第627話
翌朝、何時もの待ち合わせ場所でイリスと合流した俺達はその足で斡旋所に行って撮影してもらった写真が入れられている封筒を受け取るとセトグリア家に足を運んで皆が見ている前で開封をする事になったのだが…………うぐぅっ!!
「うわぁ……うわぁ……!うわぁ………!!!」
「おやおや、これは想像していたよりも凄いね。」
「うん、本当に結婚した人達みたいに見える。」
「あらあら……私、涙が零れて来てしまいそうです……」
「…………んんぅ…………」
「うふふ、何だか恥ずかしくなってしまいますね。」
「あぁ……今すぐにこの場から逃げ出したい気分だ……!」
いや、こうなる事は薄々分かってたよ?でもさ……恥ずかしいもんは恥ずかしいに決まってんだろうがっ!
純白のタキシードを着ている俺と綺麗な花嫁衣裳を着ているイリスが腕を組んでる写真だぞ!?自分で見てもジタバタとのたうち回りたくなるもんだってのに、それを皆にマジマジと見られるってどんな羞恥プレイ!!?
「おじさん……あの、念の為にもう一度だけ確認しておきたいんですけども、本当にイリスさんとはお付き合いは……」
「してない!だから疑いの眼差しでこっちを見てくんなっつうの!」
「マホさん、僕からも保証してあげますよ。何と言っても振られちゃいましたから。精一杯の勇気を出して告白をしたんですけどね。」
「ぐ、ぐふぅっ!そ、それは……」
「イリスさん、あんまり九条さんに意地悪をしてはダメですよ。それにそう言う手は2人きりの時に使う物です。」
「ア、アシェンさぁん?!」
「うふふ、冗談ですよ。そんなに驚かないで下さい。」
「はぁ……マ、マジで勘弁して下さい……」
楽しそうに微笑んでいるアシェンさんを見てズッコケそうになっていると、彼女の隣に居たルバートさんが申し訳なさそうにこっちを見つめてきた。
「すみません九条さん、アシェンさんがご迷惑を……」
「あぁいえ、気にしないで下さいルバートさん!その、貴方に謝られてしまうと俺も色々と気まずいと言いますか……」
「そ、そうですね……では、この話はここまでという事にしておきましょうか……」
「は、はい……そうしましょうか……」
き、気まずい……!いや、そりゃそうだよなぁ……一人息子の告白を断った男……って、改めて考えてみると本当に凄い経験をしたもんだな……
「九条さん、写真は2枚あるみたいですから1枚どうぞ。」
「おっ、おう!ありがとうな!」
「うふふ、大事にして下さいね。将来、同じ構図の写真を別の状況で撮る事になると思いますから。」
「……はっ?同じ構図を別の状況でって……」
「イリス、それは発言は流石に見過ごせないかな?もしかしたら、隣に立ってる人は別人になるかもしれないんだからね。」
「うん、状況だけじゃなくて人も変わってる可能性もある。」
「そ、その通りです!未来がどうなるのかなんて誰にも分かりませんよ!」
「うふふ、それはどうでしょうか?僕だって、譲るつもりはありませんよ?」
「あらあら、良かったですね九条さん。」
「いや、何がですか!?ってかお前等!当事者を放って勝手な事ばっか言ってんじゃないっての!つーか、いい加減に無駄話は止めて依頼に取り掛かるぞ!さっさと話を始めないと中途半端な所で終わっちまうだろうからな!ほら、準備準備!」
パンパンと手を叩いておかしくなってきていたこの場を空気を強引に変えた俺は、しばらくこの事で弄られるんじゃないかと思ってため息が零れてしまうのだった……
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