66頁目 遭難と警戒態勢
あれから一ヶ月半は経過しただろうか。
私は今、元気に
「えぇと、これどっちだっけ?」
もう一〇月に入っていると思う。
一応、
「うー、寒い……」
それにしても寒い。よく冷える。何せ
そんな環境下ではあるものの、私の現在の装備、上はノースリーブの白地に
下は茶色のホットパンツを身に付け、
革製の手袋とブーツは、
ここに首回りにはいつもの
その他に、
「今のところ、
それに、この寒さの中でのこの格好だ。普通なら死にはしなくても
普段より、より多くの魔力を高速で
「お腹
そう、空腹なのだ。
いつもなら体内で自然に生成される魔力のみで維持出来ている代謝も、魔力の
「普段の倍近くは食べなきゃ……」
しかし、一度に食べられる量は変わらない。一度に大量に
普段の倍食べるということは、
「水分も困らないしね」
周りは雪、つまり水だらけ。人間族などであれば、雪を摂取すれば体温を下げることになったりお腹を壊すことに繋がったりするだろうが、先程
やっていることは完全に原始人のそれか、もしくは野生生物と同じであるが……
「今日はここで休もうかな」
その時、何かが
「
私の心配を
「もしかしてこれって、足音?」
だとしたら、かなり重量があると思われる。
覇王竜は元々の体温が高いので生きられるだろうが、
「鉄火竜?」
確かに山、とはいっても鉱山などだが、そこを縄張りとするあの
時間帯としては夜で、しかも外は
気のせいではないはずだ。現に、一定の間隔で地面から軽く振動を感じているし、風に混じって音も聞こえる。
目を凝らしてしっかりと闇の奥を見ようと集中していると、何かが
この視界で距離もあるので不確定だが、鉄火竜ではなさそうだ。では何だ?
足音は、何かを探すようにゆっくりとした速度を維持しながらも、あっちこっちへとふらふらと移動しているように思える。私は気付かれないように窪みの周囲にそっと雪を集めて軽く
この場所がバレてもすぐに飛び出せるように、姿勢を低くして
どれだけ時間が経っただろう。足音が遠ざかり、完全に音がしなくなってからも警戒を解かず、一切身動きしない。
こういう時、下手に外に出たりすると目の前とかにいるというのがホラー映画やパニック映画で定番である為、完全に大丈夫と判断出来る朝までジッとしていることにする。
緊張がノトスにも伝わっているのだろう。
「そろそろ良いかな?」
いつでも剣を抜けるような体勢でいたことで、若干身体の節々が痛いが気にしない。それよりも身の安全だ。時間の感覚は完全にないが、いつの間にか
だからといっても気は抜かない。
ここで空気穴から外の様子を見ようと覗くと、いきなり刃物が差し込まれて頭部串刺しなんてのもスプラッタ映画とかであり得る展開だ。少しずつ
「魔法やノトスは使えないからね」
魔力に反応する怪物とかであれば、雷魔法やノトスにまとう風魔法に気付くかもしれない。
かれこれ四半刻以上時間を使って、ついに窪みから脱出する。
朝の日差し、そして一面に
「良かった」
警戒は完全に解除しないが、一息付けたので肩の荷が下りる。
視界に映るのは、ゴツゴツとした
「木とかなら
安全が確保されたのなら、早速痕跡探しである。
ここ一ヶ月半、遭難し続けながらもかつて人がいたであろう
「多分この辺りよね?」
あれからも雪が降り続いていたので、
「多分相当な重さのある個体のはずだから、通った場所の雪は踏み固められているどころか圧縮されているはず」
一刻は時間を使っただろうか。時間はすっかり昼である。朝食ついでに軽く木の実を
「結構大きい。大型ではないだろうけど、少なくとも準中型、下手したら中型種。重心の掛け方からして、覇王竜などの
まさか
「指の形がない……
靴だとしたら、知性のある生物。伝説の
「というか左右の足の大きさ、形が合わない説明になってないし」
仮説を立てるも、すぐにそれを否定するを繰り返す。昨夜の警戒態勢で精神と体力を
そこでふと思い出す。
昨日は吹雪のせいで視界が
だが、その時にこの
そしてもう一つ。確かに昨夜、よく見えない中ではあるが、何か大きな物がこの辺りを動いていたのを視認している。しかし、こちらの存在がバレないようにその後は聴覚による索敵を中心に行ってきた。それで音がしなくなったので、遠ざかったと思い込んでいた。
そこまで考えが
「
すぐにその場から距離を取る。そして、その
「これはまた、
ノトスを抜いて、目の前の存在を
「
高さは一〇ファルト以上あるだろうか。岩人形、ゴーレムと思われる物体が、大きな腕を振るって声なき声で
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