第59話 兄貴とインフラ整備
「・・・と言う訳なんだが協力を頼めないだろうか?」
「ガハハハ!さすがはギンジ殿だ!それに将来的には身内になるんだ!遠慮などするな!おい!暇な職人を呼んで来い!」
レオンは部下にそういうとしばらくしてから獅子族を初め約20人程の職人がやってきた。
というか将来的に身内って。勝手に話を進めるな。当初あれだけ結婚など!って言ってたのにな。
「こんなにたくさん・・・いいのか?俺は獣老という事になっているが一応人間だぞ?」
「何言ってんすか!俺たちゃ兄貴に惚れたんすよ!」
職人のリーダーらしきトカゲ?獣人が大きな声でそう言った。
は?逆に何言ってんだ?兄貴?
「ハビナ様に続いてレオン様もぶっ倒しちまってしかも竜の族長にまでなっちまったんだ!尊敬しない方がどうかしてるぜ!なあ!みんな!?」
かっけぇ・・・!
兄貴!
特にあの左腕の包帯が痺れるぜ!
殺、されてぇ!
「・・・・」
良く見ると大森林で初めて出くわした時に野次を飛ばしてた奴やレオンの屋敷でわめいてた奴もいる。こいつら職人だったのか。
「そう言う事だ!思う存分使ってやってくれ!」
「・・・わかった。皆よろしく頼む。」
俺は職人たちを連れて再度ゲートでサルパの屋敷に戻った。
サルパの屋敷へ戻るとこちらにも10人程の職人らしき獣人たちが待っていて既に荷物を持ったりしてあわただしく動いている所だった。
サルパが手配してくれたのだろう。
おお!兄貴だ!
目つきは悪ぃが男前じゃねぇか!
よろしく頼んます!
腕が鳴るぜ!
俺たちが着くなり職人たちが寄ってきた。なんでこっちでも兄貴になってるんだ?
聞くことによると俺が湖を解放した事によって周囲の獣人たちはかなり生活が楽になったらしい。それで感謝してくれているって事か・・・
「おお!お前たち!来てくれたのか!私とギンさんの愛の巣になる家だ!しっかり頼むぞ!」
「ハビナ様!まかせてくだせぇ!兄貴とハビナ様の為、最高のお屋敷に仕上げてみせますぜ!」
そこにはハビナもいてレオンの領地から連れてきた職人と不穏な会話を繰り広げている。頼むからピンク色の建物にはしてくれるなよ。
「ほっほっほ。これだけの職人が集まればさぞ豪勢な屋敷が出来るじゃろうて。して、どうする?今から向かわせるかの?それともギンジ殿が転移で送ってくれるのかの?」
大森林は広い。ピーちゃんたちに乗っていれば数時間だが人数が多すぎる。俺の住居を作ってくれる奴らを歩いて向かわせるのは悪いな。
「転移で行くとしよう。と言っても人数制限も定かではないし魔力の消費もデカい。数日に分けて送る事になるがいいか?」
(そう言う事なら銀次よ。転移の魔法陣を設置してはどうだ?それなら設置した場所同士で自由に行き来出来るぞ。)
ああ、リオウがビシエ遺跡に設置したという魔法陣か。俺はそれを見ぬまま空間の裂け目に落とされたが本来ならばそれを使ってリオウが封印されていた場所まで行けたらしいな。
「それは良い案だな。頼む。」
(うむ。では我のイメージ通りに魔法陣を描くがいい。終わったら向こうへ銀次が転移し同じものを描くのだ。)
リオウの言う通りの魔法陣を描き自分の領地へ転移し同様に作業を行った。
(よし。その魔法陣に魔力を込めながら転移の竜言語魔法を使うのだ。普通の転移より多くの魔力を使うぞ。そこは注意せよ。)
「わかった。『
一度で三分の二以上持っていかれた。しばらく休まないとまずいな。便利なものにはリスクもあるって事か。
魔力を込め終わった魔法陣は紫色に輝いている。
「ふぅ・・・後は魔法陣に乗るだけでいいのか?」
(そうだ。どうだ?我の・・・)
「ああ、リオウの創った竜言語魔法は凄いよ。感謝している。」
ウキウキになって来たから先に言ってやった。感謝してるのは嘘じゃないし。
俺は魔法陣に乗って職人たちの待つ反対側へ転移した。
「待たせたな。この魔法陣に乗れば荷物もまとめて現地へ飛ぶから有効に使ってくれ。」
「本当ですかい!?そりゃあ便利だな!おい、野郎ども!片っ端から運び込め!」
おう!
