84頁目 鬼の素材と剥ぎ取り練習
朝になった。
今日はちゃんと地面に横になって、気持ちよさそうにスヤスヤと寝ている我が娘を起こすのは
「アネモネ、朝だよ?」
「うーん……」
「可愛い……じゃない。朝よ。アネモネ。剥ぎ取りするんでしょ?」
「う、ん~~」
「ほら、頑張って」
「ふぁ~……お母様ぁ……おはようございますですわ」
「うん、おはよう」
「この状態ですと、どうにも眠気? というのですの? に負けてしまいますわ」
目を
剣の状態で眠るというのを知らなかった彼女だが、
存在そのものが魔力の
寝起きのポヤポヤとした顔のままなので、もう少し寝させてあげたいという思いはあるが、今日はこれから剥ぎ取りをして、周囲の危険をチェックした上で王都スクジャに戻って報告をしなければならない。襲われたという村にも説明に行く必要があるだろう。あの無造作に身体に巻き付けられた冒険者の道具の数々の内、どれかはその村出身の冒険者の物かもしれないのだ。
「さぁ始めようか」
「はいですわ」
まず行うのは仕分けである。
「二人分のタグが一つずつしかないから、救援を呼ぶ為に誰かが外して持って行ったとして、残り四人分は、その
しかし、そのような情報は上がっていなかったはずだ。ライヒ語は読めないが、受付の男性が注意事項含めて念入りに説明してくれている。
「これ、お母様も首から
「冒険者の証明書みたいなものね。二枚一組で、名前、性別、種族、所属国家もしくは所属ギルドなどが書かれているわ」
娘にタグの説明をしつつ、回収していく。
装備は回収出来る分は持って行くが、あくまで自身で使うか
一方で、タグはギルドの所有物である為、見つけ
しかしこのシステムを悪用して、かつて他国にて、タグ狩りと呼ばれる冒険者を狙った悪質な冒険者による犯罪が発生したこともあり、以来
「装備の数からして、少なくとも八……いえ、九人分はあるはずだけど、タグは六人分ね」
タグは身に付けてさえいればどこに付けていても良いとされ、私のようにネックレスであったりブレスレットであったり、イヤリングだったりと様々なアクセサリーに加工して身に付けている冒険者も多い。
しかし、これだけの数の冒険者を全てこの
実際に戦った感想として、完璧なはずの奇襲も対処されたし、その他の攻撃も的確な反撃があるなどと、確かな強さを感じていた。それで銀ランク依頼とは……帰ったらギルドに確認する必要がありそうだ。
一通り装備の仕分け、タグの回収を終えたら、次は鬼本体の素材の回収だ。
鬼と言えば
らしいというのは、私はこれまで鉄大鬼の素材を扱ったことがないし、資料も
ちなみに、鉄大鬼も大鬼もあくまで同じオーガであり、様々な種類のいるオーガを
「私も鉄大鬼の剥ぎ取りは初めてだから、上手く出来るか分からないけど、角の部分は特に普通の
剥ぎ取り用のナイフでツンツンと
「これは後に剣で切断するとして……他の皮や肉、骨などの解体を始めようか」
「はいですわ」
ただ
戦闘で表面のあちこちを傷付けているので、使える部分は少ないだろうが、中には貫通していない部分もあるので、皮下の肉などは特に大事に切り落とす。使える素材かどうかは後にして、今はとにかく正確に、しかし手早く切り開いていく。
説明しながら実演をし、それをアネモネが「なるほどですわ」と
予備のナイフを取り出した私は、アネモネの動向をチェックしながらも胴体の解体を始める。傷のない臓器を慎重に取り出して、今さっき鬼から剥いで作った皮の袋に入れておく(加工していないので革ではなく皮)。
こういう時に水魔法が使えると真水で洗浄出来るので便利である。私が持ち歩いている水では、純度が落ちる上に量も限りがある。全ての内臓を洗うとなると、とてもではないが足りない。しかもこの巨体の内臓だ。大きさも
ほとんど傷みが激しいが、中には再加工すれば使えそうな物もある。これは
内蔵は無理そうだが、血液は
まだ酸化のしていない
「アネモネ、そっちはどう?」
「問題ないと思いますわ。どうですの?」
「うん、ちゃんと分けられているね。ちょっとここ、筋肉の繋ぎの所が甘い部分あるけど、初めてでこれなら十分
「やりましたわ! でもわたくし、こんな物よりも風で切りたいですわ」
「まぁその方が切れ味も良いだろうし、風の精霊であるあなたなら、そちらの方が
「分かりましたわ」
そう元気に答えて作業に戻った。
それから四半刻、タグと装備の選別開始から半刻が過ぎた頃、ようやく解体を終えた。私は両腕含めて、あちこちに血や
「やっぱり大半を捨てることになるわね。
そして、また育った植物を動物が食べてを繰り返す。
採取依頼などで依頼よりも多くを採取する例があるが、本来の生態系に影響を
新米用の常設で採取依頼があるが、あれは、雑草のような物であるので、多少取り過ぎても問題ない。練習用なので、あまり量の要求もされていない。ちなみに採った素材は低級魔法薬の材料として薬問屋に
「それじゃあ、帰ろうか」
「はいですわ」
片付けを終えて、必要な物だけ回収を終えた私達は立ち上がり、スクジャへ向けて歩き出した。
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