第669話

 翌朝、我が家にやって来た3人をリビングに招き入れた俺達は軽く挨拶を交わした後に昨夜の内に話し合っておいた指導内容について説明を始めていた。


「さてと、それじゃあまず聞かせて欲しいのはお前達の装備事情についてだ。2人は自分が扱っている武器や防具はもう体に馴染んでるのか?」


「ふんっ、愚問だな!我と双黒龍の相性は最高……いや、至高である!」


「……そーでっか。エルアの方は?特に問題無さそうか?」


「はい、訓練を重ねてきたので大丈夫だと思います。」


「そうか。なら第一段階はすっ飛ばして良さそうだな。」


「……第一段階?」


「うん、自分の手に馴染む武器や防具を見つける事。それが無いと訓練を始める事が出来ないからね。」


「なるほど、確かにそうですね!では、第二段階は何をするんですか?」


「第二段階は実践。ただし私達全員が指導する訳では無い。」


「……どういう事だ?」


「えっとですね。エルアさんとクリフさんにはこれからおじさん達の内のどなたかと二人一組のパーティを作ってもらいます。そして一緒にクエストへと行って頂く形になりますね。」


「えっ、皆さんと一緒にではないんですか?」


「あぁ、俺達も最初はその方が良いと思ったんだがな……それだとあんまり指導って感じにならないから、一対一でやっていくかって事になったんだ。」


「それにこれから冒険者とやっていくのなら、1人だけでもモンスターと渡り合える能力を得る必要があるからね。その為にもクエストでは私達は援護に回って、戦闘に関しては2人に任せたいと考えている。」


「大丈夫、危なくなったらすぐに助けるから。」


「………どうする、2人共?」


 俺達の提案を聞いていたオレットさんが不安そうにそう尋ねると、エルアは真剣な眼差しを浮かべてクリフは偉そうでいて不敵に微笑み始めた。


「はーっはっはっは!面白いではないか!その挑戦、受けて立たせてもらおうか!」


「うん、僕としても問題ないよ。強くなる為には何でもする覚悟があるんだ。どんな事だって乗り越えてみせるよ!」


「ふふっ、気合は充分みたいだね。」


「あぁ、体がウズいて仕方がないわ!」


「……あーとりあえずクリフ君に関しては心配してあげた私がバカだったね。うん、そういう事なら頑張ってね2人共!今日は一緒に居てあげられないけど、シッカリと応援させてもうからさ!」


「ん?オレットさん、一緒に居られないってのはどういう事だ?取材として、俺達に同行するんじゃなかったのか?」


「えぇ、私もそうしたかったんですが……お姉ちゃんが記事を書くならもっと大勢の人達に声を掛けなさいって……ですので、今日は別行動をします!申し訳ありませんけど、エルアちゃんとクリフ君の事をよろしくお願いします!」


「ふふっ、分かった。あぁそうだ、もし良かったらその取材に同行しようか?人数の問題で1人余る事になるからね。」


「あっ、はい!是非ともお願いします!皆さんが一緒ですと心強いですから!」


「えへへ、それじゃあ組み分けを始めちゃいましょうか!エルアさん、クリフさん、この箱の中におじさん達の名前が書かれた紙が入っていますで、それを取って貰って良いですか?」


 俺が自作したクジ引きの箱を抱えたマホがそう告げてから数分後、ペアが決まった俺達は我が家を後にするとそれぞれの目的の為に動き始めるのだった。

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