第176話
「もうさ~。私ら召喚魔法師目指してるわけよ。なのになんだよあの肉体の酷使の仕方! 軍人? ねぇ私ら軍人目指してんの!? ゴリゴリ鍛えてゴリソルジャーになるの? うほっ?」
合流して席について早々愚痴が始まった。これは黙らせて良いやつだろうか?
「たしかにこの島に来てからのメニューは地獄だね……。さすがにキツい……」
「そのぶん成果が出てはいるがな。これで成果なしなら……心が折れる」
「まぁ三人は特に目をつけられてるからね~。ゆみちゃんとマイクはしごき甲斐があるからだろうけど。伊鶴に関してはふざけさせないためにキツくしてる節あるねたぶん」
「そう! それ! 運動的な身体的な? 才能なら特別メニューはその二人だけでいいはずなんだよ! なのに騒ぐ元気あるからって理由でなんで同じカテゴリーにされてるんだよ!? 横暴だよ!」
「普通のメニューでもヒーヒー言ってる私が同じことしたら死にますよねーアレはー。本当にご愁傷さまです」
「心がこもってねぇな?」
「自分でいっぱいいっぱいなのでー。ハハハー」
「あ、うん。そうだよね……。ごめん」
他の連中に止める様子なし、か。となると止めれば俺が標的にされる黙ってよう。
「んで? 我々が地獄を味わってる間に貴様はなにをしていたんだね? お?」
「まだどんな訓練内容か聞いてないんだが?」
「どうせそんなもんあとでやんだろ! 自分で味わいな! あとコロナちゃんそういう服も可愛いね! だっこさせて!」
「はぐはぐ!」
伊鶴ガン無視でひたすら頬張るコロナ。わかりきってた結果なのに伊鶴泣きそうである。
「それでなにしてたんだよおめぇよぉ!? 早く言えよぉ~!!?」
「叫ぶな。唾と鼻水が飛ぶだろ」
「うるへぇやい!」
「どうどう落ち着け。まぁ私も
多美さんや。そんなに肌が気になりますか。たしかにこの中で唯一と言って良いほど一番見た目に気を遣ってそうだけども。
つか全員気になってますって目付きだな。これはなにかしら答えなくちゃダメか。
とは思いつつも。素直に答えるわけにもいかない。カナラのことや投影による完全な人間放棄。明らかにこいつらが生涯かけても関わらないかもしれない類いの内容。
つまり……詳しく話すとなると時間がかかって面倒臭いことこの上ない。
ってことで適当にはぐらかそう。
「田舎の温泉地でゆっくりしてた。俺一人でな」
「「「――」」」
おっと全員から殺意がビンビンだ。やめろよ。つい構えそうになっただろ。
「……貴様ぁ~。許さねぇ……。今貴様は我が逆鱗に触れたぞぉ!」
「あ! バカ! こんなところで暴れたら出禁になるでしょ!」
「明日を最後にあと二週間は普通に休暇にして良いと言われてるんだぞ!? ここで施設を制限されたら水の泡だ!」
「残り半分の休暇を部屋でゆっくりしてるのも良いと思いますよー。私は是非ともそうしたいです。ずずぅ~……」
「……そのご年配のような感じはネタだと信じるよミス八千葉」
「相変わらず賑やかなヤツらだなぁ~」
「誰のせいだ貴様のせいだコラァ! ぶち殺すぞテメェ!?」
暴れようとする伊鶴を全力で止める多美と夕美斗。
それでも止まらないからこのあとスタッフの方が来て厳重注意を受けてたよ。ざまぁ。
ちなみに我が契約者共は我関せずとずっと食事に没頭してたよ。そんでリリンはハイペースで食い過ぎて出禁になりました。
「解せんな」
……時々お前がアホに見えるわ。
「で? なんで俺の部屋に集まってるわけ?」
食事が終わるとなぜか俺の部屋に全員集合している。疲れてんだろ? 部屋に帰って寝てろよテメェら。
「まだ制裁が終わってないからなぁ~? これから拷問の時間だよクソッタレ」
「そんでお前らはどんなことしてたんだ?」
「おう無視か?」
当たり前ぇだバカ。なんでテメェの妬みに付き合わなきゃならんのじゃい。そんなに暴れたきゃ一人で自分の部屋か外でやってろっての。
