第466話

「……なぁマホ、やっぱりこのローブ俺が着るには派手過ぎないか?それに年齢的な事を考えても無理してる感がありまくりな気がするんだけど……」


「いえいえ、そんな風に思う必要は全然ありませんから!バッチリ格好良いですよ!そんな事よりもおじさん、身分証明のカードはきちんと胸ポケットに入ってますか?初日から忘れたりして講師活動が出来なかったらこの後が大変ですよ!」


「おっと、そうだったな……うん、ちゃんと入れてある……あっ、ヤバッ!ポーチを部屋に忘れてきた!」


「もう、シッカリして下さいよね!おじさんがスマホを家に置き忘れたら私が1人でお留守番する事になっちゃうじゃないですか!」


「わ、悪い悪い……すぐに持って来るよ。」


「九条さん、家の外に迎えの馬車が来たみたいだよ。」


「えっ、マジかよ!」


「ほら、急いで下さいご主人様!」


「お、おう!分かった!」


 朝っぱらからドタバタしつつも身支度を整えて家を出た俺達は、迎えに来た馬車に乗り込むと王立学園に向かって街道を進んで行くのだった。


(はぁ……二度寝なんかするから慌てる事になるんですよ。)


(そ、そう言われても仕方ねぇだろ?何か色々と考えてたら寝れなかったんだよ……)


(ふふっ、もしかして緊張していたのかい?)


(……旅行に行く前の子供みたい。)


(うぐっ……!)


 ソフィから放たれた純粋な一言にグサッと胸を貫かれてダメージを負っていると、窓の外に学生服を着た美少年と美少女の姿がチラホラと見える様になってきた……!


「……どうしよう、胃がキリキリしてきた……!」


(はいはい、そんな事を言った所で逃げられないんですから覚悟を決めて下さいね。それに今回のクエストは、ご主人様が苦手意識のある若い人に慣れる良い機会です。諦めて運命を受け入れて下さい。)


(……お前、こういう時になるとマジで楽しそうだよな。)


(えぇ~?そんな事はありませんよ……えへ!)


(オイ!否定するなら最後まで隠し通してくれよ!)


 片目を閉じながら舌をペロッと出しているマホの顔が思い浮かびながらそんな事を言っていると、御者さんが運転席側にある小窓をコンコンと叩いて少しだけ開いた。


「皆様、間もなく王立学園に到着なさいますがお迎えの時間はどうなさいますか?」


「あっ、迎えですか?そうですね……ロイド、学園が終わるのって何時頃だっけ?」


「そうだな、多分15時頃じゃないかな。その後に生徒達は部活動に勤しむんだろうけども、私達は授業が終われば帰宅する事が許されているはずだよ。しかし……」


(今日はエルアさんにイリスさん、クリフさんに会えるかもしれませんよね!)


(そう考えると迎えの時間が延びると思う。)


「うーん……すみません、今日は迎えの方は大丈夫です。」


「おや、そうですか?」


「はい、折角のお申し出を断ってしまってすみません。」


「いえいえ、それではお帰りはお気をつけ下さいませ。」


「えぇ、分かりました。」


 そんなやり取りをしていると馬車は学園に通じる幅の大きな一本道に入って行き、正門から少し離れた場所に停車するのだった。


「皆様、目的地にご到着致しました。」


「ありがとうございました。それじゃあまた明日。」


「はい、行ってらっしゃいませ。」


 優しく微笑みかけて来てくれた御者さんにお礼を告げて白いローブを羽織り直した俺は、緊張を落ち着ける為に深呼吸をしながら通学路に降り立つのだった。

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