第106話
「お~い……」
「……」
「コロナ~?」
「……」
「まだ?」
「……あむ」
「顎噛むな」
「ふごっ」
帰ってからというもの。コロナが離れてくれない。丸一日会ってなかったから仕方ないし、ちょっと前まではこんな感じだったから特別困ってはいないんだが……。しいて言うなら風呂に入りたい。この体になってから汗とかほとんどかかないからベタつきとかは感じないが、普通にホコリとか土とかはつくからな。それは落としたい。
「とりあえず風呂に入らせてくれよ。出たらまた抱っこしてやるから」
「やっ!」
即答。あ~あ~こりゃ完全にわがままあまあまコロナに逆戻りだよ。ちょっとは成長したと思ったけど。まだまだ子供のままだな。
「いっそ一緒に風呂に入ったら良いんじゃないか? 実を言うといつ帰るかもわからない才を待つために食事以外はずっとこの場に居座っててだな。昨日から風呂入ってないんだ」
なんたる。どうりで体臭が濃い気がしてたんだ。お前風呂入ってなかったのかよ! 臭くはないけど不衛生だから風呂には入っとけよ……。
「一緒に風呂……。風呂かぁ~……」
理性が強くなった今なら別に邪な気持ちを抱かずにコロナを風呂に入れることもできるとは思うが……。絵面がなぁ~……。ダメだよなぁ~……。それにここで一緒に風呂まで入るとコロナが味をしめて甘えん坊が加速しそうだし。避けたいんだが……。どうしよう。ちょっとおだててみようかな。
「コロナ。お前は良い子だ。昨日はおとなしく俺のことを待ってたってロッテも言ってたしな」
「……っ!」
癇癪を起こさず。食事もちゃんと取ってたとロッテから報告は受けてる。風呂に入ってないのはどうかと思うが、それ以外は完璧なお留守番ができていた。だから俺も甘やかしてやりたい気持ちはあるんだよ。限度があるだけで。
「だからもう少しだけ良い子にしてくれないか? な? 俺とお前の風呂が終わるまでのほんの数十分だから」
「………………やぁ~」
間を設けた上での拒否。考えてはくれたか。じゃあ別ベクトルからもう一押ししてみよう。
「コロナ。頼むから……ん」
「っ!? にゃーにゃー……。んひゅ~……っ♪」
コロナを抱え直し、強く抱き締めながら頬や首筋に軽くキスをしてやる。先にご褒美をあげてしまおう的な作戦。
……やってること馬鹿親かクズ男だしこれはこれでヤバイ絵面だけど。風呂に入るよりかは百倍マシだろ。……マシだよな? ヤベ。理性が強くなった分逆にどこまでがアウトかわからなくなってきた。今度改めて倫理観について考えなきゃダメだな。
「……コロナ。良い子にしててくれるか?」
「にゃーにゃー……。ん……」
若干目をトロンとさせながら承諾してくれる。うん。この顔はアカン。限りなく黒に近いぞぉ~。今後やるにしてもほっぺに抑えとこう。じゃないと背徳感が積もる。
「じゃ、俺風呂に入ってくるから。ロッテ。コロナ頼んだわ」
「あ、あぁ……」
ロッテが目を逸らしながら顔を真っ赤にしてモジモジしてる。あ~もしかして。
「お前もしてほしいの?」
別に俺はかまわないぞ。お前なら見た目的には大人の関係だし。……いや、俺が未成年だからアウトかな?
と、アホなこと考えてたんだが、ロッテは首を左右に勢い良く振って拒否。圧倒的拒否! ちょっとショック。そんなに嫌かよ。
「そんなことされたら儂の心臓が持たん! 破裂する! ぜ、絶対するなよ!? 絶対に!」
「あ、あぁ……。なんかごめん」
そこまで念を押されると逆にフリかな? って思っちゃうんだけどな。ロッテに限ってそんなベタなフリじゃなくて普通に恥ずかしいだけなんだろうけど。ん~。顔真っ赤にしちゃって可愛いな。マジでやりたくなってきた。
……ってイカン。本当に思考がクズ男になりつつある。こう本能的な欲は抑制しやすくなったは良いけど、逆に一線を超えないことなら良いかなとか、やりてぇなって別の欲求が生まれてきたぞ。リリンも別に無欲ってわけじゃないし。時々俺をからかったりしてたからな。その辺りが出ちまってんのかな? クソ。明確にやっちゃいけないことってわけじゃないから加減が難しいぞ。本気でこのあたりは対策していかないとだなぁ~。
「にゃー♪ にゃー♪」
「……」
俺もコロナも風呂を済ませ、さぁ残された少ない休日の時間かまってやるかと思ったら……。なんか座ったらそこに向かって
……なんだろこの状況。抱きつく以外の何かを覚えちゃったぞこいつ。
「なぁ……ロッテ……」
「儂は知らんぞ」
コロナの奇行について尋ねようとしたら先回りで答えられた。
……フム。ロッテも知らないとなるといったいどこから仕入れたのやら。
「にゃーにゃー♪」
「ん? なんだよ」
「んふ~♪」
呼ばれたのでとりあえず腹をくすぐってやるとご機嫌な鼻息を漏らす。こんなんで良いのかよお前。満足したなら普通に座ってほしい。さっきからネグリジェがめくれてパンツ丸出しだぞ。はしたないことこの上ない。
「にゃーにゃー♪ にゃーにゃー♪ ……ん」
「お?」
肩から足を離してベタンっと音を立ててうつ伏せになった。逆さまではなくなったけどケツは丸出しだぞ隠せよ……。
それからよじよじと這いながらいつものように俺の上に対面で座る。今度はちゃんとケツが隠れた。偉い。
「んふ~♪」
鼻をゴリゴリ胸骨に押しつけて気持ちさっきよりご機嫌な鼻息を漏らしてる。んだよ結局この体勢が好きなんかい。だったら最初からこれで良いじゃん。なにがしたかったんだ。
「まったく……」
「にゃーにゃー♪」
ま、ちゃんと言うこと聞いてくれたし。好きにさせとくか。それより新しい服がほしいな。俺のじゃなくコロナの。久茂井先輩からもらったのしかないし。あの人がくれたやつ全部ヒラヒラしてんだよな……。普段着はクラシカルロリータ? クラシックロリータ? とにかくそんなんだし。寝巻きもネグリジェしかねぇし。なんだこのチョイスどういう意図だよ。お淑やかなの外見だけだからこういうの合わないと思うんだが? いやまぁ見た目だけなら超似合ってるけどさ……。行動が幼児だから動きやすいやつがほしいよ。
よし。なぜヒラヒラばかりなのか理由を聞くついでに新しい服もらいにいくか。まだ夕方前だし部室にいそうだもんな。
「コロナ。ちょっと出かけようか」
「……や~」
「……今日は抱っこしてやるよ。歩かなくて良いから。行こ?」
「ん」
コロナの承諾も得た。さていったいどんな理由なのか楽しみだな~。……答えなんて十中八九わかりきってるけども。
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