第87話
なんと本日。午後の授業丸々いただきました。室内練習場でコロナの実力を測定させてもらえることになった。ありがたいねぇ~。あの面子が手伝うってことも了承してもらえて今は少し離れた場所で見学中。手伝うってことで遅れたぶんを取り戻すために、後日あいつらのメニューも俺同様増えると聞かされたときは一瞬顔をひくつかせてたが……俺を手伝うと決めたのはお前らだ。俺を恨むなよ?
「さてコロナ。今からマナを送るから。なんかできることをやってみてくれ」
「ん!」
よし。元気なお返事いただきました。不安しかないがとりあえずやってみよう。話はそれからってことで。
「ふぅ……」
いつもマナを扱うときはちょっと緊張しちまうな。少しずつなら平気ってもうわかっててもなかなか慣れない。でもコロナにはマナが流れていってるのがわかる。リリンが数十メートル範囲で影を使うのに必要なマナは送れてるはず。さ、コロナ。お前の力を見せてみろ。
「……」
「……」
「……」
「……」
「……?」
な、なにも起こらない……? おいおい。まさかこれは最悪の予想が当たってしまったのでは? え、え、どうしよう。俺の貞操もう奪われるの確定?
「お~いさっちゃーん! もう始めて良いんだぞぉ!」
「いやあれ頭抱えてるからもうなんかやってんでしょ……たぶん」
「コロナちゃんが首を傾げてるところを見ると、マナは送られてるけど使える能力がない……とかなのかな?」
「おいおい。それじゃあもう最初から成す術ないってこと?」
「あ、諦めるのはまだ早い。きっと他に何か手はあるはず……」
俺だけじゃなく全員考え込む。なにもできない時点で考える余地ないんだけどな。もう詰みだよ詰み。コロナ……お前ダメな子だったんだな……。最後まで面倒見てやりたかったが、もうダメみたいだよ……。俺はヤツに調教されヤツ以外考えられない体にされるそうだからな……。
「……フン。仕方ないね。ニスニル。あの小娘が対処しなかった時のフォロー頼んだよ」
「わかったわ。でも火加減は気を付けてね?」
「わかってるよ! フン!」
「ジゼル? なにをするつもりだい?」
「フン。わかってないボウズ共にわかりやすくわからせるだけだよ」
「おお? 言葉が変だけど何か打開策があるのはわかったよ」
「細かいとこツッコんでんじゃないよ! 黙って見てな!」
なんか向こうのほうが騒がしいな……って、どうしてジゼルさんはあんなにも大きな炎の玉を発現させこちらに視線を合わせているのでしょう? 僕、嫌な予感しかしません。
「ちょ、ちょっと待っ!」
「避けるんじゃないよ!」
俺の身体能力じゃ避けられない規模なんですがそれは!? おわっ!? 放ってきやがった!? それ火傷じゃ済まないと思うんだけどぉ!? ど、どうしよどうしよどうしよどうしよう!? 貞操の危機とかの前に命の危機が訪れたぞ!
「く……っ!」
「……っ」
思わず目をつぶるが、一向に熱くならない……? ゆっくり目を開けてみると、不思議な光景が。コロナが手をジゼルのほうへ向けていて、それに合わせるように炎が避けているような……いや、見えないナニかに阻まれたように防がれた。な、なにが起きたんだ?
