第271話

 体は子供、頭脳は大人になって早数日。

 慣れとは恐ろしいもので最早ちびっこに対するヤツらの扱いにも動じることはないわたくしでございます。

「にゃーにゃー!」

 おや? 早速銀色の悪魔がやってきましたね。

 さてどのように対処するかお見せしましょう。

「ふん!」

「ぶぼ!」

 顎めがけてドロップキックをかましてやりました。

 銀色の悪魔ことコロナは後頭部を床に打ち付けひっくり返り、恥ずかしいポーズを決めつつスカート故にパンツ丸出しに。

 ふん。ざまぁみさらせ。残念ながらしゃべれなくても手足は自由だからこういう抵抗はできるんだよなぁ~!

「……っ! にゃーにゃー!」

 しかし彼女コロナはめげません。迷惑にもすぐに立ち上がり向かってくるんですけどねー。まったく。しぶとい野郎だぜ。

 でもま、こういう感じでタフネスを発揮するから遠慮なくいけるんだけどな。

 ……つか、常々思ってたけどやったらこいつ丈夫過ぎやしないか?

 鼻フックに動じない胆力があるのは知ってたけど、蹴ってもケロッとしてやがるもん。

 もちろん俺も小さくなったし? 物理的な筋肉量は減ってるけど……。にしても異常だわ。

 もしかして……このマナのせいだったりすんのかな?

 最近というか数ヵ月前からというか。いつも垂れ流しにしてるこれってそういう意図でやってたり? もしそうなら大した策士だよ。

 バカに見せかけて日頃からマナ垂れ流しにしながら噛みついたり抱きついたりはこういうときに俺からの攻撃を自然に耐えるためだったとは。なかなかやりおるわこやつ。

「ふがぁ!」

 おっと。かなり素早い身のこなしでまたも突進してきやがったな。何度もあしらわれてるってのにめげねぇにもほど。

 しかしこっちも二度とおとなしく捕まるつもりはない。拳で抵抗してくれるわ。ていっ。

「ぐぶゅ……っ」

 あ、やっべ。力入マナ込めれすぎて鼻潰しちまった。

「……ずび」

 鼻血を鼻水みたくすするな。すぐに垂れてくるだろが。

「……にゃーにゃー! ずびっ!」

 鼻血が出ようとお構い無し。なんといつファイティングスピリッツ。称賛に値するぞコロナ。

 でも部屋が汚れるからまずは止血しろバカ野郎。

「はいはいころちゃんそこまでよぉ~」

 ここでカナラの登場。コロナを後ろから抱えあげた。

 どんなにエグい打撃をコロナに与えてもダメージがないと見るや止めることをしなかったカナラだけど、さすがに出血したら止めるか。

 理由としては俺を助けるつもりじゃなかったろうが、しかし結果的に俺を救うことになった。たまには役に立つなお前。よくやったぞ。

「坊にいっぱい遊んでもらえて嬉しいんはわかるけど。可愛いおべべ汚れてまうからね」

 あ、コロナのことは気遣ってないねそれ。出血しても元気だからだと俺は信じたいな。

「ふがぁ!」

「わわ! 暴れんといてぇ~!」

「……」

 汚すまいと先んじたカナラなんだが、無駄に終わったな。

 コロナがじたばたしながら逃れようとするもんで血が飛び散り部屋を汚しおったよ。主に被害を受けたのは俺だけどな。お陰で赤ブチのダルメシアンのようになってしまったわ。

 まったく。コロナは俺以外のだっこに基本拒絶反応を起こすってのに。迂闊だぞ。

「あらあら。坊汚れてしもたね。……じゃ、じゃあ一緒にお風呂――」

 入ろうかと言う前に、俺は駆け出す。

 目的地? そりゃもちろん。

「おう!? ど、どうした……って服に血が……」

 ロッテのデカ尻だ。

 ……デカ尻は余計だったわ。筋肉質で弾力があって良いケツです。

 さて、なぜロッテに抱きついたのか。これはカナラを回避する方法その一。『ロッテに甘える』だからだ。

 いつでも使える方法じゃないが、カナラはちゃんと遠慮できる女。コロナとじゃれてる時然り、俺が他の誰かと絡んでたらカナラはちゃんと身を引く。強引に来たりはしないのである。

 代わりに一度捕らえたらなかなか離れないのでちゃんとカナラによる捕獲行動の予兆は感じ取らなくちゃいけない。野生よりも敏感に危機を感じようプライスレス。

「あ~……汚れてしまったし。先に風呂に入っても良いか? ついでに才も入れてくる」

「あ、はぁい……。じゃあ私はお夕飯の準備してるねー……」

 コロナの鼻にティッシュを詰めながら悲しそうな顔になるカナラ。

 お前のそういう顔は一番効くから心苦しい。

 心苦しくはあるが、でも仕方ない。だってカナラ調子乗って変なことしてくるから。主に性的な意味で。

 そんなR18おねしょたみたいな展開望んでないので俺は心を鬼にしてカナラから逃げてやるわい。

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