第283話
「坊! おはよう!」
「にゃーにゃー!」
「……うるせぇ!」
ピッタリ朝五時。二匹のケダモノが飛びかかってくる。
俺はすかさず身を起こして二人の頭を掴み。床に叩きつけ……たんだけど。
「はぁ……はぁ……坊のおてて……おててぇ……っ!」
「れろれろれろれろれろれろ」
ひっ! 一人は恍惚とした笑みを浮かべ一人はなめ回し始めた!
なんだその反応は! 触られたらなんでも良いのか!?
てかコロナお前は奇行にもほどがある。禁断症状かなにかか!?
「あぐ!」
「いった!?」
こんにゃろ! 思いっきりマナ込めて噛みやがった!
しかも俺供給してないのに!
やっぱこいつ学園の契約無視して自分のマナ使えやがるな!? 学外で結んだカナラと違ってちゃんと学園の規則に則って契約してるってのに!
ひょっとしたらお前リリンよりでたらめ?
「あぐあぐあぐあぐあぐ」
と、んなことより遊び盛りの子犬がおもちゃをぶっ壊れるまで噛み続けるがごとく俺の指を噛んでるこいつを引き離さなくては。
じゃないと俺の指が減る。てかすでにちょっと肉は食われたよバカ野郎。
「は~な~し~や~が~れ~」
「ひゃん! なんでこっち離すの!?」
「ふごぉ!」
カナラから手を離してコロナの対処に行ったら。今度はカナラから抗議が。
なんで潰してた顔面から手をどけてやったのに文句を言われないかんのじゃ。
えぇーえぇーわかってるよこの変態は俺に触れられないことよりひっぱだかれたほうが一億倍嬉しいってね!
「はっ!? 今こそ坊に抱きつく機会では!?」
余計なことに気づくんじゃねぇ。あと心の声が駄々漏れだぞ。
「で、でもそんな……はしたない事……//////」
いや今さら抱きつくことに躊躇されてもだね……。
お前もっとすごいことしてるじゃん? ナニとは言わんけども。
あ、いや待って。今は躊躇してくれてありがたいわ。この
「で、でも七日も我慢したし……っ! ちょっとくらい!」
切り替えが早いんだよお前はよぉ!
せめてもうちょっと待ってくれてもよかったろうが!
「ぼ、坊!」
「させるか!」
「ほわ!?」
「ヴぇろッ」
飛び込んできたカナラを股に挟んでキャッチ。そのまま捕獲して身動きとれなくする。
その際一瞬宙に浮かんで体を支える軸になったのは床に頭を押さえられつつも指に食らいついて離れないコロナなわけで。
口の中で体重乗せつつ捻りもいれたもんだから指が舌をからめつつちょっと奥まで入って人間の声帯からは滅多に聞けない奇怪な音が出たけど……。
特に痛がってないし気にしなくてよし。うん。
「はわわわわわわぁ~……っ! 坊……! あたあたあたって! 当たってぇ!!!」
そりゃあ股に挟んでるからな! 当たるだろうよ! 必然的に!
んなわかりきったことをいちいち口に出すんじゃない!
「ふごぁあぐあぐあぐあぐあぐ!」
だから痛ぇって! いい加減離せ!
あ、こらカナラ! モジモジするな! 擦れるから! ナニとは言えないけど擦れるからやめて!
あぁもう! このなんだよ状況! 誰かどうにかしてくれないかね!?
「――ん? またやっとるのか貴様らは」
あ、誰かと思えば最近ゲームよりも実家に戻ることが多くなったリリンじゃないか。
ふむ。なにしてるか知らんがこれどうにかしてくんねぇかな?
って感じのアイコンタクトを送ってみよう。
チラッ? チラッ?
「フム。じゃれるのも良いがそんな事してたらまた仕置きを食らうぞ~。最悪嫌われるかもな?」
「う……っ」
「あぐ――……」
リリンの客観的かつ的確な一言で二人から力が抜けるのを感じる。
恐る恐る離してみると俺から距離をとっておとなしくなった。
ホッ。ひと安心。
正直リリンだしアイコンタクトの意味には気づいても助けてくれるなんてあんまり期待してなかったんだけど。
なんだよたまには役に立つじゃない――。
「では報酬――んっ」
「「「!!?」」」
一言礼でも言ってやろうかと顔を向けたら俺の反射でかわせる速度を軽々越えて近づいてキスされた。
いや、あのさ? 嗜めた直後にそれやる? せめて後にしてもらえなかったかな? ねぇ?
「「んぅ~……!」」
ほら、あそこの二匹がすごい恨めしそうにそして羨ましそうにこっち見てるよ? ねぇ? どう責任とってくれるんだこら。
「くはは! どうせ朝になったのを見計らって襲いでもしたんだろう? しくじったんだろう? 阿呆め。奇襲とはこうやるのだ」
「「はっ!?」」
なるほどって面してんじゃねぇ。
てかやっぱわざと見せつけるようにキスしたのかテメェ!
鎮火したあとに油まいて松明投げるような真似しやがって!
しかも助言なんてしやがって! お陰で二人が変にやる気になってガソリンまでぶちまけられた気分だよ!
いつか絶対お前だけには完全な報いを受けさせてやるからな! 覚悟しとけよ!
「楽しみにしてるぞー」
心を読むな!
ネスさんかお前は!
「断る」
だから読むな!
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