「ん~。まずいつもの体力作りあるだろ?」
「あるな」
「まずそれがハードになってる」
「うわーめんどくせぇ~」
「それだけならまぁ普通の強化合宿という感じなんだが……」
「加えて最初の一週間は常時マナを契約者に送り続けなきゃいけなくて……」
「循環じゃなく一方的に送ってるもんだから体力めっちゃくちゃ持ってかれてしんどいんだよ……」
「……」
無視されて話が進むのでおとなしく座る伊鶴。一生そうしてろ。
それよりもこいつらの訓練内容がきしょいわ。特に使うこともなくひたすらマナ送るという無駄で辛い行為をし続けるとか。心身ともに削られるわ。
「午前はそれで失神して終わりで、午後からは身体強化や移動に関わる人域魔法の練習ね」
「え」
マナの消費したあとにマナを消費する訓練をするの? バカなの? 殺す気? 俺や伊鶴なら制御してれば問題ないが他の連中死なないかそれ。
「それで午後も失神して起きた頃には夜ね。で、ご飯食べてお風呂入ってぐっすり」
「というのを一週間続けて、残りの一週間はずっと人域魔法の行使ですね」
「お陰でニスニル達のお陰である程度マナの感覚は掴めるようになったから下手くそな私でも少しはマシになったぞ」
「マシっていうかゆみちゃんがたぶん一番化けてるよ。成長期ってくらいに」
「たしかに! 今のゆーみんなら本当にさっちゃんシバき倒せるんじゃね!?」
「それはどうだろう……。まだ無理だと思うんだが……」
困ったような顔して俺を見るな。俺が困るつっの。
「やってみなきゃわからないだろうけど。少なくとも特に意味もなくガチバトルとかしたくねぇからな俺は」
「私もまだ敵うとは思ってないし。もう少し自分を鍛えてからにしたいな」
「つかそういう伊鶴はどうなのよ? あんたも私から見たら普通に化物なんだけど」
マナ量から見ても人間を逸脱してるしな。
「あーダメダメ。私ぜ~んぜんコントロールできてないから。バーンってのはできるんだけど。ズコココーってのは無理」
「擬音だけで説明しようとすんな。ようは瞬発力はあるけど、維持するのが苦手なんでしょ?」
「それ」
説明が他人任せすぎるわ。自分でやれ自分で。
「と、まぁそういうことなのですが。正直な話才くんに必要かって言われると微妙ですよね」
「あ、それはわかる。才はもう契約者の能力を借りることができてるし。コントロールもできてるし。コツ掴むのも早そうだよね。というかすでに人域魔法使ってるレベルの身体能力だし」
「あれもリリンさんの能力を借りてるだけなんだよね? あれに人域魔法加わるとか考えたくないわ~。怖すぎる」
「私は見てみたいな。前に見た以上に才君が強くなれば良い目標になる」
「……俺を目標にするのはおすすめしねぇなぁ~」
なにせ人間やめてるし。お前も人間やめ人間志望ってんなら話は別だけどな。カナラに頼めば人間やめれるぞ~紹介してやろうか?
と、そういえば。
「ホテルに来たのお前らだけだけど。呼びつけた当の本人はなにしてるんだ? 姿が見えないけど」
「あ~先生? 先生はなんか昔の知り合いと飲みに行くってさ」
「珍しいよね。あの仕事人間……とは違うか。気難しい先生が誰かと飲むとか。考えられないね」
「そう? たまにD組の担任に誘われて無理矢理つれてかれてるみたいだよミスター」
「D組の担任って女性でしたよね?」
「か~あの堅物も隅に置けないね~。……堅物じゃねぇな。堅物だったらもっと真面目に授業出ろって言うわ。放置なんてしねぇわ」
「やる気がなければ上達もしないだろうから。英断と言えば英断とも取れるだろうがな」
ふと気になったので聞いてみたら失礼な言われようだな先生。まぁ俺も同意見だから反論はしないけどな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます