第419話

「うわぁ!見て下さいよおじさん!このモンスターの雪像、細かい所まで本当によく似ていますよ!」


「あぁ、今すぐ動き出してもおかしくないって感じるぐらいソックリだな……それにメチャクチャ大きいし……一体どうやって造ったっていうんだ?」


「はっはっは!そこはほれ、職人が頑張ったという事じゃよ。のう、ソフィ?」


「……コレ、何処で戦えるんだろ。」


「おい、雪像を見ながら物騒な事を呟くんじゃありません。」


「まぁまぁ、美術品の楽しみ方は人それぞれですから。それよりもおじさん、受付で防寒着を借りられて本当に良かったですね。」


「……そうだな、まさかこんなに冷え込んでるとは予想もしてなかったぜ。」


 吐き出す息が白くなるぐらい寒々しい建物の中をグルっと見回していると、視界の先でイチャイチャとしている3人組を発見してしまった……


「あぁ……ロイド様……私、このモンスターが怖くてたまりませんわ……!」


「ふふっ、それなら私の腕をシッカリと掴んでおくと良いよ。」


「はい!それではお言葉に甘えさせて頂きますわね!」


「ロ、ロイドさん!わ、私もあのモンスターの雪像がこ、怖いです!」


「ライルもかい?仕方がないな。ほら、もっと強く抱き着いておいで。」


「は、はひ!そ、それじゃあ失礼しましゅ……!」


「……うん、アイツ等と距離を取って正解だったな。」


「……大丈夫ですかね?雪像、溶けたりしませんかね?」


「……とりあえず、わし達は他人のフリをしておくとしようかのう。」


「……だな。」


 邪魔をするのも何だしという理由を自分に言い聞かせながら部屋の中に展示されていたモンスターの雪像を順番に見て行った俺達はロイド達にバレない様、足早に次のエリアに向かうのだった。


「……そう言えばマホ、この先にはどんな雪像が飾られておるんじゃ?」


「あっ、はい。ちょっと待って下さい……案内図によると、次の部屋は2階にあって大陸で有名な方の雪像が展示されているみたいですね!」


「へぇ、それじゃあガドルさんの雪像もあるかもしれないな。」


「うん、楽しみ。」


「はっはっは、それでは急いで展示場に行こうではないか。」


「いや、別に急がなくても雪像は逃げたりしないっての……」


レミの言動に呆れながら階段を上がって目的の部屋までやって来た俺達は、その中に存在していた幾つもの雪像を目にしながら感嘆のため息を零していた。


「す、凄いですね……」


「あぁ……まるで生きた人間をそのまま雪にしたみたいな感じだ……」


「表現の仕方が恐ろしい気もするが、確かにその通りじゃのう……おっ!ソフィよ、お主の探していた雪像を発見したぞ!ほれ、あっちじゃ!」


「……本当だ。ちょっと見て来る。」


「おう、俺達も適当にウロウロしたらそっちに行くよ。また後でな。」


「うん。」


 俺の言葉に小さく頷いてから小走りでガドルさんの雪像に近寄って行ったソフィと別れた後、しばらく俺達は他の雪像を眺めようかと思っていたんだが……


「まぁ……この人達の雪像もあるに決まってるよな……」


「レミさん!この人がこの大陸を治めている王様で、こちらがお妃様です!そして、真ん中にあるのがおじさんが少しの間だけ仕えていたお姫様ですよ!」


「ほほぅ、そうなのか……お主、また偉い所に仕えておったんじゃなぁ。」


「いやいや、仕えてたんじゃなくて強制労働させられてただけだっつうの……しかも最終的には色々と大変な目に遭ったし……はぁ……」


「もう、何をため息なんて零してるんですか!あっ、そうだおじさん!今度お姫様にお手紙を出したらどうですか?アレから連絡とか取ってませんよね?いい機会ですし今回の事を内容に!」


「アホ、相手は一国のお姫様なんだぞ?俺みたいな何の特徴もないただのおっさんの事なんてとっくの昔に忘れてるに決まってんだろ。」


「いやいや、お主は自分が思っているよりも特徴まみれの男じゃから安心せい!」


「はいはい、そりゃどうも……そんじゃま、そろそろ別の雪像を見に行こうぜ。」


 マホとレミの手を引いて国王陛下達の雪像から離れた俺は、広々とした部屋の中をグルっと回ってソフィと合流をするのだった……ロイド達はまぁ……放っておいても大丈夫だと思ったので、この後も4人で展示場内をブラブラとするのだった。

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