職人たちが代わる代わる転移魔法陣で行き来しだした。今ふと思ったんだがこの魔法陣っていつまで持つんだ?
「なぁ、リオウ。この魔法陣は半永久的に使える者なのか?」
(定期的に魔力を贈れば魔法陣が破壊されない限り使えるはずだ。先の銀次が送った魔力なら数か月は持つだろう。)
そうか。ピーちゃんの時も思ったがホントにこんなものが向こうの世界にあったらインフラ事情がとんでもない事になるよな。
定期的に魔力を送る必要がある以上向こうじゃ使えないけどな。
「おー、帰っとったんか須藤・・・ってなんやこの状況!獣人が消えたり出てきたりしとるで!?」
「これは・・・もしや転移魔法陣・・・?まさかというか一人しかいないだろうがギンジ殿が?」
休んでいたであろう西城とライーザさんがやってきた。外が急に騒がしくなったから様子を見に来たそうだ。
「ああ。リオウに協力して貰った。かなりの魔力を持ってかれたんで俺も休もうと思っていた所だ。」
「失われたと言われている転移、それも魔法陣まで・・・メーシーが見たら垂涎ものの技術でしょうに。」
「はぇー。こりゃあ便利やなぁ。こんなんあったら仕事行くのも楽ちんやんな。」
やっぱり西城も同じことを考えるんだな。企業戦士のサガってやつだ。
「ギンジ殿、これからどうするのですか?獣人たちと共にヴァルハートへ進軍するのでしょうか?」
「まさか。これは俺の逆襲だ。獣人たちを巻き込むつもりはない。ハビナやスララは駄目だと言っても付いてきそうだがな。それともライーザさんは今言ったように獣人たちと一緒に王国落としをしたいのか?」
「ギンジ殿がそのように命じるならば。」
ライーザさんはまっすぐにこちらを見据えて言った。この目はどんな意味だろうか。
「ライーザさん!須藤は戦争がしたい訳じゃないって言ったやんか!今はまゆまゆとせんせとエミリア王女様をなんとかせんと!」
「分かっています。失礼いたしました。」
「別にいい。以前も言ったように正面から行って暴れても状況は良くならない可能性が高い。メーシーや王女が誰かに殺されては俺の気持ちも晴れないしな。」
なぜあんな事になったのか、なぜ俺が裏切られなくてはいけなかったのか。
勇人の言っていた事は本当だったのか。東雲にしても、だ。西城が嘘をついているとは思えないが俺を裏切った事実は存在している。どんな理由があったとしても。
「須藤・・・」
「どちらにしてもとりあえずは王国の状況を知らないとまずいだろう。西城とライーザさんは顔も知られ過ぎているし獣人たちが行くのも目立ちすぎる。だから俺が様子を探って来ようと思う。」
「ギンジ殿一人でですか!実力としては心配する事ではありませんが・・・私はあなたの騎士。いざと言う時に何も出来ないのは本意ではありません!」
「何があるか分からんで!須藤までまたいなくなってしまったらウチ・・・どうしたらええねん・・・」
二人とも悲痛な面持ちでいる。だが・・・
「だったらあたちが付いていくのです!ご主人様はあたちが守ります!ワンワン!」
スララが突然現れて俺の頭の上に乗ってきた。・・・スララか。
俺はこの姿になってから戦った所を見た事無いが先の魔獣掃討の時も活躍したらしいから戦力的にも問題はないだろう。
「スララ殿!?しかし・・・」
「わかった。だがあまり目立つなよ。具体的には人前で喋るな。まぁもし戦闘になったら殺さない程度にやっつけろ。」
「あい!わかったのです!」
「・・・わかったわ。スララちゃん、気ぃつけてな?それと須藤の事よろしく頼むな?」
スララはワン!と元気よく返事した。
「あくまで王国の状況を探ってくるだけだ。何かあればゲートで戻ってくるから心配しなくてもいい。」
それに今は魔力的に寂しいものがあるし俺が王都にゲートで行けるのは一番イメージしやすい訓練場なんだよな。
城の中を探るならそれでもいいが・・・罠があってもマズイな。考えすぎかも知れないが。
一応あの初陣で戦った草原ならいける、かな。まぁ明日やってみるか。
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