第472話
報道部の部室で雑談を交えた取材を1時間ぐらい受ける事になった俺達は、お礼をしたいと言ったオレットさんに連れられて授業で使用する為の教室が並んでる静かで人もまばらな廊下を頭に疑問符を浮かべながら歩いていた。
(……ご主人様、一体何処に向かっているんでしょうか?)
(分からん、ソレを聞こうとしても答えをはぐらかされるだけだしな……)
(そうですよねぇ……うーん、この先にある教室と言えば確か……)
「皆さん、目的の場所に到着しましたよ!さぁ、中に入りましょう!」
マホが何かを言おうとした次の瞬間、オレットさんの元気な声が聞こえてきたので少しだけ驚きながらも彼女が開いた扉の上にあるプレートを見てみると……
「……家庭科室?って、事はまさか……」
「ふふっ、なるほどね。オレットが私達を連れて来たのはそういう理由か。」
「……良い匂い。」
オレットの後に続いてロイドとソフィが家庭科室に入って行く姿を見ていた俺は、深々とため息を零しながら2人の背中を追って室内に入って行った……
「あら、オレットさん?それに……」
「み、皆さん?!ど、どうしてここにいらっしゃるんですか!?」
「うふふふふ……お昼に引き続きまたお会い出来るなんて……とても嬉しいです。」
「……まぁ、だと思ったよ。」
可愛らしいエプロンを付けて顔を真っ赤にして驚いているエルア、そして何故だか俺に似たイラストが描かれているエプロンを付けて包丁を片手に怪しく微笑んでいるイリス、そして状況がよく分からず首を傾げているルゥナさんと他の女子部員達っ!
……えっ、何なんだこの状況は?つーか俺、どうして考えも無しにこの場所に足を踏み入れたんだよ!?マジで馬鹿なんじゃねぇのか!?ヤバい、逃げ出したい……!
「エルアちゃん!悪いんだけどそこにあるクッキーを九条さん達にあげてくれる?」
「い、いやいや!急に来て何を言ってるのさオレット!って言うか、どうしてここに皆さんを連れて来たんだよ!?」
「あははっ、実はさっきまで皆さんには取材を受けてもらってたの。そのお礼として美味しい物でもどうかなーって思って、こうして案内してきたって訳!」
「か、勝手すぎるだろ!お礼をしたいんなら自分で用意すれば良いじゃないか!」
「ん-……そこはほら、手っ取り早く済ませたいじゃん?それに……これってかなり良い機会だと思うんだけどなー……料理の腕を確かめてもらう……ね?」
「っ!そ、それは………」
「……ふふっ、良かったね九条さん。美味しいクッキーを頂けそうだよ。」
「……いや、どう見たって嫌がっている様にしか見えないんだが?」
(はぁ……ご主人様、何時になったらそういった経験値が溜まるんですか?)
(……どうしていきなり呆れられてるんだ俺は……ってうおっ?!)
なるべく室内に居る女の子達と目を合わさない様にしながらガクッと肩を落としたその直後、綺麗なクッキーの乗った大きな皿を両手で持ったイリスが目の前にスッとやってきてねっとりとした笑みを浮かべながら俺の顔を覗き込んで来た!?
「うふふふふ……九条さん、お腹が空いているんですか?」
「へ、へっ!?そ、そうでもな…い……訳じゃありません!はい!空いてます!」
「それなら良かったです……はい、あ~ん……」
「イ、イリスさん?それは流石に……ほら、他の部員さんの目もあるし……な?」
「うふふふ、僕達の世界に他の人は関係ありませんよ。はい、あ~……エルア先輩、何をしているんですか?」
「オ、オレットは僕のクッキーを皆さんに食べさせようとここに来たんだ!だから、九条さん……あ、あ~ん!」
「へぇ~……そうですか……なるほど……」
「あ、あははは……イリスちゃん?怖いからその目は止めて欲しいかなぁ~って……オレット先輩はそう思いますよ!?」
「……まぁ、今は良いです。九条さん、あ~ん。」
「あ、あ~ん!」
「あっ……えっ………‥えぇ……?」
まさかの料理対決、第二弾!……に、巻き込まれる事になった俺は周囲に居る他の部員やルゥナさんに見つめられて……完全にフリーズしてしまうのだった……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます