗談でしょう? まだまだお元気じゃないですか。そもそも体力がないのは昔も今も変わらないじゃないですか』
「痛いところをつくね? 前は融通の利かない子だったのに。いつの間にそんなに柔らかく砕けたんだい? もしかして彼の影響かな?」
『もしかして……彼に思いを寄せてると言いたいのですか?』
「違うのかい?」
『彼は恩人ですけどそのような気持ちは湧きませんね。抱いてるのは
「ふぅん。ジュリにも春が来たかと思ったけど。この分だとまだまだ先かな?」
『神のみぞというやつかと』
「それもそうか。恋はいつだって突然だものね。ところでもう一つ聞きたいことがあるんだけど」
『はい?』
「あくまで念のためなんだけど。僕についてはちゃんと話してる?」
『えぇ。ちゃんと魔帝ということを――』
「名前は? その他プロフィールは?」
『……』
「忘れてたね?」
『あ、いえ……。で、でも! 彼はとても冷静な人なので突然お会いになってもきっと普通に対応するかと!』
「完全な言い訳で笑うしかないね……。まぁ僕もサプライズは嫌いじゃないから良いけどさ。でも、重要なことを伝え忘れるのは誉められたことじゃないからね?」
『……はい』
「じゃ、そろそろ切るよ。この後定期検診なんでね」
『あ、はい。長々と失礼しました。ではまた』
「あぁ。また。さてさて、よっこいしょ」
ひとしきり話終わり、通話を切ると病院に向かうため立ち上がる魔帝の男。
「っと、その前に一服一服」
病院に行く前にタバコを吸おうと毛むくじゃらの手をポケットに伸ばす。
「すぅ~……はぁ~……」
魔法で火をつけ、歯茎を剥き出しながらタバコを一吸い。
「不味いな。これ外れだ。キューバ産の葉巻を品種改良したって聞いたから試したけどダメだなこりゃ。二度と買わねぇ」
渋い顔をしながら感想を漏らす。
お気に召さなかったがもったいないからと残りはちまちまふかしながら自宅を後にする。
彼の名はフランク・ブルーノ。身長180㎝。体重105㎏。性別は♂。現在は隠居し、余生をのんびり過ごしている。
史上初の
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