第272話
つい先日生存戦略逃亡の決意を固めた俺なのだがしかし。
さらに日をまたいでしまい本日はお休み。
つまりはカナラの行動を制限するものはないわけで。
なんなら今ロッテは買い出しに行ってしまってるわけで。
まぁその買い出しって主にリリンのおやつを買いになんだけどさ。
いや、まずリリンテメェ自分で行けよって話なんだけど。ロッテが自発的にそういった雑用をこなそうもするもんだから怒るに怒れない。
今はプリチーになってるから特にな。まずちゃんとした会話ができねぇよ。
ってなわけでどっちにしろロッテをこの場に留めるのは難しく。分断を余儀なくされてしまった。
つまりこの淫魔から逃れるためのその一が使えない。
こういうときはいつもなら不本意だけどカナラを回避する方法その二であるコロナに絡んで適当にバイオレンスごっこでお茶を濁すを発動したいところなんだがね。
コロナはコロナでうざいけども。それでも性的な雰囲気を醸し出すカナラよかマシ。じゃれてりゃある程度満足しやがるし。
た~だ~。そのコロナも今はちょっと忙しいというかなんというか。
「んあ~……はむん! むふ~♪」
カナラとロッテ作ドデカプリンに夢中でそれどこじゃないご様子。
ロッテも日に日に色々覚えるけどカナラはカナラでバリエーション増えすぎだろ。
お前ちょっと前まで和食専門だったくせになんでもうお菓子どころか遊び心出しちゃったヤツまでつくってんだよ。
「ふふ♪ ろうちゃんはお買い物。ころちゃんはおやつ。りりんちゃんはいつも通り。これで今は私が坊を独り占め♪」
……は! まさかお前! この状況を作るためにあんなデカブツ作りやがったのか!?
お、俺を愛でるためだけに……。ほ、本当俺への愛が深ぇな……。
愛されてるのはわかってたし。なんならこんなことされてるのに不思議にも思わないんだけどね……。
むしろ当然っていうか?
なにせこいつ俺の傍にいたいがために戸籍を作ったからな。どうやったかは聞いてないけど。てか聞きたくないけど。
そんなとんでもないことをやらかす女だし。不思議ではない。不思議ではないんだけど……。
いざ目の当たりにするとやっぱアレだよね。怖い。愛が深いと、怖い。
「はぁ……はぁ……」
あ~……ここ最近特に触れ合いがなくて生殺しだったせいかいつにも増して見せちゃいけない面になってるわこいつ。
これ、このまま好きにさせたら俺の純潔散らされそう。
となれば対策を講じなきゃな。
んじゃカナラを回避する方法その三といこうか。
これやるの初めてだけど、恐らく通用するだろう。何故ならば――。
「……っ!」
「へ?」
突然後ろに回り込まれ、肩を掴まれ間抜け声をあげるカナラ。
突然の奇行に驚いてるようだな? 俺からお前触ることはこの姿では皆無だったから余計にだろう。
だが、本番はこっからだぞ。
「……っ。……っ」
ギュッギュッと掴んだ手に力を入れる。そうこれはいわゆる おばあちゃん大好き肩揉みである。
「あら~肩揉んでくれはるの? ふふ。おおきに♪」
結構ダメもとだったんだが、今の声からは色気が消えてほっこりしたモノを感じた。ってことはこのカナラを回避する方法その三――年よりは労おう敬老作戦は成功だな。
こいつあらゆる方面でバリエーション豊かだからな。
ショタコン然り。母性然り。乙女然り。都合の良い女然り。嫁力然り。
本当に色々属性を保有してやがる。
だから俺は思ったんだ。だったら年齢的におばあちゃん属性あるのではないかと。紀元前生まれだし。
そしてこいつは上手く刺激してやればすーぐ刺激された属性の顔を出しやがるからやってみたんだけど。
案の定おばあちゃん属性が顔を出して今にも茶をすすりそうなリラックス感を出してる。
あ~願わくば、ずっとそんな感じでいておくれ。
「ふふ。こない可愛らしい童に肩揉みなんてされたら若返ってしまいそ」
可愛らしいのはお前の趣味の所為だけどな。
女物の和服しか寄越しやがらねぇんだよこいつ。
しかも髪解かしたり髪飾りつけたり服以外の手入れまでしやがるもんだから余計女児に見えることだろう。
ちなみに今着てる服は紫色の矢餅柄の袴。大正時代あたりによく見たようなアレだ。
こいつ自身はたしか江戸に入る前にはあの世界にこもってたはずだから知らないはずだけど。神隠しにあったヤツらの入れ知恵だろうな。
昭和時代の元人間もいるしな。雪日っていう。
あいつとその前に迷い込んだヤツにはかなり年月空いてたって聞いた気がするからあいつがこの袴を教えた犯人なのではなかろうか。余計なことしやがって。
まぁでも。一個だけ救いはあるにはある。
女物しか寄越さないカナラだが、リリンがよく着るようなゴスロリっぽいドレスを着せようとしないとこ。
あんなの着るくらいなら同じ女物でもまだ
まず女物を着せるなって言いたいところだが、贅沢は言えない。そもそも会話をしてないし。
でももし伝えられるならば、せめて男物の和服を着せてもらえないだろうか? 俺に女装癖も美少女になりたい願望もないもんで慣れてはきたけどただただ苦痛なもんで。どうか男物の服を。
「ほんま効くわぁ~……」
うん。絶対伝わらないなこれ。
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