第677話

「ふむ、その噂なら私もファンの子達から聞いた覚えがあるよ。何でも王都の方からやって来た冒険者がそういう行いをしているらしいね。」


「それとエルアさんとオレットさんのお知り合いの方も声を掛けられたそうですよ。幸いな事に警備隊の方達が近くを通ってくれたので事なきを得たそうですが……」


「ふーん、そうだったのか。いやはや、それにしても迷惑な連中が居るもんだなぁ。冒険者になったばかりの奴らを騙して小遣い稼ぎとか情けなさすぎるだろ。」


 まぁ、そう言う奴らの目的って金だけじゃなくて自分達よりも弱い相手を餌にして優越感に浸りたいてのもあるんだろうけど……何にしても胸糞悪い話だな。


「ですよね!ご主人様達みたいにきちんと指導をしてあげて報酬を受け取ると言うのなら問題はありませんけど……騙す様にしてお金を貰おうとするなんて、そんな事は絶対に許しちゃダメですよね!」


「うん、マホの言う通りだね。とりあえずエルアとクリフ、オレットには明日辺りにでももう一度だけ注意しておこうか。そういう怪しい人達に近付かない様にね。」


「……あいつ等がその忠告を聞き入れるかは微妙だな。特にクリフの奴なんかは自分から首を突っ込んでいって話をややこしくしそうだし。」


「あーそれは確かにあり得そうですねぇ……って言っても、皆さんもそう言う人達が目の前に居たら黙って居られない気がしますけど。」


「ふふっ、それはそうかもね。」


「うん、黙って見過ごすつもりはない。」


「はぁ……そう言うと思ったよ……」


「ふふっ、九条さんは私達の意見には反対かい?」


「いや別に、どうせ言ったって聞きやしない事ぐらい嫌ってぐらい分かってるしな。だから俺から言える事は1つだけだ。もしお前達がそんなふざけた真似をしてやがる奴らを見つけたら……」


「……見つけたら?」


 全員の目がこっちを向いたのを確認した俺は、ニヤリと笑って3人の顔をグルっと見回していき……


「……徹底的に叩き潰せ。それこそ、逆恨みなんぞされないぐらい徹底的になぁ。」


「……良いの?」


「あぁ、変に手加減しちまったら後々になって面倒事になる可能性があるからな……だから容赦も遠慮も必要無い、骨の髄まで自分達がやって来た事を後悔させてやれ。お前達ならそれが出来るだろ?」


「あぁ、可愛い女の子達を怖がらせた罰を与えてあげないとね。」


「容赦なく、徹底的に、後悔させてみせる。」


「お、おぉ……何とも頼もしい……あぁでも、ご主人様はどうやってその人達に後悔させるつもりなんですか?」


「俺か?そんなもん決まってるだろ……まだ分からん!」


「え、えぇ!?あれだけ格好つけておいて何も考えてないんですか?!」


「し、仕方ないだろ!!俺にはロイドみたいな絶対的権力はねぇし、ソフィみたいな圧倒的な実力も無いんだよ!だ、だからとりあえず……大声で警備隊の人達に助けを求めてそいつ等を追い払うぐらいしか思い浮かばん!」


「いやいや、そんな偉そうにしながら言う事じゃありませんよ……全くもう、一瞬で格好良さが何処かに行っちゃったじゃないですか。」


「う、うるせぇ!ただの一般人に多くも求めるんじゃねぇ!と、とりあえずそういう連中を見かけたら各自で頑張る事!良いな!」


「ふふっ、了解。」


「全力を尽くす。」


 ……とまぁ、そんなフラグになるのかどうか分からなそうな会話をしながら俺達は夜の時間を過ごしていくのだった。

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