第526話
「ったく、お前等マジで何を考えてんだよ?あの場でルゥナさんが折れなかったから良かった様なものの、下手したらダンジョンに行く事になっちまっただろうが。」
「はっはっは、すまんすまん。話の流れがわし等にとって良い方へいっておったのでついつい利用しようとしてしまったわい。」
「まぁ、それも何だかんだで失敗しちゃったけどねぇ。フィオがもう少し押してくれたらルゥナも諦めるかと思ったんだけど、やっぱりそう上手くはいかないものね。」
「はぁ……何を残念がってるんだよお前は……」
夜も更けて皆が自室に戻って行った頃、ベッドに腰掛けながらため息を零していた俺は1人掛け用の椅子に腰かけながらヤレヤレといった仕草をしてやがるユキの姿を見ながら額に手を当てて静かに首を横に振っていた。
「だって、あの感じだったらダンジョン行きがすぐにでも決まると思ったんだもん。それなのに、まさかルゥナがソレを邪魔してくるだなんてね……」
「邪魔って……ルゥナさんはただ純粋に先生として生徒の事を心配してただけだろ?つーか、いい加減に説明をしてくれよ。どうして俺を利用してまであのダンジョンに挑ませようとしたんだよ。何か気になる事でもあったのか?」
「う~む、そう問われると答えに困ってしまうのう……」
「何だそりゃ……もしかしてアレか?神鳴の洞ってダンジョンの名前が気になったりしたのか?」
「それも理由の1つではある……じゃが、わしとしてはそのダンジョンの話題が今日出た事が気になっておってのう……」
「……どういう事だ?」
「実はね、アタシ達も全く同じ話を昼間に聞いたばっかりだったのよ。しかも、変な噂話付きでね。」
「……噂話だって……?」
眉をひそめながら腕を組んで唸り声を上げているレミに代わってユキが俺の質問に答えてくれたんだが……どうしよう、少しだけ嫌な予感がしてきたんですけど……
「えぇそうよ。神鳴の洞ってダンジョンの最奥には神様が存在して、ソイツを倒すと何でも1つだけ願いが叶うっていう……何とも怪しい噂話よ。」
「それは……本当に怪しすぎる噂話だな……どう考えても嘘っぽいぞ……」
「でしょ?だからアタシ達もその話を聞かされた時は軽く流しちゃったんだけど……そのダンジョンの名前がついさっき、偶然にも話題になってた訳じゃない?しかも、そこには面倒事を引き寄せる運命を持ってる厄介な奴が居たりしてね……」
「あぁ……確かに居たな……そんな奴が……」
「うむ……いや、わしとユキも何か嫌な気配を感じ取ったりはしておらんのじゃぞ?しかしお主の場合は何処から面倒事を連れて来るか分らんからのう……それならば、こちらからダンジョンに出向いた方が早かろう?」
「……だからあの時、ダンジョンに行かせる様に仕向けたのか。」
「その通りじゃ。何事も無ければそれで良いんじゃが、お主とて以前の様に仲間達を危険な目に遭わせたくはないじゃろ。わしとしても大切な皆が傷付けられる姿なんぞ見たくはないんじゃよ。」
優しく微笑みかけてきたレミにそう告げられた俺は……頭をガシガシと掻きながらガクッと肩を落としてから顔を上げて……
「……本当に、コレと言って何か嫌な気配を感じたりはしてないんだよな?」
「えぇ、何度か探ってみたけど何も感じないわね。」
「そうか……あぁもう、たまには何事もなく旅行を終えたいもんだぜ……」
「はっはっは、その様子じゃと覚悟が決まったみたいじゃのう。」
「あぁ、マジで嫌々だけどな……それにダンジョンに行けるかどうかは、結局の所はルゥナさんが決める事だし……」
「まぁ、ダメだったら1人で頑張りなさいよね!応援だけはしといてあげるから!」
「うわぁ……そりゃあちからになるぅ……はぁ……とりあえず今は様子見だな……」
レミの言ってた通り何事も起きなけれなそれで良し……けど、もし何かあるんなら絶対にフラグを叩き追ってやると心に誓いながら俺は決意を固めるのだった。
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