第690話
「なるほど、つまりはただの偶然という結論になった訳だね。」
「あぁ、神様2人が何も感じないって言ってたからな。」
居候先から迎えが来ていたレミやユキと道中で別れて我が家へと帰って来た俺は、昼飯を食べながら調査結果を皆に伝えていた。
「へぇ、良かったじゃないですか。また危ない神様が現れたって事じゃなくて。」
「まぁ、そうだな。つーかあんだけ苦労して倒したのに復活されてたまるかっての。そんな事になったら命が幾つあっても足りねぇよ。」
「ふふっ、それは1人で無茶をするからじゃないのかい?」
「うん、私達が一緒だったら命は1つで大丈夫。」
「……へいへい、言われなくとも分かってますよ。」
「全くもう、本当にそう思ってるんですか?」
「おう、思ってる思ってる。だから少しだけ話を変えさせてもらっても良いか?」
「はい?何ですか?」
俺の問い掛けに対して小首を傾げたマホから少しだけ視線を逸らした俺は、小さな棚の方へ人差し指を向けた。
「そこに置いてある白い封筒って何なんだ?今朝は無かったよな?」
「あっ、そう言えばまだ教えていませんでしたね。アレはご主人様宛に届いたお手紙ですので読んでみて下さい!きっと驚きますよ!」
「驚く?そりゃまた何で?つーか何で内容を知ってんだ?……もしかして読んだ?」
「そんな失礼な事はしていませんよ。実はそのお手紙、ロイドさんとソフィさんにも届いてるんです。」
「えっ、そうなのか?」
「うん、マホは私達と一緒に手紙の内容を知ったんだよ。」
「ふーん、まぁそんな事だろうとは思ってたけどさ……よっこいせっと。」
椅子から立ち上がり棚の上に置かれた封筒を手に取って中に入っていた2枚の紙とカードらしき物を取り出した俺は、そこに書かれた文字を読み始めた。
【九条透様。
突然ではありますが貴方様にイベントへのご招待状をお送りさせて頂きます。
もしお時間がありましたらミューズまでお越し頂けると幸いでございます。
詳細につきましては同封されている案内状をご参照下さい。
ご参加、心よりのお待ちをしております。
テーラー・パーク。】
「……テーラー・パーク?……って誰だっけ?」
「ふふっ、ミューズの街にあるテーマパークの支配人だよ。」
「あ?……あーあーあー!そう言えば居たなぁ!えっ、でも何でその人から手紙が?つーかイベントの招待状って……もしかしてこのカードが?」
「えぇ、今度の夏に様々なイベントの優勝者を集めてイベントをするみたいなんですけども……」
「それに参加出来る招待が来た。」
「はぁ、なるほど……ん?ちょっと待てよ。俺って確か……優勝してなくね?」
「えぇ、非常に残念ですが仮面を付けたメイドさんに負けちゃってます。」
「だよな?それなのにどうして俺に……」
「恐らくだけど九条さんの場合、優勝者と連絡が付かないからじゃないかな?ほら、彼女って何処に居るのかよく分からないからね。」
「あーなるほど……確かにアイツは会おうと思って会える相手じゃないからなぁ。」
「……それで?どうしますかご主人様。」
「いや、どうするも何も……」
「参加する場合、旅費と宿泊費は向こう持ちみたいだよ。」
「数人なら同行者も認めているらしい。」
「それに優勝者には豪華景品が贈られるみたいですよ!ワクワクしませんか!?」
マホ、ロイド、ソフィから真っすぐな視線を向けられた俺は、後頭部をガシガシと掻きながら盛大にため息を零した。
「……分かったよ。参加すりゃ良いんだろ?」
春が終わったばかりだってのにもう夏の予定が決まってしまった事にちょっとした面倒さも感じながら、俺はテンションが爆上がっている3人を見つめるのだった。
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