「び、びっくりしたぁ!? ジゼルちゃんなにを血迷ってんだこのジビエって思ったけど。もしかしなくても安全ってわかっててやった?」
「誰が野生の食肉だよ! バーベキューにしてやろうか!? フン! ……だけど間違ってないよ。妙に濃いマナを纏ってたからね。すでになにかしらしてるのはわかってたよ」
「なるほど。それで攻撃を……。でもあそこまで大きなのをわざわざやらなくても……。心臓に悪いよ」
「あのくらいなら防がれると思ったからね。それにニスニルの保険もあっただろ? 怪我なんてさせるつもりは欠片もないさ」
「そうね。あれ以上となったら流石に防げたかどうか不安だけれど」
「よく言うよこの馬。あたしゃの炎が通じないなんてのは自分でよくわかってんだよ」
「と、とにかく! 良かったですね才くん。どうやったかはわかりませんがすごい防御能力があって」
たしかにコロナがなにをしたかまったくわからなかった。いやまぁめをつぶってたからだけど……。だがジゼルの炎を防いだという事実がある。光明が見えてきたぞ。
「ミケ、ジゼル。もう一度頼めるか? 今度は目を離さない。コロナ。もう一度やってくれ」
「ん」
「あぁ! ジゼル、行くよ」
「あいよ」
先程どうよう炎の玉をこちらに放つ。コロナは左手を前に出し、炎は見えない壁に阻まれた。一見なにをしたかはわからない。普通の人間には。
「ハハ……すっご」
だが今の俺にはわかる。コロナがなにをやらかしたのか。炎を防ぐとき、コロナの周りのマナの密度が変わった。そして巨大な腕の形のマナが炎を阻んだんだ。どんな能力かはまだわからないが、見えない壁って大分ヤバイ能力っぽくね?
「良いぞぉ~コロナ。お前はできる子だ」
「っ!? ん! むふ~♪」
誉めてやると鼻息が荒くなる。おうおうドヤれドヤれ。内心ダメな子とか思ってごめんな! お前はやればできちゃった子だからドヤっていいぞ!
「よし。これなら目処が立ちそうだし。他のヤツらもコロナにじゃんじゃん攻撃してみてくれ。どこまで耐えれるか見てみたい」
「おう任せろ! ハウちゃんと私の全力に耐えれるか試してやるわフハハハ!」
「自重しなよ。せめて最初は」
本当だよ。万が一コロナが防げなくて俺らが爆死したらどうすんだ!
なんて心配は杞憂だったようで。コロナはあらゆる攻撃を全て防いでいる。
「うっは~……。五本でも全然あの見えないの貫けない。どうなってんだあの天使」
「氷の礫も効果なし」
「砂のドリルでもゴリゴリ削ってる感じしません」
「風で圧力をくわえてるが……まったく通じてないな」
「才の契約者って皆モンスター級の強さしてるよね」
「クソ! やはり可愛いは最強ということか……!?」
う~ん……最後のは意味不明だが、ミケの言うことは否定できない。リリンもロッテもそしてコロナもぶっ飛んだ能力してるもんな。俺もお前の立場なら似たようなこと言うわ。
……コロナの能力を観察してみて、いくつかわかったことがある。マナの形で腕ってのは二度目の時点でわかってたんだが、そこから推測するにあれは籠手だ。コロナは最初鎧を纏って現れた。しかも鎧はほぼマナでできているとリリンが言っていたはず。となるとコロナの能力はマナによって鎧を作り出すとかそんな感じだと思う。違ったとしても鎧を操るとかその程度の誤差だろ。大したことじゃない。問題はまだ完全に具現化できてないということ。見えないんだから悟られないじゃん強いじゃん……って思ってたし、手加減されてる攻撃はほぼ防いでるから連中も気づいてないんだが。結構ギリギリなんだよな……。密度が落ちてたまに通りそうになってる。マナが足りないのかコロナが慣れてないのかはわからないが……もう少し色々試したいな。けどま。
「おい。時間だ。さっさと帰れ」
時間も来たことだし続きは明日だな。今日のところはここまで。コロナにもちゃんと能力があるとわかっただけ今日は大収穫。しかもリリンを苦しめたあの力の一端が確認できたし。憐名との演習試合への不安も少し拭えたわ。今日は気分が良いからあとでコロナ抱っこしてやろ。ついでにたくさん頭撫でてやるからな。だからもっとモチベ上げて、あわよくばあの鎧姿をもう一度見せてくれ。
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