第512話
「さてルゥナよ、この後の予定はどうなっておるんじゃ?時間的な事を考えると街へ行くのは少し難しいと思うが……」
「はい、私もそう思います。ですので今日は、ここまでの疲れをしっかり取る為にもゆっくり休もうかと考えています。皆さんもそれで良いでしょうか?」
「えぇ、問題ありません。」
「まぁ、馬車の乗り心地は悪くなかったけどやっぱり座りっぱなしだと辛いかなって感じてたからルゥナさんの意見に賛成するよ!」
「オレも別に構わねぇぜ。ガキみたいにはしゃぎ回りたい訳でもねぇからな。」
「ふっ、悪しき者達が攻めてきた時の為に休息もまた必要という事だな!」
「いや、そんな無謀な事を仕掛けて来る奴らなんて居ないと思うけど……」
「ユキ、コイツの言ってる事は話し半分ぐらいに聞いといたほうが良いぞ……」
「……えぇ、そうしておくわ。」
「うふふ、ルゥナ先生。つまり今日は何もしないという事は決定事項なんですよね。もしそうなら……」
「はいはーい!提案なんですけど、それだったら改めて明日からの予定について話を詰めるって言うのはどうでしょうか!ほら、この街でやりたい事とかそれぞれ違うと思いますよね?」
「あー……それじゃあ聞くけど、オレットさんは明日から何をする予定なんだ?」
「そうですねぇ……とりあえずクアウォートの名所を巡って記事になりそうな話題を探していきたいと考えてます!それと街の人しかしらない裏話とかも調べてみたいと思ってます!」
「ハッ、テメェはその前に課題をどうにかしないとマズイんじゃねぇのか?」
「うぐっ!フィオちゃんったら痛い所を……だ、大丈夫!皆の力を借りさえすれば、課題なんてあっと言う間に終わるって!うん、そういう訳だからお願いします!」
「オレット、せめて自分の力でどうにかしようとする努力は見せようよ……」
「オレットさん、まずは自分の力で課題に取り組んでくださいね。そして分からない所があった時だけ、私や皆さんに頼る様にして下さい。」
「う、うぅ……はぃ……頑張ってみます……」
「いやはや、私達には課題なんて面倒な物が無くて本当に良かったよね。」
「あぁ……学生の身分じゃなくてマジで助かったぜ……」
「うふふ、もしご興味がおありでしたらルゥナ先生に頼んでお2人用の課題を用意してもらいましょうか?」
「い、いやいや!そんな気を遣ってくれなくても大丈夫だから!うん、本当に!」
「そ、そうそう!折角の旅行だってのに、ルゥナ先生の手を煩わせる訳にはいかないからな!」
「うんうん!私達の事はどうかお構いなく!」
「……アンタ達、どんだけ課題に怯えてんのよ。」
「大人の癖して情けねぇったらありゃしねぇな……」
「お、大人になっても苦手な物は苦手なの!それにほらっ!私達は勉強をする側じゃなくて教える側だもんね!」
「そ、その通り!だから分からない所があれば何時でも頼ってくれて良いからな!」
「へぇー……そうかそうか……」
「……フィオちゃん?どうしてそんなに悪い顔を……」
「……フッ……ルゥナ先生、この2人もオレ達の課題を手伝ってくれるってさ!」
「え、ちょっ!?フィオちゃん?!」
「おまっ、いきなり何を?!」
悪役の様な笑みを浮かべたフィオがルゥナさんに大きな声で告げた直後……彼女はきょとんとした表情で俺達の方を見つめてきて……パァっと顔を明るくさせて……
「九条さん、ジーナさん、本当によろしいですか?もし本当にお力を貸して頂けるのなら非常に助かります!」
「あっ……そ、そうですか……」
「あうぅ……私達が力になれるなら……良かったです……」
「やれやれね……」
「はっはっは!頑張るんじゃぞ、お主達!大人としての威厳を見せつけるが良い!」
「……むしろ威厳が無くなりそうな予感しかしないよ……」
「はぁ……こうなったらやるだけやるしかないか……」
「ふーん、お手並み拝見といかせてもらうぜ?」
「……お前がどんだけ俺を舐められてるのか知らないけど、俺は別に勉強が出来ないって訳じゃないからな?一応、一般教養ぐらいは頭に叩き込まれてるぞ。」
「えっ!?ちょ、ちょっと待ってよ!九条さんって私側の人じゃなかったの?!」
「私側ってのが何なのかは分かんねぇけど……まぁ、勉強は出来る方だぞ。」
「それじゃあ、どうしてあんなに課題を嫌がってたのさ!」
「いや、そんなの面倒だからに決まってるだろ?さっきも言ったが、旅行に来たってのに勉強なんてやりたくねぇだろ。でも流れ的にもう逃げられねぇし……」
「ふふっ、つまり客観的に指摘するんなら教える側と教わる側が1人ずつ増えたって感じなのかしらね?」
「そ、そんなぁ……!」
「はっはっは!ジーナよ、そう落ち込むでないわ!知識と言うのは覚えておいて損をするという物でもなかろう。もしかしたら、今後のお主の役に立つかもしれんぞ!」
「まっ、こうなっちまったら諦めるこったな。アンタもオレ達と一緒に勉学に励むとしようじゃねぇか。」
「うぅ……私は興味のある事だけ知ってればそれで良いんだけどなぁ……」
テーブルに突っ伏して愚痴をこぼしているジーナを横目に見ながら脱線をしていた話題を元に戻した後、俺達は夕食の時間を迎えるまでそれぞれのやりたい事について意見を出し合っていくのだった。
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