第135話
「あ、姉御!? な、なんでここに!?」
「
「……」
……また新しいヤツが出たな。身長は152㎝くらいで澄んだ声に落ち着いた口調。綺麗な着物に立ち居振舞いが伴ってて、やや小柄だが大人っぽい雰囲気。……変な仮面さえつけてなきゃ文句なしに大和撫子って感じ。
ふむ。話のわかりそうなのが来てくれたのは良いけど、姉御ってなんか不穏だよな。この荒々しいヤツの姉貴分って……。ヤバいヤツなんじゃないのか? それを裏付けるように発してるマナの密度がヤバいもん。
……だけどそんなことよりも、あの鬼が転ぶまで仮面のヤツの存在にまったく気づかなかったのが一番ヤバい。あんな尋常じゃない密度のマナに存在感があるのに、同時に虚ろで把握しきれない。マナの密度も量も俺やリリンほどじゃないが、雰囲気はハイネに近い。敵に回ったら間違いなく殺されるって嫌でも理解しちまう。
「……ところでメズ。自分何やっとんの?」
「あ、いや、ちょいと喧嘩がしとって……」
仮面のが睨む(仮面つけてるから口調で判断)とデカ鬼がうろたえる。ってかビビってる。いやまぁわかるよ。それくらいあの二人の差は大きすぎる。俺あいつと敵対どころか睨まれるのも嫌。正直関わりたくない逃げ出したい。逃げ切れるわけないから下手に動かないけど。
「……知らん相手と喧嘩? しかも見たところ相手は迷い子やないの。それも
「で、でも姉御! この小僧犬共を平気であしらいおったがよ! オラもほれこの通りになるまで蹴られたが。あん小僧は小癪じゃが
「言い訳しなや。……言い訳にすらなってへんけど。あんま聞き分け悪い上に言い訳しはるなら、しばらく私がおまんま馳走したろか?」(※特別意訳。しばらくの間特別不味い飯しか食わせねぇぞ?)
「あ、姉御が本気で不味く飯作ったがもん食ったたら死ぬが! 食わん方がマシがよ!」
「じゃあもう黙っとき」
「わ、わかったが……」
「……さて」
「……っ」
デカ鬼を黙らせると、今度はこっちに目を移してきたな。……あれ? さっきまでの気配が失せてる。こっちを見た瞬間消えた。えっと、つまり。叱るからあの空気を出してたってことか? お、おいおい。ここまでガラッと変わるかよ……。まったくの別人だぞ。今はもう人間相手にしてるようにしか感じない。気を遣ってのことかもだが、俺にとっては逆にとんでもなく怖いわ。本当。こいつ相手には発言気を付けた方が良さそう……。
「
優しい口調で気遣いを感じる質問。ほんの少しだけ安心感を覚えるな。まだ気を緩められないけどな。この後話して機嫌悪くしちゃうかもだし。油断できるわけない。
「あ、ええと。はい。わかり、ます」
「ほうかほうか。言葉になんも籠っとらんし、日ノ本の子やね。でもなんやぎこちないな? 普通にしゃべってええよ? 私は気ぃ張らん口のが嬉しいわぁ~」
と、思ったら杞憂。これまた優しい口調で多少の無礼は構わないと暗に言ってくれる。なんだこの仮面女。デカいのと違って話がめちゃめちゃわかるぞ。本当にあいつは妹分なのか?
「じゃ、じゃあお言葉に甘えて……。砕いて話させてもらうわ」
「かまへんかまへん。初対面でちゃあんと敬おうとする姿勢が好ましいからなぁ~。それだけでええ子てわかるわ。せやさかいに坊は許したるんよ。そこの御馬鹿も見習ってほしいくらいやわ。私の身内でも
「ま、まぁ……」
「やっぱり……。ちゃんと厳しく教えてるつもりなんやけどなぁ~……。育て方間違えたやろか?」
姉御って呼ばれてたけど言ってることオカンだぞ。その仮面の下はまさかしわしわのおばさんかおばあちゃんですか? 声は若いのに大変ですね。
「おっと。久方振りの迷い子でうっかりしとったわ。ここについて色々教えんとアカンよね。屋敷に連れてってからでもええねんけど、なんの説明もなしにいきなし連れてかれるのは怖いやろ? せやから先におしゃべりさせてもらうよ。立ち話で御免な?」
本当にすまなそうな声。さっきから気遣いがすごいよ……。いっそ膝枕してもらいたいくらいのオカン力を感じる。
「ここは日ノ本から見れば異なる世。何処にあるか言われたら困るんやけど、とにかく違う場所よ。ほんで仕組みはわからへんのやけど、ここは色々な場所と急に繋がる事があってな。流れてくる子も多いんよ。神隠しみたいなもんやな。最近は坊が来るまでは流れてくる事もなかったんやけどね。坊の前の子が来た時の年号は……昭和やったやろか?」
しょ、昭和……? それって年号だよな? 今の時代グローバル化が進んで西暦に統括されて年号が廃止されて久しいんだけど……。最後の年号すら数百年前だぞ。
「ほんで流れてきた迷い子は皆一度私に面通しするようにしたんよ。私から見たらみ~んな童やし。ほっとくのも心苦しいからなぁ~。一旦預かって、それから先々の事を話し合って決めとるんよ」
「なるほど……」
俺みたいなのは初めてではないのか。先々のことを決めるとも言ってるし。帰り方もわかるのかも?
「ほんで坊はどうする? 落ち着くまでは一旦私の屋敷で寝泊まりしてもらうつもりなんやけど。かまへん?」
……まだ不安もあるが、他に当てがあるわけじゃないし。ついていくしかない……よな。罠の可能性もなくはないが、騙すのが趣味じゃない限りはその必要性がない。こいつのが絶対強いからな。……よし。腹くくろ。
「わかった。世話になります」
「ほうかほうか。ほな、行こか」
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