第720話

「ソフィ、それに皆さんもご無沙汰しています。お元気そうで何よりです。」


「どうも、ガドルさんとサラさんもお変わりない様で良かったです。」


「ぱぱ、まま、会えて嬉しい。」


「うふふ、私もソフィちゃん達に会えて嬉しいわ。それにしても驚きました。まさか皆さんが王都にいらっしゃっていたとは思ってもいませんでしたから。」


 王都が賑わい始める少し前ぐらいの時間帯に闘技場まで足を運んだ俺達は、久々に顔を合わせる事が出来た2人と雑談交じりに挨拶を交わしていた。


「俺達もガドルさんとサラさんに会えるとは思ってもいなかったので驚きましたよ。今日はどういったご用件でこちらに?」


「私達は今度開催されるお祭りの打ち合わせの関係でここに来ていたんです。」


「へぇ、という事はお祭りの日に何かイベントをするご予定なんですか?」


「はい。実は祭りの開催日に各ランクの王者達を集めて特別な試合を行おうかと言う提案がありまして、その詳細を詰める為に今日はここに来ていたんです。」


「なるほど……じゃあ、俺達もしかしてお邪魔しちゃいましたか?」


「いいえ、そんな事はありませんよ。午前中の会議はもう終わりましたし、そもそもイベントの詳細に関しましてはもう纏まりつつありますので午後からはお暇を貰っているんですよ。」


「あっ、そうだったんですか。それなら……」


 そこで言葉を切ってチラッと視線を横に動かしたその直後、ソフィが一歩前に出てガドルさんとサラさんの顔をジッと見つめ始めた。


「ぱぱ、まま、時間があるなら今日は一緒に居たい……ダメ?」


「あらあらまぁまぁ……しばらく会わない間にそんなテクニックを覚えていたのね。うふふ、勿論良いに決まっていますよ。そうですよね、ガドルさん。」


「あぁ、大切な娘の頼みを断るつもりはないよ。」


「……ありがとう。」


「えへへ、良かったですねソフィさん!それでは私達はこれで失礼します!」


「おや、そうなのですか?もしや何か用事でも?」


「いえいえ、特に予定はありません。ただその、久しぶりに過ごす家族だけの時間を邪魔したくないだけですよ。」


「そんな、お邪魔だなんてとんでもない。」


「ふふっ、そう言って頂けると思っていました。ですが、例えそうだとしても私達の心遣いをどうか受け取って下さい。ソフィ、今日は楽しんでくるんだよ。」


「……うん、ありがとう。」


「おう、それじゃあまたな。何かあれば宿屋に顔を出してくれ。」


「分かった。またね、皆。」


「はい!それでは。」


 小さくお辞儀をしてくれたガドルさんとサラさん、そしてソフィと別れて大通りの方まで戻って来た俺達は軽く汗を流しながら観光がてら店を巡って行くのだった。

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