第355話
「それではおじさん、私達は女子会に行ってきますね!今日はお1人で寂しいかとは思いますけど、泣いたりしちゃダメですよ!」
「はいはい、分かりましたよ……サラさん、すみませんがよろしくお願いします。」
「うふふ、任されました。」
「もう、おじさんじゃないんですから心配されなくても大丈夫ですよ!」
「あぁ、それもそうだね。」
「うん、私達は九条さんとは違う。」
「……なぁ、俺の心はガラス製なんだから優しく扱ってくれないと砕けて泣くぞ?」
「あらあら、女の子の前でそんなに簡単に涙を見せたらダメですよ。」
「ふふっ、もし涙を流したくなったら私の腕の中に飛び込んで来ても良いからね。」
「はっはっは……流石にそれはお断りだぜ……」
「おや、それは残念だね。っと、お喋りはこれぐらいにしてそろそろ行こうか。」
「そうですね!おじさん、夕食前には戻ってきますね!」
「はいよ、それじゃあいってらー」
玄関で小さく手を振って女子会に向かう皆を見送った俺は、1人きりになった家の中で大きく伸びをしてからリビングに戻って行った。
「さぁーてと……これからどうっすかなぁ……」
ほとんどの家事は終わってるから別に俺がやる事も無いし、部屋に戻ったとしても読んでないラノベなんて残ってないからなぁ……
「……天気も良いし、たまにはのんびり街中でも見て回ってみますかねぇ。」
それに昼飯を1人寂しく家の中で食うなんて今の俺には耐えられそうにないし……よしっ、そうと決まれば着替えて出掛ける準備をするとしますかね。
そう意気込んでから部屋に戻って財布やら何やら色々ポーチに詰め込んで家を出た俺は、初めてこの街に来た時を思い返しながら大通りまでやって来た。
「うーん、こんな風に街を出歩くのはどれぐらいぶりだ?」
何時もだったら誰かしら一緒に居るからなぁ……こうやってぼっちを満喫するのはえっと………うん、思い出せないって事はそんだけ久しぶりって事だよな。
「そんだけあいつ等と一緒に過ごしている時間が長くなってるって事か……いやぁ、色々と感慨深いものがあるねぇ……」
相変わらず独り言が勝手に出てくるのを押さえられないのを自覚しながら大通りを進んで行くと、少し先の方に大勢の人で賑わっている目的地が見えてきた。
「おっ、今日はイベントが開催している日だったか……それにしても凄い熱気だぞ。やっぱり闘技場ってのは凄い所なんだなぁ……」
つーか、ここに来るのも随分と久しぶり……って訳でもないのか?クリフに試合を挑まれて……まぁ、こうして観覧に来るのはロイドに連れられてぶりか。
「あーそれにしてもどうすっかな……ギャンブル……してみっかなぁ……」
ここ最近、運が良いなんて思えた事は無いけど……もしかしたら溜まってる幸運が俺にお金を届けてくれるかもしれないし……!
「……よ、よしっ!ちょ、ちょっとだけやってみっか!」
俺は腰にぶら下げたポーチの上から財布をギュッと握り締めてガヤガヤと賑わっている闘技場を見上げると、ゆっくりと建物の中に足を踏み入れて行くのだった……!
皆、期待して待っているんだぞ!今日の晩御飯はお前達が驚くぐらい豪華なやつを作ってやるからなっ!
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