第506話
「九条さん、お風呂ありがとうございました!とっても気持ち良かったです!」
「おう、そうか……なぁ、もう一度だけ聞くけどマジでここに泊まるのか?」
「えぇ、何か問題でもありますか?あっ、もしかして私達のお風呂上がりを目にしてドキドキしちゃってるんですか?もーしょうがないですね!はい、どうぞ!お泊りをさせてもらうお礼として存分にご覧下さい!」
「いや、結構だ。」
「ちょっ、即答は酷くないですか?!九条さん、それでも男の人なんですか!?」
「うん、間違いなく男だよ。だからもう少し警戒心とか持ってくれないかな?マジで色々と自信が無くなってくるんですけど………」
「うふふ、それなら……今晩、僕が九条さんに自信を付けさせてあげますよ。」
「イ、イリス!言っておくけど、九条さんに何かしようとしたら許さないよ!」
「なるほど、つまりエルア先輩は僕達の愛を阻む障害という訳ですね。」
「しょ、障害!?それに愛って……何を言ってるんだよ!僕が言いたいのはそういう事じゃなくて!」
「おぉ!盛り上がってますね!これは夜が長くなりそうですよぉ!」
「……はぁ……どうしてこんな事に……」
旅行に関する説明を聞いてから数時間後、陽が落ち始めた街まで出掛けて晩飯を食べる事にした俺達はそのまま明日に備えて解散するって流れになったんだが……
「あっ、すみません!私、ついうっかり宿屋を予約するのを忘れていました!」
「うふふ、僕はそもそも予約なんてしていません。」
「えっ!?そ、それじゃあ2人は何処で寝泊まりするつもり……ま、まさか!」
「はい!……九条さん、今晩はよろしくお願いします!」
「とびっきり素敵な夜にしましょうね……九条さん。」
そんな事を言い放ちやがったイリスとオレットさん、そして2人が迷惑を掛けない様に見張りますと言ったエルアが我が家で1泊する事になってしまって……
いや、必死に断ったよ?君達は年頃の女の子でこっちはおっさんだよって?でも、それで折れるんなら誰も苦労しないよねって話でさ……へ、へへ……
ルゥナさんも泊まる場所がないなら私の部屋で過ごしたらどうですかって助け舟を出してくれたんだが、結果的にはこうなっちまった訳で………ね?
「ふぅ、それならこうしませんか?どちらが九条さんを喜ばせる事が出来るのか……勝負をしましょう。」
「よ、喜ばせるって……い、一体何をするつもりなんだよ!?」
「うふふ、それはもう……イ・ロ・イ・ロ・ですよ。」
「なっ!んなっ!?」
「こ、これは凄い展開になって来ましたよ!イリスちゃん!その現場、私のカメラで撮影してもよろしいでしょうか!?」
「うーん、人に見られるというのは少し恥ずかしいですが……九条さんがお望みなら受け入れるしかありませんね。」
「く、九条さん!ダメですよ!絶対にダメですからね!」
「……君達、当事者を無視して勝手に盛り上がってるんじゃない!って言うか、俺は1人で寝るからそこの所を忘れんな!ってかマジで少しは危機意識を持て!お前達は女の子なんだぞ?!それなのに俺みたいな野郎と同じ屋根の下で一晩を過ごすとかどう考えてもおかしいだろうが!何なの?最近の女の子って皆そうなの!?」
「あはっ!そんな訳ありませんって!確かに話だけ聞くと私達がちょーっとおバカな感じがしてきますけど……九条さん、私達に酷い事なんてしませんよね?」
「あ、当たり前だろうが!俺を何だと思ってんだよ……」
「うんうん、そうですよね!九条さんがそう言う人だから、私達も安心してこうして居られるんですよ!どうもありがとうございます!」
「……そこでお礼を言われる意味が分からん……もういいや、グチグチと言った所で何も変わんねぇし……考えるのも面倒になってきたわ……」
「す、すみません……」
「いや、謝んなくても大丈夫だよ………そう言えば今まで聞いてこなかったけどさ、お前達ってどうやってフィオと旅行するまでの仲になったんだ?」
「あっ、聞きます?聞いちゃいます?私達とフィオちゃんの熱い友情物語を!」
「ゆう……じょう……?」
「オレット、そういう嘘は良くないよ。別にコレと言って何も無かったじゃないか。僕達はただ、あの晩の事について彼女に話を聞きに行っただけだろ。」
「あの晩?って言うと……」
「はい、学園の七不思議を調べに行ったあの夜の事です。実は、九条さん達が学園を去った後にあの時の皆で集まる機会があったんです。フィオさんとは、それから少しずつ仲良くなりました。皆さんと言う共通の話題もありましたからね。」
「あぁ、なるほどね……やっぱり俺の悪口ばっかりだったか?アイツは。」
「あ、あはは……まぁそんな感じですね……その度にイリスが九条さんの良い所を言って反論する……みたいな流れによくなっていました。」
「いやぁ、アレは中々に白熱した議論だったね!どっちも引かないから私達も止めるのが大変で……」
「うふふ、僕としては九条さんの魅力を伝えようと思っただけですけどね。」
「……ありがとう……で、合ってるのか?この場合は……」
「ど、どうなんですかね……?と、とりあえず僕達とフィオが仲良くなったのはそういった事があったからです。彼女、最初の内は距離を取っていたんですけどイリスとオレットがグイグイ攻めて行って……ほぼ押し切られる形で今の様になりました。」
「あぁ……確かに2人の勢いから逃げ切れるとは思えないからな……」
「ふっふっふ、彼女は非常に興味深い取材対象ですからね!逃がしたりしません!それに個人的にも仲良くしたいと思っていましたからとっても頑張りました!」
「そっか……まぁ、上手くやれてるみたいで良かったよ。さて、それじゃあ明日に備えてそろそろ寝るとするか。」
「えぇ~!夜はまだ始まったばかりにもう寝るんですか!?まだまだこれからじゃないですか!勿体ないですよ!」
「オレット、そうは言うけど明日も早いんだよ?無理をして皆に迷惑を掛ける訳にはいかないだろう。」
「うふふ、楽しい夜を過ごすのはクアウォートに行ってからも良いのでは?」
「うぅ……分かりましたよ。今日は諦める事にします!」
「おう、それじゃあ2階にある客間を好きに使ってくれ。あっ、言っておくけど俺の部屋には絶対に侵入してくんなよ。」
「……それではおやすみなさい。」
「おい、イリス!返事をしてから2階に行け!コラ!」
「だ、大丈夫です!僕がしっかり見張っておきますので!それではおやすみなさい!ほら、行くよオレット。」
「はぁ~い!それではおやすみなさ~い!」
タッタッタとリビングを後にして2階に上がって行く足音を聞いた後、俺は自室に向かうと扉の前に物を置いてベッドに潜り込んで眠りにつくのだった。
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